1社購買?複数購買? 結局どっちがいいの?【坂口孝則が『調達で困った』を解決! 第4回】
2021/11/09
連載の目次
- 第1回:安いと思った海外調達でなぜコストがかさむのか
- 第2回:東日本大震災から何を学んだか?
- 第3回:メーカーからの直接調達か、商社からの間接調達か、それが問題だ
- 第4回:1社購買?複数購買? 結局どっちがいいの?
- 第5回:VA/VEとは?
- 第6回:ただ買うだけではない、調達部門がやるべき仕事
- 第7回:これからの調達
災害が起きるたびに、メディアから質問を受けます。「サプライチェーンの複数社購買は進んでいるのでしょうか」。答えは「進んでいますが、進んでいません」。「1社購買と複数社購買のどちらがいいのでしょうか」という質問もよく受けます。「状況次第です」としか答えようがありません。
まず、文字通りの定義によれば、1社購買とは、調達品を特定サプライチェーンから購買すること。複数社購買とは、調達品を複数サプライヤから購買することです。しかし、ややこしいのですが、複数社購買といっても、たとえば自動車メーカーで調達する部品があるとして複数のサプライヤから購買している例はほとんどありません。あっても例外的なものです。
複数社購買とは、あくまで「その調達カテゴリ内」で、いくつかのサプライヤから調達しているという話であって、「特定の一つの調達品」を複数社から購買しているわけではないのです。世間の思い込みの通り複数社購買をしているものは、重油、軽油、ガソリン、鉄鋼、ステンレス、セメントなどにとどまります。

各社の努力でカテゴリ内の候補サプライヤ数は増やしています。しかし、各企業が喧伝するような図の「同一製品の2社並列発注」「発注分散」はできていません。これが冒頭の「進んでいますが、進んでいません」につながります。
企業によっては10万程度の調達品があるかもしれません。それをすべて複数社にすれば20万ですから、そのぶん、二重の管理費、二重の品質検査費、二重の監査費、二重の金型費・検具がかかります。だから現実的ではありません。
そこで次の話題に移ります。そもそも複数社購買が絶対的に優れているのでしょうか。コストを考えると現実的ではないと説明しました。加えて、私が各震災後に実施したアンケートでも「1社購買の調達品のほうが復旧は早かった」と答えるものが多々ありました。というのも、複数社購買の場合、「御社は違うサプライヤからも調達しているから、そちらから優先供給してもらってください」と言われたという回答がありました。一方で、1社購買の場合は、一蓮托生で復旧にあたった、といいます。もちろんこれは日本の特殊な状況かもしれません。その意味でも「状況次第です」としか答えようがありません。
また1社購買、複数社購買の議論を超えて、供給が止まってしまったときいかに復旧するか、事後対応の策を検討するべきでしょう。もしかしたらそれは事前に在庫を増やしておくことかもしれません。あるいは緊急時の供給契約を締結することかもしれません。1社購買、複数社購買かの検討だけでは、もはや施策としては不足しています。
坂口 孝則(さかぐちたかのり)
未来調達研究所株式会社 取締役 大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』(徳間書店刊)など20冊を超える。
未来調達研究所株式会社 https://www.future-procurement.com/
