環境科学の視点で懐疑論の主張をただす【脱炭素社会への「本質」理解 第2回】

2022/11/10
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連載の目次

  • 第1回 気候変動の要因は「疑う余地なし」の温暖化
  • 第2回 環境科学の視点で懐疑論の主張をただす
  • 第3回 地球丸ごとの理解で導ける温暖化の現状
  • 第4回 2050年へ、カーボンニュートラル待ったなし
  • 第5回 CO2原料化にヒートポンプ効率化、企業の対策
  • 第6回 地球46億年史には「全球凍結」時代も
  • 第7回 人類誕生前「異質」の温暖化が起きていた

(タイトルは変更となる場合があります)

いわゆる気候変動懐疑論には、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)などの肯定派に対し、「特定の価値判断に基づく政策論として環境対策に名を借りた利益誘導集団だ」と政治的に非難をする面と、「気候モデルの信頼性と有効性は疑問。複雑な非線形の気候システムの予測は本来不可能。自然由来か人為的なものか基本的に同定できない」のように科学的に不信感を持つ面とがあります。

このChematels連載「脱炭素社会への『本質』理解」の第1回では、人間活動の影響による地球温暖化についてIPCCの「疑いの余地がない」とする主張とその根拠を見ました。この第2回では、一方の気候変動懐疑論をもとに、皆さんもおそらく感じるであろう基本的な疑問点に対し、環境科学の視点で検証・考察していくことにします。

温室効果ガスの濃度推移から、温度上昇の計算は適切といえる

「温室効果ガスがないと地球は極端な低温になるといいます。温室効果ガスは地球にとっては悪者ではなく、必要なものではないでしょうか?」

必要なのはその通りです。太陽からの放射熱量が地球に届いた場合、地球を黒体と見なすと、地表温度は「シュテファン-ボルツマンの式」で記述できます。

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この式は温室効果ガスの影響をゼロとしたものです。これを解くとT=255K°すなわち、-18℃となります。

温室効果ガスの影響を考えた数式は、煩雑なので省略しますが、そもそも産業革命以前の自然状態でも二酸化炭素は存在し、約280ppmと推定され、その効果で地球を寒冷化から防護していました。

2020年のデータでは二酸化炭素の濃度は約410ppmであり、また気温は1.09℃上昇しています。エクセルを使った簡単な計算でも1~2℃上昇することがわかります。

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図1:地球全体の二酸化炭素濃度の経年変化
⁠(出所:出所:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

ちなみに大気が全て二酸化炭素になった場合、この計算で最大8℃増加することになります。これは、地球の歴史における気温の変動範囲はせいぜい±10℃といいますので妥当です。

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図2:世界平均気温の変化。1850~2020年の観測値
⁠(出所:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

実は、これらの気温データは、世界の平均気温、つまり1991~2020年の30年間の陸域における地表付近の気温と海面水温の平均値からの偏差値です。気温に海面水温が含まれていることに注意してください。

一方、二酸化炭素の濃度は地上約2kmの高度における測定値であり、圧力は大気圧の約70%と低圧です。地上濃度ではないことに留意してください。

人間活動に起因する「5%」で地球の気温は上昇した

「大気中の二酸化濃度の濃度は極めて少なく、そのうちのたった5%が人間の活動に起因するとのことです。本当に温暖化に対して強い影響があるのでしょうか?」

二酸化炭素は温室効果ガスの一つであり、排出量という点では最も多いガスです(「第1回 気候変動の要因は『疑う余地なし』の温暖化」参照)。

大気の組成は、窒素75.3%、酸素23.1%、水蒸気約0.25%、二酸化炭素0.046%、メタン7.3×10-5%、一酸化二窒素7.6×10-5%、オゾン約3×10-6%などであり、二酸化炭素は水蒸気を除けば最も高い成分です。

大気の放射ゾーンは約1.8~2kmの高度を境に下層と上層に二分され、水蒸気量も二分されますが、大気全体では約70%が上層に存在します。大気中の水蒸気により長波長放射線の大部分が吸収されますが、上層部には水蒸気は少なく、かつ、二酸化炭素などは水蒸気が透過しやすい7~20μmの波長帯で、吸収帯が地球放射の波長帯に近い15μmであり、高い吸収率となり、温室効果が発揮されます。なお二酸化炭素は空気より重いのですが、拡散して存在するのです。

次に、人為的な影響については、まず代表的な化石燃料として石油を考えてみます。

近似的な化学組成はCH1.5 です。燃焼反応式は、次のようになります。

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ここから世界の石油消費量エネルギー換算(J)、石油に含まれる熱量(4.3×1010J/t)、石油中のCH1.5比率(約98%)から、世界のCH1.5量がわかります(石油ベース)。

次に二酸化炭素の量は先の式のyから求まります。2020年ベースで2.40×1014molとなります。

最近の化石燃料、つまり石油・石炭・天然ガスの比率から、石油を30%として8.00×1014molとします。一方、2020年の平均二酸化炭素濃度410ppmから、空気モル数として1.8×1020mol、また大気中への二酸化炭素拡散率として放射吸収率が水蒸気の1/4を用います。

したがって大気中の二酸化炭素量は410ppm×(1.8×1020)×(1/4)=184.5×1014mol。よって化石燃料に起因する二酸化炭素の比率は8.00×1014mo/184.5×1014mol=0.043となります。

約4.3%であり、質問に5%に近いといえます。このたった4~5%によって2020年までに、地球気温が上昇したことは間違いありません。

自然の変化を超えるくらいの変化を人間は起こしている

「気候変動や温暖化の原因として、地球を温める唯一のエネルギー源が太陽ですよね。地球が長期的に温かかったり冷たかったりする原因は、太陽以外にないのでは?」

確かに太陽は地球環境を支配している最大要因です。また、地球の歴史には工業化以前に寒冷期や温暖期があり、太陽の黒点の活動により説明されています。

しかし一方でIPCC は、1950年以降に地球上で観測された温暖化パターンは、太陽だけが引き起こすとする温暖化パターン、つまり「下層大気(対流圏)と上層大気(成層圏)の両方の温度は増加する」というパターンとは一致しないといいます。

IPCCはむしろ、観測結果は温室効果ガスの影響が考慮されるパターン、つまり「地表面と対流圏は温暖化し、成層圏は冷えた」というパターンに近いとして、温室効果ガスを重視しています。太陽活動への関心は薄いようです。

気候学者も、「氷河期が来て寒冷化するので、温暖化は心配ない」との意見に対しては否定的な見解を持っています。前述のとおり産業革命前の二酸化炭素濃度は約280ppm、また氷河期のときは約180ppmで差は約100ppmであるのに対し、産業革命前から現在までという短期間における二酸化炭素濃度は280ppmから約410ppmでその差は約130ppmと急激に増えているからです。自然の変化を超えるくらいの変化を人間は起こしているとして温暖化の警告を補強しています。

ただし、太陽の影響を軽視するような姿勢は疑問です。温暖化対策に貢献する科学の発展のためにも、太陽活動の変動要因を「気候モデル」へ取り込んでいくことが期待されます。

次回は、第3回「地球丸ごとの理解で導ける温暖化の現状」の予定です。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。