「知る」「測る」「減らす」の実践ステップに沿って第一歩を!【これだけは知っておきたい「脱炭素経営」 第3回】

2025/08/07
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脱炭素経営をテーマに、製造業の現場経験と自治体での環境行政の実績を持つ筆者がお届けするChematelsの「これだけは知っておきたい『脱炭素経営』」。第3回は「脱炭素経営のための初めの一歩」がテーマです。脱炭素経営に取り組むには、やみくもに二酸化炭素(CO2)を減らそうとしてもうまくいきません。大切なのは、正しい順序で一歩ずつ着実に進めることです。今回は、脱炭素経営を進めるための基本ステップ「知る」「測る」「減らす」について、押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

目次

脱炭素経営に向けた三つの基本ステップを押さえよう

脱炭素経営に取り組もうとしても、「何から始めればいいのか分からない」と感じる企業や社員の方は少なくありません。

そこで環境省が示しているのが、「知る」「測る」「減らす」という三つのステップです。脱炭素経営を進めるには、この基本的なステップを着実に踏みながら、継続的に取り組んでいくことが大切になります。

ステップ1「知る」:情報を集めて方針を検討

まずは、国や自治体の方針、業界やバリューチェーンの動向、消費者ニーズなど、事業環境の変化を幅広く把握します。

環境省や経済産業省は、脱炭素に関連する政策、補助金制度、企業の取り組み事例などを紹介するハンドブックや情報サイトを公開しています(図1)。いずれも情報収集の第一歩として有効です。

政府の脱炭素関連のサイト・資料や計画・戦略

脱炭素経営に関する各種サイト・資料

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脱炭素と関連が深い戦略や計画

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図1:政府の脱炭素関連のサイト・資料や計画・戦略。クリックするとリンク先へ

また、国家戦略を確認しておくことで、今後の脱炭素の方向性が見えてきます。

例えば、内閣官房は、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立に向けた社会変革の取り組みを指すグリーン・トランスフォーメーション(GX)について長期的な方向性を示した「GX(Green Transformation)2040ビジョン」に関連して、「分野別投資戦略(ver.2)」を策定しています。そこでは化学分野における、ナフサ由来原料からバイオ原料への転換や、ケミカルリサイクル、脱炭素燃料の導入などを重点施策として明記しています(図2)。

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図2:「GX2040ビジョン」における化学分野の投資戦略

(出所:内閣官房GX実行会議「分野別投資戦略ver.2 令和6年12月27日」24ページを加工して作成)

こうした外部環境の情報を整理した上で、「自社として何ができるか」「二酸化炭素(CO2)削減をどう事業成長につなげるか」を社内で検討することが、脱炭素経営の第一歩となります。

ステップ2「測る」:CO2排出量を算定し、削減対象を特定する

次は、自社のどこで、どれだけのCO2が排出されているかを把握することです。

排出量の算定は、地球温暖化対策法や、温室効果ガス(GHG:GreenHouse Gas)プロトコルなどに基づき、電気やガス、燃料などの使用量に排出係数を掛け合わせて行います。Excelなどで独自に集計する方法に加え、業界団体や自治体などが提供する算定ツールを活用することも可能です。GHGプロトコルについては第2回「『スコープ1・2・3』の具体例を知って温室効果ガスの“見える化”を!」で詳しく解説したのでご覧ください。

排出量を算定したら、事業所単位や事業活動単位でグラフ化して分析を行い、削減対象を特定します。特に製造業では、工程や設備ごとの使用量を細かく把握することで、主要な排出源を特定しやすくなり、効果的な対策の検討に役立ちます。

ステップ3「減らす」:削減計画を策定し、対策を実行する

最後のステップは、削減対策を洗い出し、計画を立てて実行に移すことです。

対策の基本は、省エネルギーと化石燃料の使用削減です。専門家による省エネ診断など、社外の知見も活用しながら、運用の見直しや高効率な設備への更新を検討します。また、設備の電化やバイオ燃料への転換、電気自動車や再生可能エネルギーの導入も有効な手段です。

削減目標の設定も重要です。科学的根拠に基づく目標(SBT:Science Based Targets)の認定を取得するなど、国際的な枠組みを活用すれば、社内外へのピーアールにもつながります。

対策には一定のコストがかかりますが、CO2削減はコスト削減に貢献するものです。成果が見えやすいため、従業員のモチベーション向上という効果も期待できます。

さらに、将来的な規制強化を見据え、早期に削減に取り組むことが重要です。そうした努力を事業成長へとつなげることが、脱炭素経営を成功に導く鍵となります。

次回は、脱炭素経営に取り組みこうした三つのステップを実践し、成果を上げている企業の事例を紹介します。

和地慎太郎(わちしんたろう)

ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。