気候変動の要因は「疑う余地なし」の温暖化【脱炭素社会への「本質」理解 第1回】
2022/11/02
地球規模の「気候変動」の影響は資源問題、食糧問題、生態系の変化、エネルギー問題など、自然界にも人間社会にもわたり多岐に及びます。Chematelsの新連載「脱炭素社会への『本質』理解」では、気候変動の問題の本質に迫っていきたいと思います。基礎的な環境科学を用いながら、温室効果ガスの代表例にもなっている二酸化炭素を主な環境物質として取りあげ、以下の6つのテーマで解説と考察を重ねていきます。
連載の目次
- 第1回 気候変動の要因は「疑う余地なし」の温暖化
- 第2回 環境科学を用いて懐疑論の主張をただす
- 第3回 地球丸ごとの理解で導ける温暖化の現状
- 第4回 2050年へ、カーボンニュートラル待ったなし
- 第5回 CO2原料化にヒートポンプ効率化、企業の対策
- 第6回 地球46億年史には「全球凍結」時代も
- 第7回 人類誕生前「異質」の温暖化が起きていた
(タイトルは変更となる場合があります)
今回の第1回と次回の第2回では気候変動問題のうち「地球温暖化問題」に絞ります。主流の公的な対策推進派と、非主流で民間の懐疑派の双方の論点を、環境科学の視点で整理していきます。
気候変動問題の主題は「温暖化」にあり
2000~19年の20年間、世界各地で観測された自然災害の件数は、それ以前の20年間の1.7倍以上に増加しました。洪水や集中豪雨、干ばつ、熱波、強い台風などの「異常気象」の背景に「温暖化」があります。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)*1が2022年に総括報告した「第6次評価報告書」によると、世界の平均気温は産業革命以前と比べて、この2011~2020年で1.09℃上昇しました。人間活動の影響で地球が温暖化していることについて、IPCCは同報告書で「疑う余地がない」と結論付けました。
この「疑う余地がない」という表現は、過去の報告書で以下のように報告されていた流れの先にあるものです。
- 2001年の第3次報告書:「人間活動が主な原因である可能性が高い」(66%以上)
- 2007年の第4次報告書:「可能性が非常に高い」(90%以上)
- 2014年の第5次報告書:「可能性が極めて高い」(95%以上)
温室効果ガスで熱の放出と吸収のバランスが崩れ温暖化に
地球は太陽からの熱によって温められます。その熱は地球から宇宙へ放出されますが、熱を逃げ過ぎないように一部吸収しているのが二酸化炭素などの温室効果ガス*2です。工業化以前の地球では、こうした熱の放出と吸収のバランスによって気温はある程度、保たれてきました。
しかし、産業革命以降、人類は石炭や石油などの化石燃料を大量に用いるようになると、大気へ放出される二酸化炭素の量が急速に増加し、宇宙へ逃げる熱が放出されず、地表にたまりつづけ、気温が上昇していきました。これが、温暖化です。
IPCCは「第6次報告書」で、今後、温室効果ガスの濃度が上がりつづけると、共有社会経済経路(SSP)*3の最大排出量シナリオ(SSP5-8.5)では今世紀末までに3.3~5.7℃の気温上昇が起きると予測しています。

図1:地球温暖化の観測と予測。1950年から2100年まで
(出所:IPCC第6次評価報告書/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より)
温暖化の影響の他の例は、海面上昇です。海水の水温上昇による熱膨張と氷河などの融解によって2100年までに最大82cm上昇するとIPCCは予測しています。
温暖化の対策を考える上で、影響する温室効果ガスの性質を把握する必要があります。そのために使われるのが、地球温暖化係数(GWP)*4です。そのガスが二酸化炭素の何倍の温室効果があるのかを表しています。例えば、メタンの地球温暖化係数は25なので二酸化炭素の25倍です。2020年日本のデータでは温室効果ガス総排出量に占める二酸化炭素の割合が90.8%であるのに対し、メタンは2.5%ですが、メタンのGWPは大きいため軽視できません。
温暖化の危機論に対し、懐疑論も
以上のような温暖化の危機論に対し、いわゆる懐疑論を発信している有力な団体に英国の民間のシンクタンク「地球温暖化政策財団」(GWPF:Global Warming Policy Foundation)があります。彼らの主張はほとんど無視されていますが、危機論をうのみにしないためにも、環境科学的視点から懐疑論について次回説明します。
次回は、第2回「環境科学の視点で懐疑論の主張をただす」の予定です。
【注釈】
*1:国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
略称のIPCCはIntergovernmental Panel on Climate Changeの頭文字をとったもの。世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)および国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)により1988年に設立された政府間組織。2021年8月現在、日本を含む195の国と地域が参加しています。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎知識を与えることを目的に、最新の研究成果をまとめて、数年ごとに報告書として発表しています。
*2:温室効果ガス
二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロン類などの、大気中の熱を吸収する性質を持つガスです。温室効果ガスが増加すると、地球温暖化につながります。
*3:共通社会経済経路(SSP)
略称のSSPはShared Socioeconomic Pathwaysの頭文字をとったもの。気候変動の予測において、さまざまな可能性・条件を考えに入れた上で、将来の社会経済の発展の傾向を仮定したシナリオをいいます。SSPシナリオには5 種類、つまり1:持続可能、2:中道、3:地域対立、4:格差、5:化石燃料依存が主に使用されています。SSPと、地球に出入りするエネルギーが地球の気候に対して持つ放射の大きさを示す放射強制力(単位はW/m2)を組み合わせたシナリオは「SSPx-y」と表記され、xには5 種のSSPが、またy には2100 年ごろのおおよその放射強制力が入ります。
*4:地球温暖化係数(GWP)
略称のGWPはGlobal Warming Potentialの頭文字をとったもの。そのガスが二酸化炭素の何倍の温室効果があるのかを表している。
鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net
1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。
