LNG―期待の電源ながら輸入は難局へ【高騰する化学品、その推移と要因 第2回】
2023/06/20
連載の目次
本連載で扱う項目
- 第1回 概要の説明
- 第2回 液化天然ガス(LNG)
- 第3回 パーム油
- 第4回 炭酸リチウム
- 第5回 エタノール
- 第6回 ソーダ灰
メタンの主成分である天然ガスをマイナス162℃に冷却し、体積を約600分の1にすることで輸送や保管を効率化したものが液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)です。Chematelsの連載「高騰する化学品、その推移と要因」。今回はLNGをめぐる価格高騰の状況とその要因を取り上げます。
日本は輸入頼り、オーストラリアからの比率が増加

図1:液化天然ガス(LNG)CIF価格の推移。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと
(出所:財務省貿易統計の統計品別表)
日本ではLNGのほぼ全量が輸入されています。用途としては95%以上が発電用に消費されています。
輸入元はオーストラリア、それにマレーシア・インドネシアなどのアジア諸国、また中東の3地域が主体です。当初は中東から主体の輸入に始まり、その後は輸送コストの有利なアジア諸国にシフトしました。近年はアジア諸国の国内需要の拡大に伴い、オーストラリアからの輸入比率が増加し、約40%となっています。

図2:液化天然ガス(LNG)の輸入元(2022年度)
(出所:財務省貿易統計を基に作成)
中国の輸入量拡大などが価格高騰に影響
LNGは発電電力量あたりの二酸化炭素(CO2)排出量が石炭の約60%、また石油の約80%と比較的少なくなっています。硫黄酸化物(SOX)、窒素酸化物(NOX)の排出量も少ないといえます。そのため、東日本大震災以来の原子力発電所の稼働停止による発電量減少をカバーする形で、LNGの電源構成比が全体の約40%と増加しています。
将来的に、再生可能エネルギーの大幅な増加により2050年にカーボンニュートラルを目指す国の長期計画の中であっても、化石燃料のLNGは主要な地位を維持・継続していくと考えられています。
そうした中、LNGの価格は2021年から、スポット価格を中心に大幅な値上がりが続いていました。背景に、急激な石炭火力の削減計画を開始した中国のLNG輸入量の大幅拡大に加え、アジア諸国における継続的な国内LNG需要増の情勢があります。
加えて2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まりました。かつてロシアと欧州はガスパイプラインを通じてかなり安定したLNG供給関係を築いていました。ロシアのウクライナ侵攻で状況は一転し、その影響はロシア・欧州間だけではなく世界全体に及んでいます。市場環境を大きく変化させました。
輸入価格、2年間で2.7倍に
日本のLNG輸入では長期契約の比率が多くを占めてきました。しかしながら、アジア諸国の国内需要の急速な増加や、日本の2021年末でのカタールからの500万トンの長期契約終了などもあり、スポット価格品の比率が上がっています。市況による影響を大きく受けるようになりました。
輸入通関による日本の平均LNG輸入価格を見ても、2020年に1トンあたり4万3840円だったのが、2021年に5万7600円となり、2022年には11万7550円と大幅に上昇しています。しかもこれは、2022年に急激な輸入量拡大が見込まれていた中国が、ゼロコロナ政策による経済成長の鈍化で輸入量を大幅減少させた中での結果です。価格を押し下げる要因がありながら、価格上昇となりました。
中国の輸入増で日本の立場に変化
LNGは火力発電用燃料の中でCO2排出量が最も少なく、地球温暖化防止の観点からも、日本における重要なエネルギー資源となり続けるでしょう。アジア地域での今後の需要増により、価格上昇傾向が続くと予想される中、今後の価格動向がさらに注目されるところです。
特に、中国が環境政策変更の必要性から、電力構成比で60%を占めていた石炭火力をLNGに切り替える動きに出たことは注目ポイントです。資源エネルギー庁が2021年10月に公表した「燃料及び電力を取り巻く最近の動向について」では、中国のLNG輸入量は、2019年の約6100万トンから2030年には約1億4000万トンまで増加すると予測されています。
日本は「世界一のLNG輸入消費国」という立場でしたが、状況は急激に変わってきました。いままで以上に中長期を見据えた取り組みが重要となってくるものと思われます。
第3回のテーマは「パーム油」の予定です。Chematelsは化学関連93品目の市況情報をお伝えてしています。合わせてご覧ください。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
