地球46億年史には「全球凍結」時代も【脱炭素社会への「本質」理解 第6回】

2022/12/01
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連載の目次

Chematelsの連載「脱炭素社会への『本質』理解」も終盤となってきました。今回の第6回と最終回の第7回では、地球の歴史から気候変動を捉えてみます。定説とされる学説を基に俯瞰的に説明します。

海が大気の二酸化炭素減少と生命誕生をもたらした

地球が誕生した約46億年前の大気は、軽い成分である水素が8割、ヘリウムが2割という組成だった可能性があります。しかし、これらのガスは軽く、また地球の重力が小さいため、宇宙空間に逃げてしまいます。

次に、揮発分がマグマから放出され、比較的重い水蒸気や二酸化炭素などが大気を形成し、地上数百キロの位置に、厚い雲を形成しました。原始大気は二酸化炭素を多く含み、激烈な「温室効果」を起こし、地表面の温度は400℃の高温となりました。生命どころか、水すら存在しない世界です。

しかし、38億年前ごろ、隕石の衝突も減り、地球は徐々に冷え始めていきます。すると水蒸気は下がって行き、大気温が300℃(約100気圧)を下回ると雨となって海を誕生させました。同時にマグマも雨で冷却固化し、岩石からなる陸が形成されました。さらに二酸化炭素は海に溶け込み、大気中の二酸化炭素は減少を始めたのです。

こうして地球は、海の形成によって、二酸化炭素を減少させるメカニズムを獲得しました。そして約36億年前、強酸の海の中で最初の「生命」が誕生しています。

酸素を生成する生物が誕生し、大気中に酸素が増加

前述のように水蒸気によってつくられた海に二酸化炭素が溶けてしまうと、地上では窒素が残りました。およそ27億年前、太陽の光エネルギーを利用して光合成を行うラン藻(シアノバクテリア)が海中に誕生し、二酸化炭素と水から有機物と酸素が生成されるようになると、大気中の二酸化炭素はさらに減少し、酸素が増えはじめました。

当時、地球の磁場はまだ安定していませんでした。地球の磁場が安定したのは、いまから約25億年前です。安定すると、紫外線やX線の元となる高エネルギーをもった太陽風などの粒子は南極や北極に迂回するようになり、これにより低緯度地域の放射線レベルは低下し、生物は浅海へと上がってきました。その結果、太陽光を利用する光合成生物が誕生したのです。

そして、生物が進化して陸上に進出し、多様な植物による光合成が活発に行われることで、酸素はさらに増え、濃度は25~20億年前に現在の100分の1にまでなりました。約6.5億年前には酸素濃度はほぼ現在に近いレベルとなり、多細胞動物が出現しました。

過去に少なくとも3回「全球凍結」を経験

地球は過去に少なくとも3回、つまり約24~22億年前、約7億年前、約6.5億年前に全体が氷に覆われる「全球凍結」の時期を経ました。全球凍結の原因は、温室効果ガスの急激な減少や消失によるものです。第2回「環境科学の視点で懐疑論の主張をただす」でも伝えたとおり、太陽からの距離だけを考慮すると地球の平均気温は-18℃です。温室効果ガスが減少または消失すると、地球の温度はこの-18℃に向かって下がっていくことになります。

地球では約27億年前、大規模な火山活動があり、海の中から大陸が急激に成長し、大量に供給された金属イオンによって二酸化炭素が炭酸塩鉱物として固定されるようになりました。これにより、大気中の濃度が大幅に低下したのです。

さらに約24~22億年前には、前述のラン藻(シアノバクテリア)が光合成を行い、これにより生じる酸素が、当時の大気の主成分であるメタンと反応し、メタンは消失していきました。メタンは二酸化炭素と同じく温室効果ガスであるため、このメタンの消失によって地表は寒冷化していき、氷床が発達することになります。第3回「地球丸ごとの理解で導ける温暖化の現状」で述べたように、氷床の白い氷は太陽から届く光の大部分を反射するため、地球はいっそう寒冷化し、さらに氷床が発達していきました。こうして地球は暴走的に寒冷化し、全球凍結状態に陥ったのです。

約7億年前、そして約6.5億年前にも、生き延びた生物による大量の酸素放出とそれによる酸素増加で岩石の金属イオンと二酸化炭素の固定化が促進されました。それが、これらの時代の全球凍結の原因とされています。

生物の進化については、24~22億年前の全球凍結のあとに真核生物が出現し、6.5億年前の全球凍結のあとに多細胞動物が出現しました。

地球史を通しての温度変化と二酸化炭素濃度ならびに酸素濃度の変化を図で示します。

氷河期・間氷期サイクルからすると現在は氷河期突入に向かう時期

全球凍結が終わった理由は、温室効果が強まったからだといわれています。二酸化炭素は全球凍結中も火山活動によって供給される一方で、岩石の化学風化による炭素消費は氷床の存在に阻まれて進まず、これにより二酸化炭素が大気中にたまっていったのです。

数百万年前には地球は氷河期に突入して、10万年前後続く氷河期と、その間に1万年程度続く間氷期を数十回も繰り返してきました。図1のように、地球全体の気温と二酸化炭素ならびに酸素の濃度はめまぐるしく変動しています。

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図1:気温・二酸化炭素濃度・酸素濃度の変化。気温は氷床に含まれる酸素同位体の存在比と生物化石の考古学的年代から照合して推定しているもので、全球凍結の時期の寒冷さについては必ずしも反映されてはいない
⁠(出所:横山祐典著『地球46億年気候大変動』を参考に編集部作成)

1万年前には氷河期も終わり、安定で温暖な気候が始まります。6000年前の気温は現在より2℃も高く、農業や牧畜が始まり、人類は初めて豊かな食料と共に生活できるようになりました。

現在は、すでに最近の間氷期としては1万年を超えたので、氷河期と間氷期のサイクルからすれば、氷河期に突入するところと考えられます。

次回は、第7回「人類誕生前『異質』の温暖化が起きていた」の予定です。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。