東日本大震災から何を学んだか?【坂口孝則が『調達で困った』を解決! 第2回】

2021/10/26
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連載の目次

  • 第1回:安いと思った海外調達でなぜコストがかさむのか
  • 第2回:東日本大震災から何を学んだか?
  • 第3回:メーカーからの直接調達か、商社からの間接調達か、それが問題だ
  • 第4回:1社購買?複数購買? 結局どっちがいいの?
  • 第5回:VA/VEとは?
  • 第6回:ただ買うだけではない、調達部門がやるべき仕事
  • 第7回:これからの調達

今回から新連載「坂口孝則が『調達で困った』を解決!」が始まります。調達コンサルタントである坂口孝則さん(未来調達研究所株式会社)が、調達部門の課題や最新の話題を届けます。第2回のテーマは、サプライヤの構造です。

分散管理のはずが1社集中だった

各企業の調達・購買部門は、東日本大震災の発生によって自省を迫られました。それまでリスクマネジメントは及第点と思っていたところ、ほとんど調達できなくなったのです。その衝撃は大変なものでした。

なぜならば、調達・購買部門はサプライヤを管理していたつもりでいたものの、原材料など元を辿ると同一企業だったのです。つまり、取引をしている企業は多様化していると思っていたものの、その先、その先の企業は被災してしまえば調達できない、という、考えてみれば当然の事態に帰着しました。

これをダイヤモンド構造と呼びます。部材供給の第2、第3階層で特定1社などに集約されるものです。

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逆に、裾野の広いサプライチェーンをピラミッド構造といいます。

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震災の反省は次の二つにまとめられます。

サプライヤ管理ができていなかった:源流管理ができていなかった。Tier1(一次取引先)のみを管理し、あとはTier1に任せざるをえなかった。サプライチェーン構造全体を把握していなかった。

リスクマネジメントを想定していなかった:大規模な災害は想定していたものの、対策を講じなかった。調達品/サプライヤを分類管理していなかった。マルチソース化(複数社購買化)していなかった。

ダイヤモンド構造をご紹介しましたが、とくに調達・購買部門にとって、見かけの分散管理になっていた事実は業務の見直しを突きつけました。さらに震災以前は、「特定材料や特定部材については企業全体で共通化したほうがよい」という考えが一般的で、海外にも多大な影響を及ぼす事態となったのです。特定の材料や部材は共通化しても、その生産地だけは分散化しておくべきでした。

その後も、熊本地震をはじめとする災害が日本を襲いました。まだサプライチェーンの脆弱性に批判は多いものの、東日本大震災を経験したため、だいぶ源流管理は進みました。Tier1だけではなく、それ以降のサプライヤマップも作成されています。

リスクマネジメントとクライシスマネジメント

ただし、問題点はいくつかあります。グローバルに取引が広がる中、海外サプライヤの情報をいかに収集するかが鍵になっている点。次に、リスクマネジメントの限界が明らかになった点です。後者は深刻です。一般的にリスクマネジメントでは被害の強度を試算し、被害が甚大なものから対策を検討する流れになります。しかし、数多くの災害で明らかになったのは、たとえ、どんな小さな部品や材料であっても品切れになれば全体の生産が止まるのです。

そこで、リスクマネジメントが被害の発生を防ぐのに対して、被害発生後の対策であるクライシスマネジメントという考え方が注目されています。さきほどの例で言えば、被害発生後いかに部品や材料の代替を進めたり、仕様変更を促したりするかという事後処理の加速です。

災害はもちろん悲しむべきことですが、それらによってサプライチェーンは進化し続ける運命にあります。

坂口 孝則(さかぐちたかのり)

未来調達研究所株式会社 取締役 大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』(徳間書店刊)など20冊を超える。

未来調達研究所株式会社 https://www.future-procurement.com/