サーキュラーエコノミーへ 技術革新と施策に光明求める【バイオプラの現状と課題 第7回】
2024/03/14目次
本連載で扱う項目
Chematelsの本連載「バイオプラの現状と課題」は今回で最終回です。バイオプラスチックは、サーキュラーエコノミーの推進という地球規模の大きな流れの中で、プラスチック廃棄物管理改善の有効な資材として、また、気候変動の影響を縮減する可能性のある資材として注目され、開発されてきました。では、バイオプラスチックは、いまどのような位置にあり、これからどこにどう向かっていくのでしょうか。これが今回のテーマです。
率にして1%未満のバイオプラ、技術革新が普及を左右する鍵に
プラスチック廃棄物をいかに管理するかは、循環型経済を指すサーキュラーエコノミーを推進する上での最大の課題です。この課題に取り組む努力を続けることは必須といえますが、実際に解決を図ることは容易ではありません。
地球資源を保護し、効率的に利用することは、持続可能な開発に不可欠です。従来の産業の競争力強化を重視した経済的コストパフォーマンス優先の取り組みから、気候変動の抑止や地球環境の保護を重視したコスト負担ありきの取り組みへパラダイムを変換すべきだという認識は、世界規模で広まっています。
そうした観点から、バイオプラスチック、つまり生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは大きな注目や期待を受け、数多くの取り組みの対象となっています。
しかしながら、人びとの注目や期待ほど取り組みが進んでいるわけではありません。欧州バイオプラスチック協会(EUBP:European Bioplastics)によれば、2022年の全世界のプラスチック生産量4億30万トンに対し、バイオプラスチックの生産能力は1%未満の223万トン。生産量は0.5%と報告されています。今後の大幅な伸びが期待されていますが、それでも、最大で全体の2%になるのがせいぜいといったところです。

図1:世界のプラスチック生産量と内訳。重合体による。2022年
(出所:欧州バイオプラスチック協会(EUBP)「Plastics-the fast Facts 2023」を参考に編集部作成)
なぜ、バイオプラスチックの利用が増えないのか。その主な理由は、環境配慮の観点を除くと、機能・経済性の両面で、従来のプラスチックに及ばないからです。そのため当面は、生分解性機能がどうしても必要とされる分野や、環境配慮の社会的コスト負担が許容される範囲に限っての利用が進むものと思われます。
そうした現状ではあるものの、今後、注目に値するのは第6回「発想を変えた『新たなバイオプラ』への期待」で述べた「バイオマス割当プラスチック」に見られるような新たな技術革新の動向です。従来の石油化学系プラスチックに機能性や経済性でどれだけ対抗できるか。これにより今後のバイオプラスチックの大勢が決まると思われます。
プラスチック廃棄物管理、日本のイニシアチブに期待
それでもなお、従来の製造法によるプラスチックの廃棄物は存在しつづけます。繰り返しになりますが、やはりプラスチック廃棄物をいかに管理するかが、グローバルな喫緊の課題です。
プラスチック廃棄物の最終到達域であるからでしょう、海洋ごみの問題が多く取り上げられます。しかしながら、基本的には、大部分の廃棄物発生域である陸上での廃棄物管理をいかに、効率よく早期に実現するかが問題です。そして、この問題は、先進諸国だけではなく、依然としてプラスチック廃棄物管理の体制が整っていない多くの途上国を含むグローバルな取り組みを必要とします。
その点、2019年に大阪で開催された金融・世界経済に関する首脳会合(G20大阪サミット2019)で共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、日本が発信した「参加国は2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにする」とするマリーン(MARINE)・イニシアティブの目標設定は有意義なものと評価できます。日本が、途上国の廃棄物管理に関する能力構築およびインフラ整備などに支援を表明したことも適切な判断だったと思います。
その後、世界では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19:Corona Virus Disease 2019)の流行や、ロシアのウクライナ侵攻といった、非常事態といえる出来事が勃発しました。サミットなどで議論された道筋は見えにくくなっていますが、確実な実践を期待したいところです。
「3R+Renewable」の基本原則を忘れずに
連載の最後に、2019年に日本政府が「プラスチック資源循環戦略」において基本原則として表明した「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」と「再生可能(Renewable)な資源への代替」からなる「3R+Renewable」の概念を掲げておきます。

図2:3R+Renewable
この基本原則こそが、今後の方向を示す適切な表現であるという見方をお伝えし、7回にわたりお届けした「バイオプラの現状と課題」の締めくくりとします。
「バイオプラの現状と課題」は今回で終了です。長らくのご愛読ありがとうございました。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
