三つのリサイクル法に一長一短、主流はサーマル【どうするプラスチック廃棄物 第4回】
2023/03/09各回のテーマ
- 第1回 プラスチックの光と影
- 第2回 プラスチック廃棄物をめぐる現状と課題
- 第3回 3R中心のプラスチック廃棄物管理の歩み
- 第4回 マテリアルサーマルケミカル各リサイクル手法の得失
- 第5回 消費型経済から循環型経済へ
- 第6回 海洋プラスチックごみ問題への世界の取り組み
- 第7回 大阪ブルーオーシャンビジョンとマリーンイニシアティブ
- 第8回 容器包装リサイクル法の改正と課題
Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」をお届けしています。第4回は、リサイクルにおける各種の手法と、それらを実施する上での得失について説明します。
プラスチック廃棄物のリサイクルは三つに分けられる
まずは、表をご覧いただきます。
表1:プラスチックの三つのリサイクル。RPFはRefuse Paper & Plastic Fuelの略で、マテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチック類を原料とした高カロリーの固形燃料。RDFはRefuse Derived Fuelの略で、生ごみや可燃ごみや廃プラスチックなどからつくられる固形燃料
(出所:プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2022」を一部改変)
この表は、プラスチックのリサイクルについて説明した、プラスチック循環利用協会の「プラスチックリサイクルの基礎知識2022」をもとに作成したものです。
日本では一般的に、プラスチックのリサイクルを左列のとおり三つに分類しています。つまり、廃プラスチックを再び同製品、または別製品の材料として再利用する「マテリアルリサイクル」、化学的処理を施し、資源として再利用する「ケミカルリサイクル」、そして第3回「『3R』で進んできた管理の歩み」でも取り上げた、焼却・熱回収によりエネルギーを再利用する「サーマルリサイクル」です。
ただし、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の分類では、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを合わせて「マテリアルリサイクル」とし、サーマルリサイクルは「エネルギー回収」と規定しています。
また、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)では、プラスチックを素材としてそのままリサイクルさせるリサイクルを「Mechanical Recycle」とし、化学的に反応変化させて原料に戻すリサイクルを「Feedstock Recycle」としています。サーマルリサイクルに当たるものは「Energy Recovery」と分類しています。
廃プラの広域マテリアルリサイクル、国内ではペットボトルのみ
プラスチックは、エネルギーと手間を掛けて資源よりも経済的価値を高めていった結果としての製品といえます。初めに化石資源を採掘し、使用しやすい部分を取り分け、それを化学反応させてプラスチック原料を作り、重合して、各種のプラスチック素材を製造し、さらに加工により、種々のプラスチック製品にしているわけです。従って、リサイクルをする場合、できるだけ加工度の高いステージに再生できれば、得られる価値も高いということになります。
その意味で、リサイクルよりむしろ、製品を同一用途で繰り返し使用するリユースが最も効率がよいことは自明です。しかし、いったん市場で使用された製品のプラスチック廃棄物をリユースしようとすると、広範な地域での分別回収体制の確立や、汚れ・残渣内容物を洗浄するための大規模なインフラ整備などが必要で、大きな費用が掛かります。
プラスチック廃棄物のマテリアルリサイクルについては、日本で唯一、ペットボトルに対して広く活動が行われています。公的資金によるインフラ整備とともに、ペットボトルの製造側における素材の均一化や着色の回避など、業界全体でのシステム構築達成の努力があって初めて普及が進んでいるのです。
ただし、前回も述べたとおり、プラスチック廃棄物の影響は世界的に看過できない喫緊の課題であり、より多くの取り組みが実施されています。
ケミカルリサイクルもまだ限定的、海外では新手法の試みも
対応が難しいマテリアルリサイクル以外で、何とかリサイクルの幅を広げようとする試みが、ケミカルリサイクルやサーマルリサイクルです。
冒頭の表中、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの原料・モノマー化を除けば、いずれの手法も熱エネルギー回収と関連しています。高炉やコークス炉による加熱でプラスチックから発生する水素や一酸化炭素が鉄鉱石の還元に使われたり、コークス炉ガス・炭化水素油として使われたりしますが、現実的には燃焼により生ずる熱エネルギーの活用が大きなファクターになっています。
また、ガス化・油化の手法については一部が化学原料化としてのケミカルリサイクルであり、一部が燃料利用としてのサーマルリサイクルというのが実状です。
原料・モノマー化でよく取り上げられるペットボトル回収品からの解重合によるモノマー製造や、再重合によるバージン樹脂へのリサイクルも、ペットボトルのマテリアルリサイクルを前提とした手法であり、プラスチック廃棄物全体の対応策とはなり得ません。
いま、サウジ基礎産業公社(SABIC:Saudi Basic Industries Corporation、サウジアラビア)やネステ(フィンランド)といったエネルギー大手が注目し、取り組んでいるのが、フィードストックリサイクルです。これは、基本的に分別回収不可能な混合プラスチック廃棄物をそのまま処理し、石油化学原料として使えるガスや油にする取り組みです。さらに、有機性廃棄物も併せて処理できる技術を開発し、既存の石油化学プラントに投入可能な原料を得ようとする試みもあります。すでに、実証プラントからのサンプル提供も始まっており、今後の進展が期待されています。
現実解として進むサーマルリサイクル
サーマルリサイクルについては広く実施されており、その効果も高いといえます。
日本では、環境省が2005年5月、廃棄物処理法の基本方針として、「廃プラスチック類について、まず発生抑制を、次に再生利用を推進し、なお残るものについて、直接埋立を行わず、熱回収を行うことが適当」と改正・告示しました。これに呼応する形で東京23区は、2008年度から焼却・エネルギー回収による廃プラスチック類のサーマルリサイクルを本格実施し、廃プラスチックの埋め立てをゼロにする取り組みを行っています。
分別回収には、システムを広域に構築することが難しく、コストも掛かるという課題があります。この点を考えると、サーマルリサイクルは、いまできる現実的な解決策といえます。今後も、より一層の効率化を目指しながら推進していくべき方法だと思います。
今回まで、プラスチック廃棄物管理の問題と、解決のため対応策について説明してきました。次回からは、こうした状況を踏まえ、世界、そして日本でどのような取り組みが進められているのか、お話ししたいと思います。
第5回のテーマは「消費型経済から循環型経済へ」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
