植物由来原料で環境配慮を訴求―東レなど「バイオベースPET繊維」【注目製品で捉える繊維の第4世代 第6回】

2022/10/18
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連載の目次

(タイトルは変更となる場合があります)

合成繊維の中で最も生産量の多いのはポリエステル(PEs:PolyEster)であり、その代表的な品目がポリエチレンテレフタレート(PET:PolyEthylene Terephthalate)です。ポリエステル関連では、植物由来原料の「バイオポリエステル」が注目を集めています。

「石油由来」向け設備がそのまま「バイオ由来」向けに

バイオポリエステルは、従来のポリ乳酸などのバイオプラスチックスと異なり、石油化学の技術で作られる既存のポリエステルと化学的にまったく同一の物質です。そのため、従来使われていたポリエステル製造用の設備・技術・インフラストラクチャーなどを変更・調整することなくそのまま活用することができます。そのまま使用できることを指すドロップイン型のバイオプラスチック素材として注目されました。

ポリエステルは、基本的にテレフタル酸とエチレングリコールを原料に作られます。バイオポリエステルの主流は現在、これら原料のうちエチレングリコールを植物由来のバイオエチレングリコールとしたものになっています。すでにバイオ燃料として大量生産されている植物由来バイオメタノールからバイオエチレングリコールを生産できるからです。この場合、原料全体の約30%が植物由来原料となります。

さらに、もう一方のテレフタル酸を植物由来原料とすることで、100%バイオベースのポリエステルを実現するための技術開発も世界的で推進されています。技術的には完成したとのプレスリリースもいくつか見られますが、本格的な工業生産は始まっていません。

国内各社が繊維製品を展開

部分植物由来原料を使用したポリエステルとしては、東レの「エコディア」や、帝人フロンティアの「プラントペット」、東洋紡の「バイオボランス」などが上市されています。

東レの「エコディア」は、スポーツウェア、イベントのスタッフ衣料や作業着などに採用されています。植物由来というコンセプトに一定の需要があるのでしょう。「エコディア」ではPETやポリ乳酸など複数種類の植物由来合成繊維が展開されていますが、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT:PolyTrimethylene Terephthalate)複合繊維およびテキスタイルは、日本環境協会のエコマーク商品類型「家庭用繊維製品」で紡織基礎製品として認定を受けています。これは、国際規格で基準化されている環境ラベルのうち、第三者機関が認証したものであることを指す「タイプⅠ環境ラベル認定」として初のケースです。

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図1:東レの植物由来合成繊維「エコディア」
⁠(写真提供:東レ)

帝人フロンティアは、ポリエステルの循環型リサイクルシステムに沿ってバイオポリエステルを展開することで、リサイクル困難な分野での環境配慮型素材の拡大を推進しています。同社はポリエステル構成成分の約30%を植物由来成分に置き換えた「プラントペット」を展開しています。

東洋紡は、サトウキビの搾りかす原料のポリエステル不織布「バイオボランス」で、幅広い用途を訴求しています。

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図2:「バイオボランス」の自動車用フロアカーペット基布
⁠(写真提供:東洋紡)

従来樹脂と同じ故の差別化の図りにくさも

世界の多くのポリエステルメーカーがバイオポリエステルはドロップイン型のソリューションになるとして、その生産に関心を持ち、開始計画を発表しました。2000年代半ばには、大きな生産能力拡大が見込まれました。

しかしながら、バイオポリエステル製品は本質的に従来のポリエステルとまったく同一であることから差別化を図りにくく、従来品をコストパフォーマンスで凌駕することも難しいため、当面、急激な需要拡大は見込まれていません。

今後のバイオベースのエチレングリコールとテレフタル酸の製造技術革新の成否が、このタイプの製品の発展のカギを握っていると思います。

次回は、スパイバーの「ブリュード・プロテイン」を取り上げる予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。