これからの調達【坂口孝則が『調達で困った』を解決! 第7回】
2021/12/07
連載の目次
これからの調達・購買で不可避な2大トピックスは、SGDsにも関連する脱炭素と人権対応です。
かつて、「自社の生産プロセスを他社に切り出せば温室効果ガス排出量は他社カウントになるのか」という議論がありました。しかし、いまでは上流工程で他社に依存している分も、自社分として扱わねばなりません。これがScopeの考え方です。図にあるとおり、Scope1と2だけではなく、3では他社の排出も測定します。ここに調達・購買部門が関与せねばなりません。

現状では、中小零細のサプライヤが自社の温室効果ガス排出量を算出するのは難しいため、調達金額から排出量を算定する方法が取られます。ただし、これはあくまで日本の平均値なので、サプライヤの実態を表してはいません。
つまり、あるタイミングからサプライヤに排出量を測定してもらい、そこから具体的な削減目標を合意する必要があります。現在考えられる施策には、工場での自然エネルギーの活用、生産効率の向上、CO2吸収技術の採用などがあります。そこで、自社主導で行うか、サプライヤ主導で行うか、そもそも協業できるサプライヤなのかを分類し、自社のScope3として削減達成できるかを試算する必要があるでしょう。
次に、人権対応です。現在、海外のサプライヤであっても人権を蹂躙していいと信じる日本企業はありません。しかし、意図せずとも間接的であれ、人権蹂躙地域から調達していないか確認する必要があります。有名なところでは、米国の税関などでは調達禁止地域のリストが載っていますので一読しておきましょう。
さらにやっかいなのは、もし人権蹂躙地域から調達していなかったとしても、当局から証明を求められるケースがある点です。たとえば米国税関は、疑いがある商品の輸入については「商品の全部または一部が強制労働で製造されていないことを証明」せよとしています。これはいわゆる悪魔の証明といわれるもので、「安全な地域で生産しました」と証明ではなく「人権蹂躙地域で生産していない」と証明する必要があります。
さらに国際労働機関(ILO)等では該当地域ではあるものの人権蹂躙が行われていない企業から調達する際には、かなり高いハードルの証明を求めています(図を参照)。

これまで調達の問題は、あくまで調達の問題でした。しかし、ついに調達の問題は企業の全社的な問題に格上げされました。これからは、サプライチェーン隅々までのプレイヤー(サプライヤ)を調べる必要があります。そして、その過程の全体を透明化し、さらに労働状況をチェックしなければなりません。もちろん業界ごとの代理調査や調査の仕組みは協議されるでしょう。しかし、それであってもサプライチェーンの全体に責任をもたねばなりません。
サプライヤの非倫理行為は、自社の非難にもつながります。良くも悪くも、私たちは温室効果ガスであれ人権であれ、サプライチェーンのクリーン化の時代に生きています。
坂口 孝則(さかぐちたかのり)
未来調達研究所株式会社 取締役 大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』(徳間書店刊)など20冊を超える。
未来調達研究所株式会社 https://www.future-procurement.com/
