ばい煙、粉じんなど物質ごとに排出基準ありー大気汚染防止法【製造業必見! これだけは知っておきたい環境法令 第6回】

2024/10/24
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製造業者をはじめとする皆さんに、廃棄物処理などの環境施策を実施してきた元技術系公務員がお届けしている「製造業必見!これだけは知っておきたい環境法令」。第6回のテーマは「大気汚染防止法」です。工場から排出されるさまざまな大気汚染物質に対して規制が設けられており、地域によってはより厳しい基準が適用されることもあります。今回は、大気汚染防止法における規制物質や排出基準の基本的なポイントを、分かりやすく解説します。

目次

大気汚染物質に対する規制を定めた法律

大気汚染防止法*1は、国民の健康を守り、生活環境を保全するため、さまざまな大気汚染物質に対する規制を定めた法律です。第5回「水質事故防止へ体制づくりや排水基準の把握を」で取り上げた水質汚濁防止法などと同様に、環境法令の最も基本的な事項を定めた環境基本法が規定する環境基準*2を達成するための具体的な対策が規定されています。

図1に示すとおり、大気汚染防止法では、工場や事業場に対して主に届出義務と排出基準の遵守義務が課されています。これらの規制を確実に守るためには、専門的な知識*3や経験が必要なため、日常的に法令への理解を深めることが求められます。

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図1:大気汚染防止法による規制等の体系の概要。*印は、電気工作物、ガス工作物または鉱山保安法の経済産業省令で定める施設に対しては適用されず、それぞれ電気事業法、ガス事業法または鉱山保安法の相当規定の定めによる
⁠(出所:千葉県「事業者のための大気汚染防止法のてびき」を参考に作成)

ばい煙、粉じん、VOC、水銀……規制対象の物質と施設

工場や事業場から排出される大気汚染物質には、さまざまな規制対象があります(図2)。その中で、「ばい煙」「粉じん」「揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)」「水銀等」を排出または発生させる施設を設置する場合は、事前に所管の自治体に届出を行う必要があります。まずは、これらの規制物質と施設に関する要件を正確に把握することが重要です。

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図2:大気汚染防止法で規制対象となる物質と施設。濃い網掛けは、施設設置の際、事前に所管自治体に届け出る必要のあるもの
⁠(出所:環境省ケミココ「大気汚染防止法」参考に作成)

規制物質ごとに、排出基準の遵守を

大気汚染防止法では、物質の種類や施設の種類・規模に応じて排出基準が定められています。大気汚染物質を排出する者は、これらの基準を遵守しなければなりません。基準に適合しない場合、故意・過失に関わらず刑罰が科される可能性があるため、十分な注意が必要です。

ばい煙、粉じん、揮発性有機化合物、水銀等の順に、排出基準について説明します。

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図3:ばい煙の排出規制体系
⁠(出所:総務省「誌上セミナー 大気汚染について(ちょうせい第113号)」より抜粋)

まず、ばい煙の排出基準*4は、汚染の度合いに応じて4種類に分類されます(図3)。すべてのばい煙発生施設に適用される「一般排出基準」が国によって一律に定められており、大気汚染が深刻な地域では「特別排出基準」が適用される場合もあります。さらに、自治体によっては「上乗せ排出基準」や「総量規制基準」も適用されることがあります。

また、ばい煙を排出する者は、施設からのばい煙の量や濃度を測定し、その結果を記録して3年間保存する義務があります。

次に、粉じんのうち、一般粉じんについては、飛散防止のために「一般粉じん発生施設の構造等に関する基準*5」が定められています。この基準に基づき、集じん機や防じんカバーの設置、散水などの対策を行う必要があります。

また、特定粉じんとは石綿、つまりアスベストを指し、特定粉じん発生施設を設置する工場の敷地境界上では、特定粉じんの許容限度が定められているほか、特定粉じんを含む建築物や工作物を解体する作業を行う際は、事前に届け出を行い、飛散防止のための作業基準を遵守することが求められます。なお、特定粉じん発生施設は2007年度末までに全て廃止されています。

揮発性有機化合物や水銀等の排出についても、それぞれ施設の種類や規模に応じた排出基準*6が設けられています。ばい煙と同様に、排出者はこれらの物質の濃度を測定し、その結果を記録して3年間保存する義務があります。

次回は「土壌汚染対策法」を取り上げる予定です。

※ 本記事に記載した内容は、厳密さよりも分かりやすさを重視して情報提供することを目的としたものです。実際の大気汚染防止法の運用については、法令の原文を十分確認し、行政への問い合わせなどにより対応してください。また、法改正などにより、記事掲載内容から制度が変更されている場合がありますので、環境省のホームページなどで最新情報をご確認ください。

脚注

注釈

*1: 大気汚染防止法
 ・大気汚染防止法の関連法令の原文は以下のリンクをご参照ください。
⁠  ・大気汚染防止法
⁠  ・大気汚染防止法施行令(政令)
⁠  ・大気汚染防止法施行規則(省令)
⁠  ・大気汚染防止法(環境省)

*2: 環境基準
 ・環境基本法第16条に定められた、人の健康の保護および生活環境の保全の上で維持されることが望ましい基準です。行政上の政策目標とされています。詳細は環境省のサイトをご覧ください。

*3: 専門的な知識
⁠ ・工場や事業場によっては、公害防止管理者を配置する義務があります。公害防止管理者は「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」により定められていますので、詳細は以下をご覧ください。
⁠  ・特定工場における公害防止組織の整備に関する法律
⁠  ・特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の施行について(通知)
⁠  ・一般社団法人産業環境管理協会

*4: ばい煙の排出基準
⁠ ・大気汚染防止法第3条、施行規則別表第1別表第2別表第3などに規定されています。また、環境省のサイトにも掲載されています。自治体の上乗せ基準については、各自治体の条例をご参照ください。

*5:一般粉じん発生施設の構造等に関する基準
⁠ ・大気汚染防止法第18条の3、施行規則別表第6などに規定されています。

*6:排出基準
⁠ ・揮発性有機化合物の排出基準については、大気汚染防止法第17条の4、施行規則別表第5の2などに規定されています。水銀等の排出については、大気汚染防止法第18条の27、施行規則別表第3の3などに規定されています。

和地慎太郎(わちしんたろう)

ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。

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