【化学業界の基礎知識 -品質管理と製品規格編-】第4回 環境保全時代における企業のパスポート―ISO14001とは?
2021/11/04
連載の目次
- 第1回:規格があるから電池ホルダにパナ製もソニー製もはまるー日本産業規格(JIS)
- 第2回:顧客満足のためISOにイソしもう!ーISO9001
- 第3回:自動車は品質管理のカタマリ!ーIATF16949
- 第4回:環境保全時代における企業のパスポートーISO14001
Point
ISO14001とは、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が策定した環境マネジメントシステムの認証規格です。企業活動における環境リスクを分析し、そのリスクを低減していくためのマネジメントシステムを構築するためのガイドラインとなります。環境にとって良い要因を伸ばし、悪い要因を低減・改善していくしくみづくりを継続的に運用していくためのツールといえます。
制定の経緯は?
持続可能な開発の実現に向け、事業者の関心が高まる中で制定されました。
1992年の環境と開発に関する国際会議(地球サミット)を契機として、「持続可能な開発」の実現に向けた手法の一つとして、事業者の環境マネジメントに関する関心が高まりました。こうした動きを踏まえて、環境マネジメントに関わる様々な規格の検討が開始されました。その中心となったのが、「環境マネジメントシステムの仕様」を定めているISO14001です。規格には法的な拘束力はなく、規格に沿った取組をするかどうかは、企業の自主的な判断に委ねられています。
ISO14001の構造と特徴は?

図1 ISO14001の基本構造はPDCAサイクル
ISO規格の基本的なしくみである「PDCAサイクル」が、ISO14001においても基本的な構造となります。図1に示すように、「計画」(Plan)、「実施・運用」(Do)、「評価」(Check)、「改善」(Action)というプロセスを繰り返すことにより、環境マネジメントのレベルを継続的に改善していこうというものです。
また、方針の策定などに最高経営層の責任ある関与を求め、「トップダウン型の管理」を想定していることも、この規格の特徴といえます。
運用管理をどのように行う?
環境マネジメントシステムのプロセスを記した手順書に沿って行います。
工場から排出される煙や工場排水は大気汚染や水質汚染の原因となり、近隣住民だけでなく工場付近の自然環境にも甚大な影響を及ぼす可能性があります。このリスクを低減するために、集じん装置や排水処理装置などを用いていますが、ヒューマンエラーなどで装置が適切に稼働しないなどの問題も起こります。その際に同様のミスを繰り返さないように、プロセスを改善していくことで、より確実に環境リスクを低減できる仕組みにしていくのです。このプロセスを記した仕様書をISO14001では「手順書」と呼び、問題点を改善するしくみのことを「環境マネジメントシステム」といいます。
ISO14001が広まっている背景は?
環境保全に対する継続的な企業の意識の高まりがあります。
とくに欧州連合(EU)では、製品に含まれる有害物質を制限するRoHS指令やREACH規則などの法令・制度が設けられており、商社はそれらに対応するために取引先の製造業にも認証取得を求めるようになっています。
ISO14001を認証取得するメリットは?
下記のことが挙げられます。
- 取引先に向けて対外的なアピールができる
- 顧客や取引先の信頼が得られる
- 環境マネジメントシステムに対する企業内ルールの明確化と改善ができる
- グリーン調達への対応ができる
- 省エネルギーによるコストの削減
一方、デメリットには、取得と維持にコストが発生することや、従業員の負担が大きくなるなどがあります。
Message
ISO14001で企業としての環境保全への姿勢を示す!
企業が地球環境保全に向け積極的に取り組むことが当然視されるようになってきました。ISO14001の認証取得は、企業としてそうした姿勢を示すことにもなります。
「化学業界の基礎知識」の「品質管理と製品規格編」は今回で終了です。次回より「化学製品編」がスタートします。ご期待ください!
【参考文献】
1)環境省「ISO14001」
https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/04-iso14001.html
2)ISOプロ「ISO14001とは?わかりやすく解説」
https://activation-service.jp/iso/column/2816
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
