「3R」で進んできた管理の歩み【どうするプラスチック廃棄物 第3回】
2023/03/02各回のテーマ
- 第1回 プラスチックの光と影
- 第2回 プラスチック廃棄物をめぐる現状と課題
- 第3回 3R中心のプラスチック廃棄物管理の歩み
- 第4回 マテリアルサーマルケミカル各リサイクル手法の得失
- 第5回 消費型経済から循環型経済へ
- 第6回 海洋プラスチックごみ問題への世界の取り組み
- 第7回 大阪ブルーオーシャンビジョンとマリーンイニシアティブ
- 第8回 容器包装リサイクル法の改正と課題
Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」をお届けしています。第3回は、リユース・リデュース・リサイクルを意味する「3R」を中心としたプラスチック廃棄物管理の歩みを見ていきます。
取り組みの起点は「3R」、ただし製品リサイクルは限定的
プラスチック製品の使用が大幅に拡大した1980年代後半、プラスチック廃棄物をどう処理するかが業界の大きな課題となり、以降、多くの取り組みがされてきました。そのスタートは、高価な石油資源を無駄なく利用しようとする省資源・省エネルギーの取り組み「3R」です。3Rは、廃棄物の減量を指す「リデュース」(Reduce)、再利用を指す「リユース」(Reuse)、再資源化を指す「リサイクル」(Recycle)を意味します。
図1:3Rの概念
3Rを実施するためのモチベーションは、処理のために投入する資源・エネルギー、つまりインプットに対して、得られる資源・エネルギーの価値、つまりアウトプットが上回ることにあります。製品の競争力強化や企業の体質改善にもつながり、収益向上も目指せるとして活発に進められました。そのため、廃棄物の素性がはっきりしていて、比較的均一、分別も容易または不要で、量的にもまとまりやすい、工場内のオフスペック製品・端材・フィルムの耳などのリユースとリサイクルが、急速に推進されました。
一方、プラスチック製品が市場で使われた後、またプラスチック製品として再生して利用するリサイクルについては限定的に行われるのみでした。内容物や汚れを洗浄したり、分別回収設備を整備したりするコストがかかる点、また、回収されたプラスチックリサイクル品の品質が不均一になりやすい点などから、インプットに対するアウトプットが見合いづらかったのです。世界的に広く取り組まれているペットボトルのリサイクルのように、素材の均一性が広く確保され、大量の分別が可能なリサイクルシステムが、公共機関の支援を前提に確立されるにとどまりました。
熱としての再利用は日本が先行するも…
そうした中で、日本が先行した「焼却・熱回収によるエネルギー再利用」の取り組みが、成果を上げてきたのです。当初、欧米の先進国では焼却・熱回収によるエネルギー再利用はリサイクルと認められないとの議論もありました。現在は「リカバリー」という呼び方で区別されることもありますが、廃棄物問題の対処方法として広く認められてきています。特に、アジア諸国、アフリカなど、今後もプラスチック消費の拡大が見込まれ、廃棄物処理のインフラ整備が必ずしも進んでいない地域においては、日本の先進技術の活用が強く期待されています。
図2:焼却されるプラスチック廃棄物。焼却によりつくられる熱の一部が予熱利用施設に使われる
しかし、焼却・熱回収によるエネルギー再利用を含めた対策を進めても、自然界に流失するプラスチック廃棄物の量は膨大です。その蓄積による自然環境への影響はとても看過できない状況であるとの指摘が世界的に強まっています。
特に、多くの廃棄物の最終蓄積場所となる海洋環境への影響は大きな問題であり、喫緊に対応すべきとの認識が大きな潮流です。2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダホス会議)で、エレン・マッカーサー財団が「2050年には、海洋域におけるプラスチックの総量は魚介類の総重量を超える」と発表し、センセーショナルにメディアに取り上げられたのを記憶されている方も多いと思います。
経済から環境保全へ、パラダイム転換の時代
木材などの天然素材が持つ自然環境下で消滅しては再生するというしくみが、地球環境の持続性の鍵ですが、人工素材のプラスチックにはそれがありません。生分解性プラスチックのように人為的にそのしくみを構築することは可能ですが、資源効率と費用効率の点から正当化するためのハードルはかなり高いといわざるを得ません。
こうした現実を踏まえ、従来の経済的にメリットのある取り組みを中心に実施するというパラダイムを変えることが重要となっています。自然環境の保護と持続性を守るために、今後プラスチック廃棄物管理をどのように進めていくかが、いま世界で問われているのです。
次回は、各リサイクル手法とそれらを実施する上での得失について説明します。
第4回テーマは「マテリアル・サーマル・ケミカル各リサイクル手法の得失」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
