日本は「ビジョン」と「イニシアティブ」で海洋プラスチック問題の世界的取り組みを推進【どうするプラスチック廃棄物 第7回】

2023/04/18
日本は「ビジョン」と「イニシアティブ」で海洋プラスチック問題の世界的取り組みを推進

各回のテーマ

Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」をお届けしています。第7回は、日本の「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」における「マリーン・イニシアティブ」という政策について説明します。

国内では「3R+Renewable」が原則の戦略を策定

第6回の「2015年に深刻さ発覚、『海洋プラスチックごみ』対策が世界の急務に」で述べたように、日本政府は2018年の「海洋プラスチック憲章」の署名を回避しました。一方で、すでに、この問題に向けた政策検討を進めていました。

政府は2018年6月、「第四次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定し、環境省が2019年5月、「プラスチック資源循環戦略」を策定しました。

「プラスチック資源循環戦略」の内容は、資源・廃棄物制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化、アジア各国による廃棄物の輸入規制などの幅広い課題に対応するため、「3R+Renewable」つまり、リユース・リデュース・リサイクルと再生可能資源への代替を基本原則として、プラスチックの資源循環を総合的に推進することを目指すものです。

この中で、具体的目標としてのマイルストーンを公表しました。次の通りです。

・リデュース
⁠2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制する。

・リユース・リサイクル
⁠2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインにすることを目指し、2030年までに容器包装用の6割をリユース・リサイクルする。2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクルなどにより、有効利用する。

・再生利用・バイオマスプラスチック
⁠2030年までに再生素材の利用を倍増する。バイオマスプラスチックを約200万トン導入する。

特に注目されていた海洋プラスチックごみ問題については、環境省が上記の「プラスチック資源循環戦略」策定の同日に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を発表しました。これは、基本的に「プラスチック資源循環戦略」を踏襲する形のものです。具体的には、廃棄物回収・適正処理の徹底やポイ捨て・不法投棄防止による海洋流出以前の陸域における散乱ごみの削減、また、海洋に流出してしまったごみの回収、加えて、海洋生分解性プラスチックのような流出しても影響の少ない素材への転換を進めるといったものです。

大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを提唱

こうした事前の国内準備作業を踏まえて、2019年6月29日、日本が議長国として開催した「G20大阪サミット」で、日本は「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案し、首脳間で共有のうえ発表しました。実現目標として「2050年までに海洋プラスチックごみによる汚染増加を世界的にゼロにする」ことを掲げたビジョンです。

マリーン・イニシアティブを立ち上げ

さらに日本はこのビジョンの実現に向けて、「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」を立ち上げることを発表しました。これは、廃棄物管理(MAnagement of wastes)、海洋ごみの回収(Recovery)、イノベーション(INnovation)、および能力強化(Empowerment)に焦点を当てて、世界全体の実効的な海洋プラスチックごみ対策を支援すべく立ち上げたものです。

マリーン(MARINE)・イニシアティブ

表1:マリーン(MARINE)・イニシアティブ

その実現のため、日本は途上国の廃棄物管理に関する能力構築およびインフラ整備などの支援を表明しました。パラオ、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、ブータン、エジプト、南アフリカ、スーダン、モザンビークなどのアジア・アフリカ諸国への支援を実施しています。

海洋プラごみ問題解決のカギは陸上にあり

海洋プラスチックごみ問題への対処は、世界的な取り組みとして大きな潮流となりました。基本的には、プラスチック廃棄物が発生する陸上における廃棄物管理を徹底し、環境に散逸してしまうプラスチック廃棄物を世界規模で減らしていくことに尽きます。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」で提言された目標の実現に向け、実行が強く望まれていると思います。

次回は、こうした世界的潮流の中で、日本国内で実施された、2回にわたる容器包装リサイクル法の改正についてお話し、連載を締めくくりたいと思います。

第8回のテーマは「容器包装リサイクル法の改正と課題」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。