EU政策に見る消費型経済から循環型経済への転換【どうするプラスチック廃棄物 第5回】
2023/03/22各回のテーマ
- 第1回 プラスチックの光と影
- 第2回 プラスチック廃棄物をめぐる現状と課題
- 第3回 3R中心のプラスチック廃棄物管理の歩み
- 第4回 マテリアルサーマルケミカル各リサイクル手法の得失
- 第5回 消費型経済から循環型経済へ
- 第6回 海洋プラスチックごみ問題への世界の取り組み
- 第7回 大阪ブルーオーシャンビジョンとマリーンイニシアティブ
- 第8回 容器包装リサイクル法の改正と課題
皆さんも、「循環型経済」あるいは「サーキュラーエコノミー」という言葉を耳にしたことがあると思います。世界的に持続可能な社会を目指す機運が強まる中、今後の産業界の動向を示すキーワードとして理解する必要のある考え方です。Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」第5回は、循環型経済について説明します。
欧州、循環型経済の政策化を進める
2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択されました。これを受ける形で2015年12月、欧州委員会が発表したのが「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」です。欧州委員会はこの政策パッケージの目標を、「製品・資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物発生を最小限にすることで、持続可能で低炭素かつ資源効率的で競争力のある経済へ転換する」こととしています。
欧州委員会は重要優先政策として、廃棄物の再資源化を挙げており、さらに、主要アクションプランの第一重点分野として、プラスチック・リサイクル・システムの構築強化と、二次原材料(Secondary raw material)の積極的な市場拡大を取り上げています。これらは、欧州連合(EU:European Union)が世界の大きな潮流に先駆けて意気込みを示したものといえます。
EUはこの政策の中で、環境配慮・資源循環に対する施策の強化を、コスト負担増とマイナスに評価するのでなく、今後の低炭素・資源効率的経済における競争力強化やビジネス機会・雇用創出のための積極的なものと捉えるべきと強調します。
そして、生物資源やバイオテクノロジーを活用しながら経済成長を目指すことを意味するバイオエコノミーの取り組みについて、従来の資源効率性や省コスト性などの経済的な観点での徹底的な効率化追及から、資源循環ループを描く循環型経済政策の実行への転換と捉えるべきと強調します。行動計画の舵を切ったものといえます。
図1:循環型経済の概念。バタフライダイアグラムとも。左にバイオ資源などの再生可能な資源、右に化石燃料由来などの枯渇する資源の管理のしかたが描かれている。原図は循環型経済を推進するエレン・マッカーサー財団によるもので、EUの循環型経済の考えを体現したものとされる
(出所:エレンマッカーサー財団「The butterfly diagram: visualising the circular economy」の図をもとに編集部作成)
プラスチック廃棄物の管理についても、2030年までに自治体系廃棄物の65%、また容器包装系廃棄物の75%をリサイクルするという意欲的な目標値を設定しています。
プラスチック戦略も採択「2030年までに全包装をリサイクル可能に」
これを受けて2018年1月にEUが採択した「循環型経済における欧州プラスチック戦略」では、2030年までにEUのプラスチック包装をすべてリサイクル可能なものとし、使い捨てプラスチック製品の消費量を減少させ、マイクロプラスチックの意図的使用を制限することを目標にしています。
さらに、環境保護を前提に、再利用、修理、リサイクルのニーズを尊重すること、加えて、より持続可能な基礎材料の開発によって新しいプラスチック経済の基盤とし、リサイクルを中心に据えたプラスチック廃棄物戦略を確立することなどを掲げています。そして、長期的な唯一の解決策として、リサイクルと再利用を中心にプラスチック廃棄物削減を進める計画を実行するとしています。
EUは、このプラスチック戦略の具体的な取り組みとして、海洋へのプラスチックの漂流を止めることも取り上げています。海洋プラスチックごみ問題については次回、詳しく説明します。
第6回のテーマは「海洋プラスチックごみ問題への世界の取り組み」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
