管理者は安全に対するコミットメントを!【設備老朽化の心得と管理 第2回】

2022/08/30
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連載の目次

  • 第1回 プラントの安全対策は企業経営の一部
  • 第2回 管理者は安全に対するコミットメントを!
  • 第3回 大規模な設備投資の時期を見計らう
  • 第4回 分析手法を使って老朽化対策の立案を!
  • 第5回 メトリクスの活用で改善を確実なものに
  • 第6回 使わなくなった設備の廃棄も適切に

Chematelsの連載「設備老朽化の心得と管理」をお届けしています。前回の第1回「プラントの安全対策は企業経営の一部」では、主に経営者の皆さん向けに、設備老朽化の管理が企業経営の一部であることをお話しました。今回は、プラント管理者の「コミットメント」についてお話します。経営者・上司の皆さんは、設備老朽化への心構えや準備を固められるでしょう。従業員の皆さんは、経営者・上司がどのような情報を必要としているかを知ることができるでしょう。

コミットメントとは、誓って守るべきこと

プラント管理者には、工場長を頂点とし、各組織の長や中間管理職の方たちが就いておられることでしょう。工場長兼務の社長でないかぎり、プラント管理者は経営者と一般従業員の間を取り持つ存在です。上から無理難題を押し付けられ、下からは突き上げを受ける立場は辛いものがあると思いますが、プラントをスムーズに運営するために欠かせない重要な存在といえます。

この連載では設備の老朽化管理に焦点を当てていますので、この観点からプラント管理者の皆さんの「コミットメント」について考えていきます。

まず、コミットメントという言葉ですが、「約束」とか「誓い」などと訳されることが多くあります。ただし、これらが適切な日本語ともいえず、カタカナで「コミットメント」と書かれることが多いものです。欧米のコミットメントは「神に誓って絶対に守るべきこと」のイメージで、絶対に譲らない気持ちが込められています。ここでは、そのように「コミットメント」の意味を受け止めてください。

管理者には上司がいます。上司に対して正しい情報を迅速に報告することは、老朽化問題に拘わらず大切なことですが、特に設備の老朽化に関しては上司に考える時間を提供することも重要です。そこで、「時間的余裕を持って老朽化についての正確な情報を提供するには何をなすべきか」を考えることが大切になります。

口は「安全第一」心は「売り上げ第一」を部下は見抜いている

まず、老朽化についての情報をどのようにして入手できるかといえば、一般従業員を含めた部下から、設備の耐用年数や状態について正しい報告を受ける必要があるでしょう。もちろん、自分で調査して情報を集める姿勢も大切ですが、部下からの報告も有用であり、彼ら・彼女らに信頼される存在にならなければなりません。そのためには、「プラントと従業員の安全を守る」という管理者としてのコミットメントを示すことが求められます。

口先だけで、「安全が第一」と言っていても、本音はプラントの稼働率を上げて売り上げを伸ばし、上に認められて出世したいと考えているような上司を部下は信用していません。上司の本心を見抜いて忖度し、間違った報告をしかねないのです。「プラントと従業員の安全を守る」ということは、従業員の生活基盤としての職場を守り、従業員がプラントでけがをしたり、命を失ったりしないよう、従業員を守り抜くことを意味します。

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図1:上司の本心を部下は見抜いている

設備の老朽化問題を放置したために大きな事故が起きれば、プラントは設備面で大きな損害を受けます。後日それを修復できたとしても修復完了までの間、従業員は日常の仕事ができなくなります。もし、会社がプラントを復旧させない判断をすれば、仕事を失うかもしれません。また、従業員はその事故で後遺症が残るような大きなけがをするかもしれません。安全へのリソースであるヒト・モノ・カネを惜しんで、事故を起こすことは決して割のよいことではないのです。

「管理職は自分一人ではない」と思う人もいるかもしれません。しかし、全ての管理者がこの「プラントと従業員の安全を守る」というコミットメントの下で判断し、行動すれば、そのプラントは安全だと思いませんか。

逆に一人でも、このコミットメントを示せない管理者がいるプラントでは、安全が疎かになり、事故のもととなります。

もし、同僚の管理者がこのコミットメントを示せていなければ、あなたの手助けが必要です。

次回のテーマは、「大規模な設備投資の時期を見計らう」です。ご期待ください。

竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net

AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。