安いと思った海外調達でなぜコストがかさむのか【坂口孝則が『調達で困った』を解決! 第1回】

2021/10/19

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連載の目次

  • 第1回:安いと思った海外調達でなぜコストがかさむのか
  • 第2回:東日本大震災から何を学んだか?
  • 第3回:メーカーからの直接調達か、商社からの間接調達か、それが問題だ
  • 第4回:1社購買?複数購買? 結局どっちがいいの?
  • 第5回:VA/VEとは?
  • 第6回:ただ買うだけではない、調達部門がやるべき仕事
  • 第7回:これからの調達

今回から新連載「坂口孝則が『調達で困った』を解決!」が始まります。調達コンサルタントである坂口孝則さん(未来調達研究所株式会社)が、調達部門の課題や最新の話題を届けます。第1回のテーマは、海外調達です。

海外調達のトラブルあるある

製造業はコストの低減が肝要です。また日本企業はコストの多くを取引先からの調達に依存しています。だから調達が重要です。かねてから、より安価な取引先を求めて海外調達が推進されました。

しかし、海外調達に慣れていないと大きな壁にぶつかります。その結果、思っていたよりもコストが膨れ上がったというトラブルは珍しくありません。トラブルの原因には、主に以下の5つがあります。

  1. 最低ロットの未確認
    ⁠→最低ロットはMOQ(Minimum Order Quantity)とも呼びます。自分たちは10個とか100個くらいの発注を予定していたのに、1000個、1万個といったロットを要求されるケースがあります。⁠
  2. 物流費・輸入諸経費・関税等の未考慮
    ⁠→海外サプライヤの工場出し価格をex-works(EXW)といいます。EXWと日本サプライヤの価格を比較して、安いと勘違いするケースがあります。現実には、EXWに輸出国の物流費、海上輸送、関税や日本国内輸送などを含めて費用を計算する必要があります。⁠
  3. 仕様明確化に伴う価格アップ
    ⁠→海外サプライヤを採用決定したあとに、設計変更が重なるたびに見積書が上昇していきます。仕様が明確化しただけなのに、海外サプライヤが便乗して値上げする場合があります。当初の見積書には何が含まれているか確認せねばなりません。⁠
  4. サプライヤの倒産
    ⁠→日本では約350万社の企業のうち、一年で8000社ほどが倒産し、5万社ほどが廃業します。海外では儲からないとわかったらすぐに廃業か転業を決めます。海外サプライヤから調達を決めたすぐあとに、倒産などで供給してもらえないケースがあります。⁠
  5. 切り替えコストの評価未実施
    ⁠→海外サプライヤからの調達を決定したのはいいものの、既存の日本サプライヤと海外サプライヤの価格を比較することしかしていないケースがあります。すると、表面上は安価かもしれませんが、切り替えのコストを計算していない場合があります。試験や品質監査など、新規のサプライヤを参入させるには莫大なコストがかかります。
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なお、やや極論ですが、海外調達を進める際に、前述の通り自社の自覚とともに、サプライヤの対応も観察しておきましょう。まず初回訪問で工場長が出てこなければ、みなさんの会社との取引に興味がないと思っていいでしょう。さらに、「安くしてくれ」とか「中長期的に儲けてくれ」とかを海外サプライヤに申し入れた際には、発注数などの条件が変わっていなければ、かならずどこかで手抜きされると思ってください。不良品も出やすくなるかもしれません。それは世界の常識です。

海外調達は面倒です。その手間やリスクを引き受けるつもりがなければ、国内調達だけで済ませておくことをお勧めします。

坂口 孝則(さかぐちたかのり)

未来調達研究所株式会社 取締役 大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』(徳間書店刊)など20冊を超える。

未来調達研究所株式会社 https://www.future-procurement.com/