【化学業界の基礎知識 -品質管理と製品規格編-】第1回 規格があるから電池ホルダにパナ製もソニー製もはまる―日本産業規格(JIS)とは?
2021/10/14
連載の目次
- 第1回:規格があるから電池ホルダにパナ製もソニー製もはまるー日本産業規格(JIS)
- 第2回:顧客満足のためISOにイソしもう!ーISO9001
- 第3回:自動車は品質管理のカタマリ!ーIATF16949
- 第4回:環境保全時代における企業のパスポートーISO14001
Point
日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)は、身の回りにある各種の工業製品の品質改善、生産合理化、取引の公正化、使用の合理化を図る目的で定められた一定の基準、つまり標準のことです。鉱工業品の種類、形式、形状、寸法、構造、品質などの要素や、鉱工業品の生産方法、設計方法、使用方法、試験方法や検査方法などが、標準として定められています。
制定の経緯は?
1946年に日本工業標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee、現・日本産業標準調査会)が発足し、日本の工業標準化の促進を目的として1949年に工業標準化法(現・産業標準化法)が制定され、この法律に基づき国家規格としてJISは生まれました。第二次世界大戦直後の日本では、産業の復興、生産力・技術力の増強を進めることが急務だったのです。
2021年3月末現在で、規格の総数は1万912件となっています。
なおJISの日本語での名称については、1949年以来「日本工業規格」と呼ばれてきましたが、2019年に「日本産業規格」に変更されました。
JISの目的は?
互換性の確保、品質の確保、安全性の確保に集約されます。これらの目的を実現するため、製品などの形・大きさ・性能・測定方法などを一定の取り決め文、すなわち規格文書に従って統一させる標準化がなされます。
互換性の確保とは、どのメーカーが製造した製品を使用しても正常に作動することを保証することを指します。乾電池や携帯電話が例として挙げられます。これらは、形状が標準化されており、異なるメーカーの製品を使用しても、操作には影響を与えません。
また、品質の確保とは、除湿機や電子レンジなどの機器の性能が保証されていることです。消費者の信頼性を得る上で重要です。
安全性の確保は、機器を使用する消費者を守ることを指します。チャイルドシートやヘルメットなどの防護器具を着用するにあたっては、器具自体の安全性が確保されていなければ意味がありません。
JISマークを見かけるけれど、役割は?

図1 JISマーク
JISに適合していることを示す役割があります。製品がJISへの適合性の認証を受けたときに、製品そのもの、製品の包装、製品の容器または製品の送り状に付することができます。
JISマークは、1949 年の工業標準化法制定以来、付されてきたマークでしたが、2004 年の工業標準化法の改正により従来とは異なる新たな表示制度に改正されました。上に示すようなマークにデザインが刷新されました。
外国にもJISと同じような規格はある?
あります。各国で工業規格・産業規格が制定されており、米国のASTM(American Society for Testing and Materials)規格、英国のBSI(British Standards Institution)規格、ドイツのDIN(Deutsches Institut für Normung)規格などが知られています。
米国のASTMは日本企業における業務でもよく使われているので、JISと比較しながらよく理解しておくことが重要です。表1にパイプ、表2にボルト・ナットの規格についてのJISとASTMの比較をまとめました。

表1 JIS-ASTM対照表(パイプ)

表2 JIS-ASTM対照表(ボルト・ナット)
Message
規格があるとなしでは大きな違い!
互換性の確保、品質の確保、安全性の確保が実現しているのは、JISのような規格があるからこそです。もしも私たちが暮らしている世界に規格がなかったとしたら、それは不便なことでしょう。想像を膨らませると、規格があることの大切さを感じることができます。
次回は第2回「顧客満足のためISOにイソしもう!―ISO9001」の予定です。
【参考文献】
1)経済産業省「暮らしとJIS」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/keihatsu/pamphlet/pdf/kurashitojis.pdf
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
