発想を変えた「新たなバイオプラ」への期待【バイオプラの現状と課題 第6回】

2024/02/29
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目次

Chematelsの連載「バイオプラの現状と課題」をお届けしています。第6回は、前回までと少し趣の違う「新たなバイオプラスチック」のコンセプトとその影響や今後の可能性について述べてみたいと思います。

サーマルリサイクルからの脱却を図りたいが…

プラスチックのリサイクルを推進し、新規の化石資源消費をいかに抑えるかが、世界的なサーキュラーエコノミーに向けた潮流の中で求められています。しかしながら、第4回「リサイクルもバイオプラも『主流』への道遠し」で述べたように、現状では、使用後のプラスチック製品のリサイクルは、その回収分別のコストを考えると、多くの場合に経済的ではなく、「リカバリー」とも呼ばれるサーマルリサイクル(熱回収)が主流となっています。

過大な回収分別のコスト負担を回避し、サーキュラーエコノミーのポイントとなる二次原材料としてのプラスチック廃棄物や、再生可能資源の利活用を進められないないものか。この課題に向けた取り組みが今回の話題であり、その製品が「新たなバイオプラスチック」と呼ぶものです。

廃食用油などをプラ原料となるナフサの一部に当てる

取り組みの始まりは、2019年ごろにさかのぼります。フィンランドのネステやサウジアラビアのサウジ基礎産業公社(SABIC:SAudi Basic Industries Corporation)といった石油大手が、廃食用油や、パルプ製造時の副生非可食バイオマス資源などを変性した後にナフサ分解炉に投入し、ポリエチレンやポリプロピレンの原料となるナフサの一部に当てがおうと試みました。両社はともに、バイオマス資源活用による化石資源の節約を主目的としていたのですが、この試みをバイオポリエチレンやバイオポリプロピレンのための化学変換(ケミカルリサイクル)と定義づけ、一定以上のバイオマス使用比率で製造するポリエチレンやポリプロピレンはバイオプラスチックであると主張しました。

この主張は当初から広く認められたわけではありませんが、取り組み自体は認識されていきました。ちょうど、サーキュラーエコノミーへの大きな潮流ができていく時期と重なったこともあり、リサイクル困難な二次原材料としてのプラスチック廃棄物をナフサの一部として投入することで石油化学品の基礎原料を多く得られれば、その投入比率に応じた分を二次原材料として認めようという主張が加わったのです。

プラスチック廃棄物をナフサ分解炉に投入し、ポリエチレンやポリプロピレンの原料として活用することは、見方を変えれば、分別回収の過大なコストを回避して、熱回収に加え、ケミカルリサイクルによるマテリアル回収にグレードアップすることと解釈できます。そのため、賛意が世界で広がっているのが最近の情勢です。

例えば、ネステの「Neste RE」は、スチームクラッキング用の化石原料の代替品で、再生可能かつリサイクルの材料のみで作られています。同社は廃食用油や有機残渣といった非可食バイオマス材料とプラスチック廃棄物を使って「Neste RE」を生産・販売しています。これを「バイオナフサ」とも呼んでいます。

マスバランス方式による「バイオマス割当プラ」が登場

こうした製品のための認証制度も、世界的に数多く設けられています。最も広く認められている認証制度は、国際持続可能性カーボン認証(ISCC:International Sustainability & Carbon Certification)による「マスバランス方式」での認証制度です。

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図1:マスバランス方式の仕組み

マスバランス方式とは、特性の異なる原料が混合される場合に、ある特性を持つ原料の投入量に応じて生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法を指します。すでに紙やパーム油をはじめとする多様な業界で適用されています。認証されたマスバランス方式でバイオマス原料やリサイクル原料が割り当てられた最終製品について、顧客は二次原材料に占めるこれらの原料の比率を公表することができます。

日本でも、多くの企業が認証を得ることを計画していると思われます。前述したネステの「Neste RE」を、三井化学の子会社のプライムポリマーが再生可能なポリプロピレンに加工し、「プラサス」として製品化しました。この「プラサス」を採用した日本生活協同組合連合会の味付のり包装材が、マスバランス方式によるバイオマス割当プラスチック使用で初のエコマーク認定商品となったのは典型的な事例です。

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図2:バイオマス割当プラスチックによるエコマーク認定
⁠(画像提供:日本生活協同組合連合会)

新たな製品の形として利用されていく可能性も

こうした取り組みが、今後どれだけ拡大していくかは、議論の分かれるところです。とはいえ、真正なバイオプラスチックが、従来の石化原料プラスチックより費用などの点で優位に立ちづらい状況の中、紹介したような代替的なバイオプラスチックが追加投資なしで済むドロップイン・ソリューション型の製品として利用されていく可能性はある程度あると思われます。

また、消費者が使った後のプラスチック製品のリサイクルを指す「ポストコンシューマー・プラスチックリサイクル」でも同様のことがいえそうです。分別回収のコスト負担を回避し、熱回収に比べて資源の有効活用につながることを明確に提示できれば、有効なプラスチック廃棄物管理の取り組みとして、重要度を上げる可能性は高いのではないでしょうか。今後の動向を注視していきたい事柄です。

次回は最終回。テーマは「世界動向と今後の見通し」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。