遅々ながら進む、世界のプラスチック戦略【バイオプラの現状と課題 第2回】

2023/12/07
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目次

本連載で扱う項目

  • 第1回 サーキュラーエコノミーとプラスチック
  • 第2回 世界の動向とバイオプラスチック
  • 第3回 廃棄物管理と気候変動問題におけるバイオプラスチックの役割
  • 第4回 プラスチックリサイクルとバイオプラスチック
  • 第5回 海洋汚染問題とバイオプラスチック
  • 第6回 ケミカルリサイクルによる新しいバイオプラスチックス
  • 第7回 世界動向と今後の見通し

Chematelsの連載「バイオプラの現状と課題」をお届けしています。第2回は、前回の「サーキュラーエコノミーへの鍵握るプラ資源化」で述べた欧州連合(EU:European Union)が発信したサーキュラーエコノミーに向けた取り組みを踏まえつつ、視野を世界レベルに広げて見ていきます。日本を含む世界各国が、どのようにプラスチックをめぐる課題に取り組み、現在までにどのような活動に結びつけているか解説します。

G7やG20が国際的議論の舞台に

サーキュラーエコノミーの取り組みは、経済のあり方の大きな変更を伴うという性格上、先進諸国の主導が中心になります。そのため、多くの議論は、毎年開かれる先進7カ国(G7:Group of Seven)首脳会議や、20カ国・地域(G20:Group of Twenty)首脳会議の場を中心に行われてきました。

EUのサーキュラーエコノミー政策パッケージが発表された2015年にドイツで開かれた G7エルマウ・サミットでは、参加国首脳が海洋環境保護についての首脳宣言をまとめました。ただし、その内容は従来的なもので、「天然資源の保護と効率的な利用は持続可能な開発に不可欠」「海洋ごみ、特にプラスチックごみが世界的課題を提起していることを認識する」との表現にとどまりました。

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図1:海岸に打ち寄せるプラスチックなどのごみ

その後、2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダホス会議)で英国エレン・マッカーサー財団が、「2050年には、海洋域におけるプラスチック廃物の総量は、海水域での魚介類の総重量を超える」とセンセーショナルな講演をするなど、海洋域におけるプラスチック廃棄物管理に焦点を置いた議論が大きく進展していきました。

2018年1月にEUが採択した「サーキュラー・エコノミーにおける欧州プラスチック戦略」では、2030年までに、EUのプラスチック包装をすべてリサイクル可能なものにするとともに、ワンウェイプラスチックの消費量を減少し、マイクロプラスチックの意図的使用を制限することを目標としています。

日本は「憲章」に未署名ながら「イニシアチブ」を主導

同年にカナダで開かれたG7シャルルボワ・サミットでは、これらの集大成として「海洋プラスチック憲章」が提案されました。次のような具体的な目標設定が含まれています。

  • 2030年までに、プラスチック用品を全て、再利用またはリサイクル可能なもの(熱源利用などへの活用も含む)に転換する。
  • 2030年までに、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上にする。
  • プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を2030年までに55%以上、2040年までに100%に上げる

しかしながら、当時ドナルド・トランプ政権下にあった米国と日本の2カ国が署名しませんでした。日本は、署名回避の理由を宣言に盛り込まれている目標に対応する体制が整っていないからとし、次回議長国として、G20大阪サミットでの首脳会議での継続検討を約束しました。

欧州委員会は2018年10月、「使い捨てプラスチック製品の規制法案」を議決します。食器やカトラリー、ドリンクカップ、レジ袋、菓子類の包装フィルム、衛生用品など10品目の消費抑制措置の導入を進めるなど、具体的な動きを加速させていきました。

そして2019年6月のG20大阪サミットにおいて、日本は2050年までに海洋プラスチックごみによる汚染増加をゼロにすることを実現目標とした「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案し、首脳同士が共有しました。その実現のために(1)廃棄物管理(Management of Wastes)、(2)海洋ごみの回収(Recovery)、(3)イノベーション(Innovation)、および(4)能力強化(Empowerment)に焦点を当てた「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」の立ち上げを発表。日本政府は途上国の廃棄物管理に関する能力構築およびインフラ整備などの支援を表明しました。

ここまでが、先進国首脳会議におけるサーキュラーエコノミーへの潮流の強化とそれを受けてのプラスチックをめぐる政策論議の流れです。

コロナ禍などの状況のなかで進む体制づくり

ご承知のように、その後、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2:Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)のパンデミックが起きます。さらに2022年2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始しました。これらの影響で、首脳会議におけるプラスチック関連の議論はメインで取り上げられなくなってしまいました。

とはいえ日本は、上記の「2050年までに海洋プラスチックごみによる汚染増加ゼロ」の目標に向けた体制づくりや日本の容器包装法改正などの法整備を始めています。次回からは、こうした取り組みを紹介し、さらにバイオプラスチックの関わりや成否の可能性などを説明していきたいと思っています。

次回のテーマは「廃棄物管理と気候変動問題におけるバイオプラスチックの役割」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。