温室ガス排出量を明確化、2025年に改正法実施―地球温暖化対策法【製造業必見! これだけは知っておきたい環境法令 第4回】
2024/09/18製造業者をはじめとする皆さんに、廃棄物処理などの環境施策を実施してきた元技術系公務員がお届けしている「製造業必見!これだけは知っておきたい環境法令」。第4回のテーマは「地球温暖化対策法」です。第3回で解説した「省エネ法」に続き、カーボンニュートラルの実現に向けた日本の地球温暖化対策の主軸となる法律です。温室効果ガス排出量の算定や報告の制度など、ポイントを分かりやすく解説します。
目次
本連載で扱う項目
- 第1回 廃棄物処理法
- 第2回 プラスチック資源循環法
- 第3回 省エネ法
- 第4回 地球温暖化対策法
- 第5回 水質汚濁防止法
- 第6回 大気汚染防止法
- 第7回 土壌汚染対策法
温室効果ガス排出量を算定・報告・公表
地球温暖化対策法は、正式には「地球温暖化対策の推進に関する法律*1」といい、「地球温暖化対策推進法」や「温対法」とも略されます。
この法律の中で企業にとって特に重要なのが、「温室効果ガス*2の排出量の算定・報告・公表制度」です(図1)。この制度では、一定以上の温室効果ガスを排出する「特定排出者」に対し、毎年、温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられています。報告されたデータは国が集計と公表を行い、「地球温暖化対策計画*3」の策定や必要な施策の推進に活用されます。

図1: 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度の概要
(出所:環境省「脱炭素ポータル」より抜粋)
また、この法律は、第3回で解説した「省エネ法」と密接に関連しているため、両方の法律を併せて理解することが重要です。
「特定排出者」に報告義務がある
特定排出者に該当する事業者は、排出する温室効果ガスの種類によって異なります。
具体的には、まず、電気やガスなどを由来とする「エネルギー起源二酸化炭素(CO2)」を排出する場合において、省エネ法の特定事業者や特定輸送事業者、または年間のエネルギー使用量が1500kL以上の事業者などが該当します(図2)。

図2:エネルギー起源CO2での特定排出者とフロー図。エネルギー起源CO2は「燃料の使用又は他人から供給された電気若しくは熱の使用に伴い排出されるCO2」のこと
(出所:環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」を参考に編集部作成。フロー図を一部改変して引用)
また、工業プロセスや廃棄物の焼却から発生するCO2や、メタン、フロン類などの「エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス*4」を排出する場合において、事業者全体で従業員数が21人以上であり、温室効果ガス排出量がCO2換算で年間3000トン以上となる事業者なども該当します(図3)。

図3:エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスでの特定排出者とフロー図
(出所:環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」を参考に編集部作成。フロー図を一部改変して引用)
活動量と排出係数を掛けて排出量を算出、CO2換算で国に報告
温室効果ガス排出量の算定*5は、まず対象となる事業活動を抽出し、その活動ごとの排出量を算定します。排出量の算定は、排出活動の規模を示す「活動量」と、活動量当たりの排出量を指す「排出係数」を掛け合わせて行います。これらの排出量の合計値をCO2の単位に換算し、国に報告します。
報告書の様式については、エネルギー起源CO2の場合、省エネ法の定期報告書を利用し、それ以外の温室効果ガスの場合は地球温暖化対策法の報告書を使用します。報告義務を怠ったり虚偽の報告を行ったりした場合には、20万円以下の過料が科せられることがあるため、期限内に正確な報告を行うことが求められます。
改正法が2025年4月から施行
近年、地球温暖化対策法の大幅な改正が行われており、2025年4月には新たな改正法*6が施行されます。この改正法では、「二国間クレジット制度(JCM:JointCrediting Mechanism)の実施体制の強化」や「地域脱炭素化促進事業制度の拡充」の措置が講じられます。前者は、日本が開発途上国の温室効果ガス削減に向けて技術や資金を支援し、その成果としてのCO2排出削減量を貢献度に応じて分配するこの制度について、新たな手続きなどの規定や、指定法人制度の創設を行うものです。後者は、いまは市町村のみが定めることのできる再生可能エネルギーの促進区域などを、都道府県および市町村が共同して定めることができるようにし、複数市町村にわたる地域脱炭素化促進事業計画の認定を都道府県が行うようにするものです。
規制対象かどうかに関わらず、動向に注視を
法改正の背景には、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度までに温室効果ガスを46%削減し、さらには50%削減に挑戦するという日本の方針があります。
地球温暖化対策法や省エネ法による施策の実現は、日本のカーボンニュートラル達成に不可欠です。温室効果ガスの排出削減は、すべての企業にとって重要な課題であり、規制対象かどうかに関わらず、今後もその動向に注視する必要があります。
次回は「水質汚濁防止法」を取り上げる予定です。
※ 本記事に記載した内容は、厳密さよりも分かりやすさを重視して情報提供することを目的としたものです。実際の地球温暖化対策法の運用については、法令の原文を十分確認し、行政への問い合わせなどにより対応してください。また、法改正などにより、記事掲載内容から制度が変更されている場合がありますので、環境省のホームページなどで最新情報をご確認ください。
【注釈】
*1: 地球温暖化対策の推進に関する法律
・地球温暖化対策法の関連法令の原文は以下のリンクをご参照ください。
・法律
・施行令(政令)
・施行規則(省令)
*2: 温室効果ガス
・地球温暖化対策法第2条第3項では、温室効果ガスを以下のとおり定義しています。
(1)二酸化炭素
(2)メタン
(3)一酸化二窒素
(4)ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
(5)パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
(6)六ふっ化硫黄
(7)三ふっ化窒素
*3: 地球温暖化対策計画
・地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画。温室効果ガスの種類や部門別の削減目標に向けた施策が記載されています。詳細は環境省のサイトをご覧ください。
*4:エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス
・温室効果ガスのうち、非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素。これらのエネルギー起源CO2以外の温室効果ガスのことを、非エネルギー起源CO2の“0.5種類”と、その他のガス6種類を合わせて「6.5ガス」と総称します。
*5:温室効果ガス排出量の算定
・環境省の算定・報告マニュアルや様式はこちらをご覧ください。
*6:新たな改正法
・詳細は環境省のサイトをご覧ください。
和地慎太郎(わちしんたろう)
ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。
