分析手法を使って老朽化対策の立案を!【設備老朽化の心得と管理 第4回】

2022/09/13
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連載の目次

Cheamtelsの連載「設備老朽化の心得と管理」をお届けしています。前回の第3回「大規模な設備投資の時期を見計らう」では、大規模な設備投資の時期が流動的であることを説明し、その中で安全上重要機器について触れました。今回は、老朽化対策の立案についてもう少し詳しくお話します。経営者・上司の皆さんは、設備老朽化対策の立案イメージを具体化することができるでしょう。従業員の皆さんは、経営者・上司がどのような情報を必要としているかを知ることができるようになると思います。

プロセスハザード分析を実行する

前回、保守計画には安全上重要機器(Critical Equipment)の把握が必要だと述べました。具体的に何をするかといえば、第1回「プラントの安全対策は企業経営の一部」で紹介したプロセス安全でいうところの「プロセスハザード分析」(PHA:Process Hazard Analysis)というリスク分析をすることになります。これは、工場・プラントにおけるハザード(危険源)を把握して、それが事故につながらないようにリスクを小さくしようという考え方に基づいた手法です。

ここで注意が必要なことは、対象とする設備・機器はプロセス領域だけでなく、インフラストラクチャー関連のものも含まれているということです。例えば、ハザード操作性解析(HAZOP:HAZard and OPerability studies)はプロセスハザード分析でよく使われるテクニックですが、プロセス領域のみに目が行きやすいので注意が必要です。

まず、インフラストラクチャーを含む工場・プラントの設備・機器が老朽化したらどんな事故が起こり得るかを考え、何も対策がない場合の最悪の結果につながるシナリオを作成します。ここでは例えばWhat-ifといって「もし~となったら、~が発生して、~となる」のような記述をします。そして、そのリスクの大きさを「影響度」と「発生確率」で評価します。

この評価では、「リスクマトリックス」というツールを使います。リスクマトリックスは図のような形をしていて、どのレベルのリスクなら許容できるか、できないかを経営者が決定して工場・プラント側に示すものです。

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図1:リスクマトリックスの例

この例では、発生頻度を「ほとんどない」〜「よく起こる」、また影響度を「無視できる」~「非常に高い」としています。実際にはより具体的に、「よく起こる」は「月に1回以上」など、また影響度は人命・損害額・環境への影響・機会損失などで点数評価したりして示します。影響度は米国の化学プロセス安全センター(CCPS:the Center for Chemical Process Safety)が発行するメトリクスに関するガイド「プロセス安全メトリクス 先行及び遅行指標の選定ガイド」に記載されている「安全ピラミッド」の図や「プロセス安全事故の分野別強度」の表が参考になります。

その対策で本当にリスクが許容レベルになるか

何も対策を講じていない場合のリスクが「容認できない」となった場合は、大きなポテンシャルを持ったハザードだと把握できます。ただし、実際のところリスクの多くは何らかの対策が施されており、「許容できる」レベルになっているはずです。その対策が設備・機器によるものであれば、それらは「安全上重要機器」(Critical Equipment)として指定します。

もし、「許容できる」レベルになっていなかったら、追加の対策が必要です。機器類であれば、それも安全上重要機器に加えられることになります。この場合、追加の対策を可及的速やかに実施しなければなりません。

追加の対策立案で大切なことは、「それで本当にリスクが許容できるレベルになるのか」の確認です。対策は「事故発生の防護層」と考えられており、もし同じ一つの出来事で複数の防護層が無効になる場合は、独立防護層、つまりリスクを下げる効果を持つ対策としては認められないことになります。例えば、電気室の火災対策として、その電気室から電源供給を受けている消防ポンプは、防護層として機能しません。

このようにして集められた安全上重要機器は全て老朽化対策の対象となります。これらの機器は個別には保守費用が安くても、数が多ければそれなりの金額になるので、予算確保が大切です。

一方、老朽化による補修や更新が必要な設備・機器のうち、保守費用が高額なものは、安全上の問題がなくても老朽化対策機器リストに載せて管理しなければなりません。管理者は高額投資が必要な時期と金額の予想を経営者に早めに報告する必要があります。

次回のテーマは、「メトリクスの活用で改善を確実なものに」です。ご期待ください。

竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net

AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。