「スコープ1・2・3」の具体例を知って温室効果ガスの“見える化”を!【これだけは知っておきたい「脱炭素経営」 第2回】

2025/07/17
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脱炭素経営をテーマに、地方公務員として環境行政に携わってきた筆者がお届けする「これだけは知っておきたい脱炭素経営」。第2回のテーマは「スコープ1・2・3」です。脱炭素経営では、自社の事業活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量を把握することが欠かせません。その算定方法として主流となっているのが「スコープ1・2・3」の考え方です。今回は、「スコープ1・2・3」とは何か、どのように排出量を算定するのかといった、基本的な仕組みと押さえておきたいポイントをわかりやすくお伝えします。

目次

「GHGプロトコル」に沿って温室効果ガスの排出量を算定

脱炭素経営を進めるには、自社の事業活動に伴う温室効果ガス排出量の把握が必要です。

その算定には、Chematelsの以前の記事で取り上げた「地球温暖化対策法」などに基づく方法のほか、国際的なルールである「温室効果ガス(GHG:GreenHouse Gas)プロトコル」が広く用いられています。

GHGプロトコルでは、自社の排出に加え、事業活動全体から生じる温室効果ガスを合算した「サプライチェーン排出量」を算定します。製品の製造、輸送、使用、廃棄といったライフサイクル全体が対象となり、サプライチェーン全体での排出削減が求められます。

現在では、GHGプロトコルに基づいて算定した排出量について、取引先や金融機関から情報開示を求められる場面も増えてきました。こうしたルールに沿って排出量を把握し、対策を講じることが、脱炭素経営の前提となっています。

サプライチェーンの排出源に応じて「スコープ1・2・3」に分類

GHGプロトコルでは、排出源を明確にし、効果的な削減対策につなげるため、温室効果ガスの排出を「スコープ1・2・3」に分類します(図1)。

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図1:スコープ1・2・3
⁠(出所:経済産業省関東経済産業局 2024年5月発表「カーボンニュートラルと地域企業の対応<事業環境の変化と取組の方向性>」を加工して作成)

スコープ1は、燃料の燃焼や製品の製造など、事業者自らの行為により直接排出する温室効果ガスの排出を指します。例えば、工場のボイラーでの化石燃料の燃焼や、製造工程での化学反応による排出などが該当します。

スコープ2は、他社から供給された電気や熱、蒸気の使用によって、間接的に生じる排出です。使用するエネルギー源が化石燃料か再生可能エネルギーかによって、排出量は大きく変わります。

スコープ3は、スコープ1・2以外の間接排出で、原材料の調達、製品の輸送、使用、廃棄など、サプライチェーン全体の排出を含みます。15のカテゴリに分類され(図2)、従業員の出張や通勤なども対象となります。

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図2:スコープ3における15のカテゴリー
⁠(出所:環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」を加工して作成)

このように排出源を分類し、可視化することで、各工程の排出量を把握し、削減すべき優先順位を明確にすることが可能です。

排出量算定の基本は「活動量」×「排出原単位」

排出量を算定するには、目的や対象範囲、精度などの方針を定めた上で、「活動量」と「排出原単位」を掛け合わせて算出します(図3)。

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図3:排出量算定の基本式
⁠(出所:環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」を基に作成)

「活動量」とは、電気の使用量、貨物の輸送量、取引金額など、事業活動の規模を示す値です。「排出原単位」は、活動量あたりの温室効果ガス排出量を示すもので、電気1キロワット時(kWh:kiloWatt hour)あたりや、貨物の輸送1トンキロ(tkm:ton kilometer)あたりの排出量などが該当します。

スコープ3の算定は対象範囲が広く、自社以外の排出も含まれるため、必要なデータを揃えるのは容易ではありません。算定目的に応じて、入手しやすいデータで代用するなど、簡易的な方法も認められているため、環境省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」などを参考にしてください。

これらの算定業務は、特定の部門だけでは完結しません。開発、製造、経理、総務など社内の複数部門に加え、社外の取引先との連携も必要です。経営層がその重要性を十分理解し、全社的な体制で取り組むことが、脱炭素経営を進める上での鍵となります。

次回は、「脱炭素経営の初めの一歩」として、脱炭素経営を始める3つのステップとともに解説します。

和地慎太郎(わちしんたろう)

ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。