2015年に深刻さ発覚、「海洋プラスチックごみ」対策が世界の急務に【どうするプラスチック廃棄物 第6回】
2023/04/04各回のテーマ
- 第1回 プラスチックの光と影
- 第2回 プラスチック廃棄物をめぐる現状と課題
- 第3回 3R中心のプラスチック廃棄物管理の歩み
- 第4回 マテリアルサーマルケミカル各リサイクル手法の得失
- 第5回 消費型経済から循環型経済へ
- 第6回 海洋プラスチックごみ問題への世界の取り組み
- 第7回 大阪ブルーオーシャンビジョンとマリーンイニシアティブ
- 第8回 容器包装リサイクル法の改正と課題
Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」。第6回は、海洋プラスチックごみ問題への取り組みについて解説します。
「1年で480万~1270万トンが海へ」論文の衝撃
図1:海岸に横たわるプラスチックごみの数々
2015年に学術誌『サイエンス』に掲載された「プラスチック廃棄物の陸地から海洋への流入」(Plastic waste inputs from land into the ocean) という論文が大きな反響を起こし、海洋プラスチックごみ問題に対する世界の関心が一気に高まりました。
海洋環境におけるプラスチックごみの存在は以前から広く知られていましたが、陸上で発生したプラスチック廃棄物の海洋への流入量は不明でした。この論文の著者のジョージア大学教授のジェナ・ジャンベック博士らは、2010年ベースで調査した192 の沿岸国ごとの固形廃棄物排出量、人口密度、経済状況などに関する世界のデータを関連付ける形で、海に流れ込む陸上のプラスチック廃棄物の量を推定しました。その結果、2 億 7500 万トンのプラスチック廃棄物が発生し、同年の1年で480 万~1270 万トンが海洋に流出したと結論づけました。
人口規模と廃棄物管理システムの質によって、どの国がどのくらい海洋プラスチックごみとなる未回収プラスチック廃棄物の発生に加担しているのかが分かります。ジャンベック博士らは、中国をはじめ、インドネシア、フィリピン、ベトナムといったアジア諸国が排出の上位国を占めると報告しました。そして、廃棄物管理システムの改善がなければ、陸上から海に流れ込むプラスチック廃棄物の累積量は2025 年までに「1桁増加する」と予測したのです。
「憲章」採択されるも主要国の足並み揃わず
さらに、2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダホス会議)でエレン・マッカーサー財団が発表した「2050年には、海洋域におけるプラスチック廃物の総量は、海水域での魚介類の総重量を超える」というセンセーショナルな試算結果などが、グローバルな活動につながりました。
2018年6月、カナダで開催された先進国首脳会議(G7シャルルボワ・サミット)では、各国首脳が「海洋プラスチック憲章」をめぐり議論しました。憲章の内容を表にまとめました。
表1:プラスチック憲章の主な内容。憲章には上記2テーマの他、「持続可能な生活様式と教育」「研究、イノベーション、新技術」「海岸・海岸線の取り組み」の5テーマと、計23の行動指針がある
(出所:カナダ政府「Ocean Plastics Charter」をもとに作成)
これら具体的な政策提言を含んだ憲章でしたが、先進7カ国のうち米国と日本が署名を回避したことにより成立しなかったことが大きな話題になりました。
米国の署名回避は当時のトランプ政権の気候問題に対する消極的な政治姿勢の一環によるものでした。日本は、憲章に盛り込まれた諸施策を実行する体制が整っていないとの理由から回避し、既に2019年に議長国としての開催が予定されていた「G20大阪サミット」に向けて検討することを表明しました。
各国で規制の取り組みが始まった
海洋プラスチック憲章をめぐる議論を踏まえて多くの国が、使い捨て用途のプラスチック使用削減、マイクロプラスチックの意図的使用の禁止・削減、プラスチックレジ袋の使用禁止・有料化などの規制法案を施行しました。
次回は、2019年のG20大阪サミットで発表された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとマリーン・イニシアティブ」、そして日本の取り組みについて説明します。
第7回のテーマは「大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとマリーン・イニシアティブ」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
