電気自動車の可能性と限界【次世代自動車の最前線 第1回】
2020/07/16
将来、ガソリン車の存在を脅かすかもしれないといわれる次世代自動車はたくさんあります。この連載では、次世代自動車の動向について取り上げていきます。
■電気自動車は、なぜ期待される?
次世代自動車と呼ばれるものの中でも、最も期待を集めているのは電気自動車(EV)だとよくいわれますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
第一は、現在の主役であるガソリン車に比べてエネルギー効率が高い点にあります。図を見てください。あくまで概算ですが、大型発電所(石炭火力を想定)から供給される電力で充電し、走行した場合、燃料の持つエネルギーの約30%を有効に利用できるといわれています。これに対してガソリン車の効率は半分くらいですから、「EVのほうがエコ」となるわけです。

図1 電気自動車とガソリン車のエネルギー効率比較
電気自動車が期待される第二の理由は駆動方式にあります。現在のEVはインバータ(*1)でPMモーターを動かす方式が主流ですが、この組み合わせ(*2)だと非常にきめ細かい制御ができるので(1000分の1回転だけさせるなど)、高度な自動運転を実現するには有利です。残念ながらエンジン(内燃機関)ではここまでの性能は発揮できません(「ガソリンで動くロボット」がないのはそのためです)。この点でも、ガソリン車からEVへの移行が進むと考えられているのです。
■EVへの完全移行を阻む2つの課題
しかし、EVの未来が必ずしも明るいとは限りません。世の中には「技術革新が進めば電池の性能は無限に伸び、長距離を走れるEVができるはず」と信じている人が多いようですが、そんなに簡単ではないからです。
蓄電池(二次電池)とは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えてためて(充電)、必要に応じて電力を発生させる(放電)装置です。ところが、光速に近い電気反応と、“分子の伝言ゲーム”である化学反応とではあまりにスピードが違いすぎ、変換はなかなかスムーズにはいきません。EVのフル充電に何時間もかかるのはそのためです。
そこで、電池を小さい単位ごとに細かく制御する技術などを用いて少しでもタイムロスをなくそうとするのですが、構造が複雑になるほど重量も増え、製造も難しくなります。つまり、「燃料タンクだけで必要なエネルギーを短時間に蓄えられるガソリン車」との差を埋めるのは至難の業なのです(個人的には不可能だと思っています)。
さらに、EVに必要な電力をどうやって生み出すかという問題もあります。エネルギー効率が高いといっても、火力発電の場合、7割は無駄になってしまうため、地球温暖化の解決にはつながるとはいえません。
実は、初期のEV期待論では原子力発電(原発)の存在が前提になっていました。原発は、一度、スイッチを入れてしまえば24時間同じ電力が供給されるため、夜間は余ってしまうのです。従って、「余剰電力を有効活用してEVに充電すれば無駄がなくなる」というのが、そもそもの普及プランでした。
ところが、事故が起きるたびに原発への世間の目は厳しくなり、先進国では原子力の比率を高めていくことは厳しくなっています。そんな状況の中、EVに完全移行することが本当に可能なのか、電池の開発動向と合わせて議論が続いているのです。
次回以降、他の次世代車にも注目し、自動車の未来をさらに考えていきます。
*1インバータ
もともとは直流電力を交流に変換する装置だったが、回路技術やパワー半導体の進歩などにより、周波数や電圧、電流を自由にコントロールできる総合電力制御装置へと進化している。
*2組み合わせ
EVの動力としてブラシレスDCモーターと表記されることがあるが、これは「インバータ+PMモーター」のことであり、同じ。
石川 憲二(いしかわけんじ)
ジャーナリスト、作家、編集者 1958年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業。30年以上にわたって企業や研究機関を取材し、技術やビジネスに関する解説記事を書き続けている。扱ってきた領域は、電気・電子、機械、自動車、航空・宇宙、船舶、材料、化学、コンピュータ、通信、システム、ロボット、エネルギー、生産技術、知的財産、経営、人事、マネジメントなど。
