大規模な設備投資の時期を見計らう【設備老朽化の心得と管理 第3回】

2022/09/06
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連載の目次

Chematelsの連載「設備老朽化の心得と管理」をお届けしています。前回の第2回「管理者は安全に対するコミットメントを!」では管理者のコミットメントの話をしました。ただし、コミットメントだけでは設備の老朽化に対応できません。今回は、設備投資に必要な情報に関する具体的な話をしたいと思います。経営者・上司の皆さんは、設備老朽化への心構えや準備をすることができるでしょう。また従業員の皆さんは、経営者・上司がなぜそんなことをしてくれと言うのかを知ることができるでしょう。

設備・機器の劣化スピードは異なるもの

プラントの設備は設置した時点から老朽化が始まります。たとえ市場からのニーズがなく、導入した設備を使わず置いていたとしても老朽化は進みます。もちろん、中古品を導入した場合は、すでに老朽化が進んでいるわけですからそれ相応の管理が必要です。

全ての設備は時とともに老朽化し、その機能が低下していくわけです。全てを新品同様に維持することはできません。従って、どの設備が老朽化したらどのような事故になり得るかを把握することが大切になります。

第1回「プラントの安全対策は企業経営の一部」でお話ししたプロセス安全の考え方では、重大事故のもととなり得る設備・機器を「安全上重要機器」(Critical Equipment)として重点的に管理します。取りこぼしのないように、重要機器のリストを作成して、各設備・機器の保守計画を作成します。このとき、インフラストラクチャー関連の設備にも重要機器に該当するものがあり得ることに注意しましょう。

設備の健全性管理では、各設備・機器をどう保守するか個別に決めることになります。部品の交換を繰り返すものもあれば、設備を更新する必要のあるものもあるでしょう。大きな設備投資が必要になるかなどの情報を経営者に提供しておくことが大切です。

このように保守計画を作成しても、それだけでは老朽化対策は万全ではありません。設備・機器の劣化スピードは使われ方や、設置された環境により異なるからです。日頃から設備・機器の劣化状態に気を配り、保守計画そのものを修正していく必要があります。場合により、設備・機器の更新時期を前倒ししなければならないかもしれません。

また、自然災害の後には、設備・機器の状態を丹念に見て回り、補修が必要ないかチェックしましょう。ダメージが大きい場合は安全上の脅威となることもあるので、経営者に情報を提供して適切な判断を求める必要があります。

新製品導入には総合的な判断が大切

老朽化問題は設備・機器の機能低下だけではありません。機能は維持できているものの、より優れた設備・機器が世の中に登場し、使っている設備・機器が陳腐化してしまうことがあります。

このような場合、すぐ新製品に飛びつくのではなく、ビジネスとしてどのようなメリットがあるかを把握することが大切です。新製品を導入すれば、歩留まりが向上して利益率が上がるのかもしれません。しかし、ビジネスとしては、販売数量の動向も把握して、その投資によって利益が増えるかを総合的に判断しなければなりません。

設備投資の時期は流動的、対応できる体制を

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図1:適切な設備投資計画を

このように大規模な設備投資の時期は流動的です。経営者はゴーイングコンサーン、つまり会社が将来にわたり事業継続していくという前提の下、会社を維持するための適切なリソース配分をする必要があります。そのためには、ぎりぎりの設備投資計画ではなく、その流動性に対応できる体制を取ることが必要です。

最近は株主たちも、工場・プラントの安全を重視し始めています。漏洩、火災、爆発、破裂などのプロセス事故を起こさないことが重要ですが、そのためには設備の老朽化に対するフレキシブルな経営が求められています。

次回のテーマは「分析手法を使って老朽化対策の立案を!」です。ご期待ください。

竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net

AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。