使わなくなった設備の廃棄も適切に【設備老朽化の心得と管理 第6回】
2022/09/27
連載の目次
Chematelsの連載「設備老朽化の心得と管理」では、これまで、設備・機器の老朽化に対応するための心構えや管理のあり方について述べてきました。一方、古くなって使えなくなった設備・機器類は最終的に処分しなければなりません。今回は不要となった設備の廃棄についてお話します。経営者・上司の皆さんはもとより、従業員の皆さんも何に気を付けなければならないかを知ることは大切だと思います。
使わなくなった設備・機器は早く清掃・解体を
老朽化して使わなくなった設備・機器が工場・プラント内に放置されていることは好ましくありません。土地の価値が高い日本では設備・機器の放置はさほど多くありませんが、海外では放置された機器での事故が多く報告されています。
老朽化により使わなくなった設備・機器は早く内部を清掃して解体するべきです。時間が経てば内部の化学物質が変質したり、腐食で思わぬ場所に侵入したりする他、容器から漏れて土壌汚染の原因となってしまう可能性もあります。長期間放置されたままで、元々何に使われていたかを知る人がいない場合も対処に困ってしまいます。
再利用可能なものはデータを残して保管
また、工場・プラントを閉鎖することになっても再利用可能な機器は清掃し、倉庫に保管することもあります。長期保存に耐えるように油を塗ったり、イナートガスを封入したりして、梱包し、タグを付けて管理します。
将来使用可能な状態を維持できるように保管することを英語で「モスボーリング」(mothballing)といいますが、これは「防虫剤」(mothball)から派生した言葉です。モスボーリングの際には、現物の管理も大切ですが、その機器の履歴や性能などのデータをきちんと残すことも重要です。

図1:将来また使うためデータを残す
手順に沿って廃棄する
実際に不要設備を廃棄する場合は概ね次のステップで行います。
- 設備・機器内の化学物質を完全に取り除き、内部清掃を行う
- 清掃に使用した物質も除去して、エアブローを行う
- 残留物のないことを確認して解体する
- 解体した部品や廃材を適切に処分する
- 土壌汚染がないかを確認し、必要に応じて対処する
設備・機器内の化学物質を完全には除去できない場合、解体作業の手順に気を付けなければなりません。建設工事のとき「作業安全分析」(JSA:Job Safety Analysis)というのを行いますが、不要設備の廃棄でも、危険な箇所を特定して作業員の被災を防ぐための手順書を作成することがあります。
清掃では洗剤や水を使うことが多くあります。解体作業中にこれらが噴出すると、化学的には人体に無害であっても、滑りやすくなったり、慌ててけがをしたりと、事故の原因になります。また、内部に可燃性蒸気などが残っていると火災・爆発の原因となりますし、酸素濃度の低い気体が大量に残っていると酸欠事故の原因となります。
解体工事では物を大切に扱わない傾向にあるので、パーツが落下するなど、建設時よりも危険が伴う場合が多いことは事実です。過去には、自分の乗っているパーツを切断して落下した事例も耳にします。
解体した部品や廃材の多くは、廃棄業者に処分を依頼することになるでしょう。一方で、物によっては再利用することもあります。化学物質に耐えるための容器や配管に高級材質が使用されている場合は、金属として高額で買い取ってもらえることもあるので、捨てる前に吟味した方がよいでしょう。
解体後の廃棄物を不法投棄されないように、信頼できる業者に依頼して正しく処分されたことを確認します。
最後に、更地になった土地を調査して土壌汚染が起きていないかを確認する必要があります。東京の豊洲市場が建設された場所が工場の跡地で、土壌汚染の処理がされないまま市場が建設され、後から明るみに出て大騒ぎになったこともありました。こうならないように注意しましょう。

図2:土壌汚染が起きていないか確認
会社の全ての人が協力して取り組みを
この連載「設備老朽化の心得と管理」では、主に工場・プラント設備の老朽化に焦点を当てて、プロセス安全のあり方を説明してきました。老朽化対策も含めて、工場・プラントの安全に取り組むことはビジネスを安定的に運営するために欠かせません。経営者、管理者、従業員が協力して工場・プラントの安全に取り組んでいきましょう。
筆者の所属している化学工学会SCE・Netの安全研究会では、米国の化学プロセス安全センター(CCPS:the Center for Chemical Process Safety)が発行している『Process Safety Beacon』やメトリクスに関する資料を翻訳して公開しています。皆さんのプラントの安全向上に役立てていただければと思います。
連載「設備老朽化の心得と管理」は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。
本連載での参考文献
- “OSHA 29 CFR 1910.119. Process safety management of highly hazardous chemicals.” (米国のプロセス安全管理法規)
- “Introduction to Process Safety for Undergraduates and Engineers” WILEY(2016)
- “Dealing with Aging Process Facilities and Infrastructure” WILEY(2018)
- “Process Safety Metrics - Guide for Selecting Leading and Lagging Indicators” ver.4.1 CCPS(2022)
- 『事例に学ぶ化学プロセス安全』丸善出版 CCPS 安全研究会共著(2015)
- 『若い技術者のためのプロセス安全入門」丸善出版CCPS 安全研究会訳(2018)
- 『化学プラントの老朽化』丸善出版CCPS 安全研究会訳(2021)
- 『プロセス安全メトリクス 先行及び遅行指標の選定ガイド」ver.3.2 CCPS 安全研究会訳(2021)
竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net
AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。
