「土に分解」「バイオ原料を使用」は期待先行【バイオプラの現状と課題 第3回】

2023/12/21
Image

目次

本連載で扱う項目

Chematelsの連載「バイオプラの現状と課題」の第3回をお届けします。今回は、本連載のメインテーマであるサーキュラーエコノミーと、その取り組みにおけるバイオプラスチックの寄与・役割について確認し、次回以降の説明につなげていきたいと思います。

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック

バイオプラスチックは、生分解性プラスチック(Biodegradable Plastic)とバイオマスプラスチック(Bio-based Plastics)の総称であることはご存じと思います。

生分解性プラスチックは、自然環境中で最終的に水と二酸化炭素に分解するため、従来のプラスチックと違って半永久的に自然界に残存することがなく、環境悪化が避けられる可能性がある点を特徴とします。そのためプラスチック廃棄物問題の解決策として早くから開発が進められてきました。現在、農業用マルチフィルムのように生分解性が製品の中心機能となる製品や、ストロー・飲料用コップ・綿棒などのように細小でリサイクルが本質的に難しい使い捨て製品への使用が期待されています。

Image

図1:農業用マルチフィルム。生分解性プラスチックの利用が進んでいる

一方、バイオマスプラスチックは、原料に化石資源ではなく再生可能資源であるバイオマスを活用することを特徴とするプラスチックです。化石資源の使用量を減らし、資源効率性を高め、サーキュラーエコノミーを推進する効果が期待されます。加えて、温暖化ガスの発生を抑えられるため、気候変動問題の解決に資するという点でも注目されています。

Image

図2:バイオマスプラスチックを使用したゴミ袋

バイオマスプラスチック導入は国の戦略でもあるが…

第2回「遅々ながら進む、世界のプラスチック戦略」で説明したG20大阪サミットでの「ブルーオーシャン戦略」発表に先立ち、日本政府は2019年5月、「プラスチック資源循環戦略」を発表しました。そこでは基本原則を、「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」と「再生可能(Renewable)な資源への代替」からなる「3R+Renewable」とし、マイルストーンに「2030年までに、再生材使用の倍増とバイオマスプラスチック約200万トンの導入」などを掲げています。このことからも、バイオプラスチックがサーキュラーエコノミーの取り組みにおいて注目されていることが分かります。

サーキュラーエコノミーに向けて求められるバイオプラスチックのこうした役割や意義については、世界的にも広く認識されています。とはいえ残念ながら、多くの環境問題と同様、経済的観点を考慮すると多くの課題があるのが現実です。もともと、経済的な合理性を徹底的に追求しながら改良技術と体制整備を進め、大規模に拡大してきた石油化学工業に対し、まだ規模が小さくプロセスも複雑なバイオプラスチックがコストで優位性を持つことは難しくあります。これは、サーキュラーエコノミーで大きく取り上げられている再生材の利用やリサイクルと同様です。

パラダイムシフトの中、日本の役割が求められている

しかしながら、現在の世界の動向は、「経済性を幾分は犠牲にしてでも体制の変革を進めて行くべきである」というパラダイムシフトを含む取り組みが提唱されているものと見られます。

その中で日本がどんな取り組みによって国内の体制を整備していくか。さらに、影響の大きい近隣アジア地域での取り組みにどれだけ貢献していくか。これらが問われているのです。

次回以降こうした課題を踏まえつつ、個別の関連事項について説明していきたいと思います。

次回のテーマは「プラスチックリサイクルとバイオプラスチック」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。