リサイクルもバイオプラも「主流」への道遠し【バイオプラの現状と課題 第4回】
2024/01/25目次
本連載で扱う項目
- 第1回 サーキュラーエコノミーとプラスチック
- 第2回 世界の動向とバイオプラスチック
- 第3回 廃棄物管理と気候変動問題におけるバイオプラスチックの役割
- 第4回 プラスチックリサイクルとバイオプラスチック
- 第5回 海洋汚染問題とバイオプラスチック
- 第6回 ケミカルリサイクルによる新しいバイオプラスチックス
- 第7回 世界動向と今後の見通し
Chematelsの連載「バイオプラの現状と課題」第4回をお届けします。今回は、プラスチックリサイクルの実施とバイオプラスチックの供給について、その現状を見ていきます。
管理外の率がリサイクルの率をはるかに上回っている
プラスチックは石油化学製品の大部分を占めています。これはプラスチックが「丈夫で長持ち」という大きな特徴をもっているからといって過言ではありません。世界で年間4億トン以上のプラスチックが供給されています。
一方で、使用後かなりのプラスチックが廃棄物として自然界に放出されています。これらの廃棄物は長期にわたり自然界に蓄積・滞留するため、地球環境に多くの不都合な状況をもたらす危険が高まっています。これが、サーキュラーエコノミーにおいてプラスチック廃棄物管理が最重要課題となっている理由です。
プラスチック廃棄物管理への緊急の対応が必要だとする指摘はすでに1980年代後半にありました。実際、「3R」といわれる「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」に代表される多くの取り組みが続けられてきたのです。
歴史的には、経済性を重視した資源の効率的利用という観点からプラスチックリサイクルの取り組みがスタートしました。これにより、製造・加工工場内での端材やオフスペック品のような、均一品質で廃棄物の分別回収が容易なリサイクルが進みました。
しかしながら、ポストコンシューマー品とよばれる、消費者が使った後のプラスチック製品のリサイクルについては、分別回収のコストが高く、経済的な負担がかかる状況が続いています。廃棄物を製品原料にして再利用することを指すマテリアルリサイクルの比率は、先進国といえる日本でも20%以下にとどまっています。
実際のところは、熱エネルギーを回収して利用することを指すサーマルリサイクルが主体となっています。サーマルリサイクルは、欧米ではリカバリーとよばれ、リサイクル手法として認められていません。
2022年6月に経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)が発表した「グローバル・プラスチックス・アウトルック」によれば、2019年における世界のプラスチック廃棄物発生量は約3億5000万トンです。うち、リサイクルされているのはわずか9%で、埋め立てが50%、焼却が19%でした。加えて深刻なことに、22%は廃棄物管理システムから外れて、管理されていない廃棄物集積場での処理や、露天焼却がされており、そのかなりの部分が陸域・水域環境に漏出していると報告されています。

図1:管理外・散逸が22%で、リサイクルは9%のみ。2019年におけるリサイクル残渣や回収ごみの処分を考慮した処理法別シェア
(出所:経済協力開発機構(OECD)「プラスチックス・アウトルック・データベース」をもとに編集部作成)
役割あるが…バイオプラの供給量はまだ1%
第3回「『土に分解』『バイオ原料を使用』は期待先行」で詳しく解説した生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックを合わせたバイオプラスチックの供給量は、全プラスチックの中で1%程度です。地球環境保全に期待されるものの、量的な寄与率・効果は限定的といえます。
ただし、小規模すぎて回収・リサイクルがほぼ不可能な化粧品用などの粉末プラスチック、ストロー、綿棒、カトラリー類などに対しては、生分解性プラスチックの使用が強く推奨されています。これらは自然界への散逸が避けられないことから、自然環境の中で微生物などのはたらきで分解されることに期待せざるをえないのです。
また、二酸化炭素(CO2)排出抑制の観点からは、再生可能資源であるバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの使用拡大が、各国の政治課題として目指されています。
バイオプラスチックは、プラスチックリサイクルという点では、本来的に再生可能資源であることから有効活用される可能性があります。しかしながら、具体的な効果に結びつけるには、多くのインフラシステム変更が必要であり、現状は、限定的な分野での活用にとどまっているといえます。
サーキュラーエコノミーへ、EUはプラスチックを重点分野に
プラスチック廃棄物管理の向上は、使用済みプラスチックの分別回収をいかに効率的に進め、その再利用の高度化をいかに実現するかにかかっています。
欧州連合(EU:European Union)は2015年に発表したサーキュラーエコノミーに向けての政策パッケージで、重要優先課題として廃棄物の再資源化を挙げています。さらに、第一の重点分野としてプラスチックを取り上げ、リサイクルシステムの構築強化や二次原材料の積極的な市場拡大を図ろうとしています。
これらのことから潮流としては、現在の主力である熱回収によるサーマルリサイクルを高度化するための手法開発や、必要な政策の積極的な実施推進が、サーキュラーエコノミーに向けて目指されていると考えられます。
次回のテーマは「海洋汚染問題とバイオプラスチック」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
