汚染してない? 調査が必要な場合と対策の把握を―土壌汚染対策法【製造業必見! これだけは知っておきたい環境法令 第7回】

2024/11/12
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製造業者をはじめとする皆さんに、廃棄物処理などの環境施策を実施してきた元技術系公務員がお届けしている「製造業必見!これだけは知っておきたい環境法令」。最終回となる第7回のテーマは「土壌汚染対策法」です。近年、土壌汚染の調査件数が増加傾向にある中で、汚染が発覚する事例も増えています。汚染の状況によっては、調査や対策に多大な費用や時間がかかることがあり、日常的に経営リスクとして捉えることが重要です。今回は、土壌汚染の調査が必要なタイミングや、汚染が判明した際に必要な措置について、分かりやすく解説します。

目次

土壌汚染を把握し、適切に管理するための法律

土壌汚染対策法*1は、土壌の汚染状況を調査し、汚染が確認された場合に必要となる措置について定めた法律です(図1)。法律の目的は、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することにあります。

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図1:土壌汚染対策法の概要。2019年4月1日現在
⁠(出所:環境省「土壌汚染対策法の概要」より制度の部分を抜粋)

土壌汚染とは、重金属や揮発性有機化合物といった「特定有害物質*2」によって土壌が汚染されている状態を指します。例えば、特定有害物質を含む原料や廃液が漏れることが原因で、土壌が汚染されることがあります。

土壌汚染は目に見えず、気付きにくい問題です。そのため、土壌汚染対策法では、特定の機会に土壌汚染の調査を義務付けています。この点は土壌汚染対策の特徴といえます。

調査件数は年々増加しており、その半数近くで土壌汚染が確認されています(図2)。特に、特定有害物質を使用してきた工場や事業場では、汚染のリスクが高くなります。

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図2:年度別の土壌汚染調査事例数
⁠(出所:環境省「令和4年度 土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果」を元に編集部作成)

土壌汚染は発見が遅れると、地下水を通じて広範囲に被害が広がる恐れがあり、さらに調査や対策に多大な費用がかかる可能性もあります。そのため、土壌汚染対策は企業経営におけるリスク管理の問題として捉えることが重要です。

調査が必要なタイミングは三つ

土壌汚染対策法では、以下の三つのタイミングで土壌汚染状況の調査が義務付けられています。

一つ目は、水質汚濁防止法で規定されている「有害物質使用特定施設」の使用を廃止した時です。これは土壌汚染対策法の第3条に規定されています。ただし、引き続き工場の操業を続ける場合には、同法「第3条第1項ただし書き」に基づく届け出をすることで、一時的に調査が免除されます。

二つ目は、一定規模以上の土地の形質変更を行う際に、都道府県知事などが土壌汚染の恐れがあると認める時です。具体的には、3000平方メートル以上の土地の掘削や盛り土をする際、特定有害物質の使用の有無に関わらず、まずは届け出が必要となります。また、有害物質使用特定施設が設置されている土地では、900平方メートル以上の形質変更が届け出の対象です。届け出後、行政が公的届出資料などの行政保有情報を確認し、特定有害物質の使用履歴が確認された場合に、調査命令が出される仕組みです。これらは法第4条に規定されています。

三つ目は、近隣で地下水や土壌の汚染が確認されているなど「土壌汚染が存在する蓋然性が高い」として、都道府県知事などから調査命令が出される時です。ただし、このケースは少なく、2022年度の事例は0件でした。

いずれの調査も、土地の所有者などが指定調査機関*3に依頼し、その結果を都道府県知事などに報告する義務があります。

土壌汚染が判明したら「区域の指定」と土地管理が必要

土壌汚染が確認された場合、都道府県知事などは健康被害の恐れ*4の有無に応じて「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定し、その内容を公示します。いずれの区域でも、汚染が除去された場合は区域の指定が解除されます。

「要措置区域」とは、健康被害の恐れがある場合に指定される区域で、汚染の除去などの措置*5が必要です。この区域に指定された土地は、形質変更が原則として禁止されます。

「形質変更時要届出区域」とは、土壌汚染が存在するものの、健康被害の恐れがない場合に指定される区域です。汚染の除去などの措置は不要ですが、土地の形質変更を行う場合には届け出が必要です。

実際に土壌汚染の調査が行われる場面としては、工場の移転時や閉鎖時が多いでしょう。特定有害物質の漏洩防止を徹底するのは当然のことですが、過去の使用状況を把握し、土壌汚染の可能性がある場合には、操業中から対策の実施を講じることで、被害の拡大防止やコストの削減につなげることができます。

「製造業必見! これだけは知っておきたい環境法令」は今回で終了です。全7回にわたってお読みいただきありがとうございました。

※ 本記事に記載した内容は、厳密さよりも分かりやすさを重視して情報提供することを目的としたものです。実際の土壌汚染対策法の運用については、法令の原文を十分確認し、行政への問い合わせなどにより対応してください。また、法改正などにより、記事掲載内容から制度が変更されている場合がありますので、環境省のホームページなどで最新情報をご確認ください。

【脚注】

注釈

*1: 土壌汚染対策法
 ⁠
・土壌汚染対策法の関連法令の原文、国のガイドラインやパンフレットは以下のリンクをご参照ください。
⁠  ・土壌汚染対策法
⁠  ・土壌汚染対策法施行令(政令)
⁠  ・土壌汚染対策法施行規則(省令)
⁠  ・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)(環境省)
⁠  ・土壌汚染対策法ガイドライン(環境省)
⁠  ・「土壌汚染対策法のしくみ」(環境省・日本環境協会)
⁠  ・「中小事業者のための今すぐ始める土壌汚染対策」(経済産業省)

*2: 特定有害物質
⁠ ・土壌や地下水に含まれることが原因で人の健康に被害を生ずる恐れがある有害物質として土壌汚染対策法施行令第1条で定めた26物質。第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(重金属等)および第三種特定有害物質(農薬等)があります。物質ごとに、地下水を飲むリスクの観点から定められた「土壌溶出量基準」と、土が口に入るリスクの観点から定められた「土壌含有量基準」の値が設定されています。

*3: 指定調査機関
⁠ 
・環境大臣もしくは地方環境事務所長または都道府県知事から、調査を的確に実施することができる者として指定を受けた調査機関。詳細については、環境省のサイトをご覧ください。

*4: 健康被害の恐れ
⁠ 
・土壌中の特定有害物質を「地下水経由での摂取」または「直接摂取」するリスクを指します。地下水経由での摂取リスクがある場合とは、特定有害物質が地下水に溶け出し、周辺の土地で飲用井戸などがあることをいいます。直接摂取リスクがある場合とは、土壌汚染のある土地に人が立ち入ることができることをいいます。

*5:汚染の除去などの措置
⁠ ・人の健康被害を防止するために行われる措置であり、土壌汚染の状況によって次のようにさまざまな方法があります。地下水経由での摂取リスクがある場合は、地下水の水質の測定、汚染された土壌を封じ込めて地下水への汚染の拡散を防止する措置などがあります。直接摂取のリスクがある場合は、盛土や舗装などの措置があります。地下水経由での摂取、直接摂取のいずれにも有効な対策としては、掘削除去がありますが、汚染の拡散リスクの防止の観点より、できる限り抑制的に取り扱うこととされています。詳細は、土壌汚染対策法ガイドライン(環境省)をご覧ください。

和地慎太郎(わちしんたろう)

ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。

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