サーキュラーエコノミーへの鍵握るプラ資源化【バイオプラの現状と課題 第1回】
2023/11/21目次
本連載で扱う項目
- 第1回 サーキュラーエコノミーとプラスチック
- 第2回 世界の動向とバイオプラスチック
- 第3回 廃棄物管理と気候変動問題におけるバイオプラスチックの役割
- 第4回 プラスチックリサイクルとバイオプラスチック
- 第5回 海洋汚染問題とバイオプラスチック
- 第6回 ケミカルリサイクルによる新しいバイオプラスチックス
- 第7回 世界動向と今後の見通し
皆さん、よく「循環型社会の形成が今後の重要な課題」といった記事や報告に目をふれることがあると思います。Chematelsの新連載「バイオプラの現状と課題」では、循環型社会形成に向けた経済政策としての「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)の取り組みに注目します。中でも、リサイクルや廃棄物管理で最も重要な課題であるプラスチック関連の取り組みを紹介し、大きな役割が期待されているバイオプラスチックの動向はどうか、また、将来の可能性をどのように判断すべきかといった観点でお話を進めてみたいと思っています。
経済のあり方を「直線型」から「循環型」へ
サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方は、欧州連合(EU:European Union)が2015年12月に政策パッケージとして公表したことで世界的に広まった概念です。
従来の経済のあり方は、「資源の採取 → 生産 → 使用 → 廃棄」という「リニアエコノミー」(直線型経済)でした。この一方通行にモノを作って使う状況からの脱却を目指そうとするのが、サーキュラーエコノミーです。経済活動においてモノやサービスを生み出す初めの段階から、リサイクル・再利用を前提に設計することにより、できる限り資源投入量や消費量を抑え、製品・素材・資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物発生量を最小限化する経済システムを意味します。

図1:リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ
(出所:オランダ「A Circular Economy in the Netherlands by 2050 -Government-wide Program for a Circular Economy」(2016)をもとに編集部作成)
従来、省資源化や、リデュース(減量)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)を指す「3R」の活動が行われてきました。これに対してサーキュラーエコノミーは、資源の大量消費や廃棄物の処理に、事後的に対応していくのでなく、経済のあり方から計画的にデザインするという点で、一段進んだ考え方といえるでしょう。
EUの経済循環化ではプラスチックが最優先課題に
EUのアクションプランの中で優先課題の第一がプラスチックであることからも、サーキュラーエコノミーの狙いにおけるプラスチックへの問題認識が最も強いことが分かります。EUは具体的な戦略の中で、リサイクルの可能性、生分解性プラスチックの可能性、有害物質としてのマイクロプラスチックの存在、海洋ゴミ問題の解決などを揚げています。また廃棄物に関する改正法案の中で、プラスチック包装のリサイクルに関する野心的な目標を提案しています。
英国の著名なサーキュラーエコノミー推進団体であるエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則を次の通り掲げています。
・1. 廃棄物や汚染を生み出さない
・2. 製品や素材を(高価値のまま)流通・循環させる
・3. 自然環境の再生
そして同財団は、経済活動の中で資源循環の拡大推進のため、製品やサービスを市場に出す前の設計段階からその全生涯をデザインし、メンテナンスや修理を充実して製品寿命、つまり製品の価値をできるだけ長く保つことが要点と述べています。また、製品使用後も廃棄物とならないように次の用途・再資源化の活路をあらかじめ用意することも要点としています。
今回の連載「バイオプラの現状と課題」では、こうした背景を踏まえ、サーキュラーエコノミー推進の中でのプラスチック関連の取り組みと、その中でのバイオプラスチックの役割や可能性について、説明していきたいと考えています。
次回のテーマは「世界の動向とバイオプラスチック」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
