ただ買うだけではない、調達部門がやるべき仕事【坂口孝則が『調達で困った』を解決! 第6回】
2021/11/30
連載の目次
- 第1回:安いと思った海外調達でなぜコストがかさむのか
- 第2回:東日本大震災から何を学んだか?
- 第3回:メーカーからの直接調達か、商社からの間接調達か、それが問題だ
- 第4回:1社購買?複数購買? 結局どっちがいいの?
- 第5回:VA/VEとは?
- 第6回:ただ買うだけではない、調達部門がやるべき仕事
- 第7回:これからの調達
私が調達部門に配属された際、同期から「いいね。ただ買ってくるだけの仕事は」と冷笑とともに半ば羨望の眼差しを受けました。しかし、調達の仕事は、伝票を右から左に流せば終わりではありません。実際には、QCD(Quality/品質・Cost/価格・Delivery/納期)の確保からはじまり、サプライヤの倒産防止、サプライヤとの関係性の維持、サプライヤとSDGs等への対応など業務は多岐にわたります。
同時に、調達・購買部門は奇妙な性質をもっています。調達・購買部門の成果は、すべてサプライヤの行動に依存することです。部門単独では、まったく何もできません。そこで論理的に施策が導かれます。QCDその他の確保のためには、まず優れたサプライヤを選ぶこと、評価すること、サプライヤを区分し扱い方を変えつつ、全体をレベルアップすることです。
しかし、驚くことに、少なからぬ企業はサプライヤ評価を実施していません。「そのサプライヤからしか調達できないので、評価しても意味がない」と言います。それならば、そのサプライヤが倒産したら自社もつられて倒産するのでしょうか。「そうではない」と。つまり本気ではないだけです。本当に独占的なサプライヤであっても、評価することで改善してほしいポイントがわかります。
まず、QCDに加えて、D(Development/技術・開発力)・M(Management/決算状況、CSR対応、システム対応等)を総合的に俯瞰できる評価表を作成しましょう。市販の評価表もありますが、要するに自社がサプライヤに何を求めるかを集約することです。どんな評価項目であってもかまいません。重要なのは、全社で評価表を作って採点することと、評価に応じ発注量を変化させることです。

評価の結果、図のようにABCDランクにわけると、戦略的なパートナーサプライヤがわかります。A, Bサプライヤは関係性向上を目指します。定期的に戦略をすり合わせたり、設備導入の計画を話し合ったりして、Q•C•D等の向上に努めます。
いっぽうでCサプライヤにはQCDの最低ランクを提示し、それをクリアいただくよう申し入れます。改善が見られないと、取引の拡大はないと目標値を提示するわけです。
Dサプライヤは、多くのケースで経営が不調でしょう。代替サプライヤを選定するのと同時に、決算書を分析したり各種のレポート読んだりして倒産の傾向がないかもチェックするのが、調達・購買部門の役割です。
SNSが人と人とをつなぎ付加価値を創出したように、調達・購買部門は自社と他社をつなぎ付加価値を創出します。サプライヤを評価してフィードバックによりQCD等さらに高みを目指すこと、そしてサプライヤ倒産危機にも備えること。こうした付加価値創出は、調達・購買部員の重要な業務です。調達・購買部員が単なる伝票発行屋と思われないよう、重要な業務であるべきだと私は信じています。
坂口 孝則(さかぐちたかのり)
未来調達研究所株式会社 取締役 大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』(徳間書店刊)など20冊を超える。
未来調達研究所株式会社 https://www.future-procurement.com/
