【化学業界の基礎知識 -輸出入業務編-】第3回 有害物質規制のエリート―RoHS指令とは?

2021/09/22

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連載の目次

Point
RoHS指令(ローズ指令)は、欧州連合(EU)に上市する電気・電子機器(EEE:Electrical and Electronic Equipment)などの製造において、特定有害物資の使用を制限するためのEUの法律です。RoHSとは、Restriction of Hazardous Substancesの略称で、日本語では「有害物質使用制限」ともよばれます。

どのような物質が有害物質とされている?

鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB:PolyBrominated Biphenyl)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE:PolyBrominated Diphenyl Ether)の6物質が、2006年7月から有害物質として使用規制の対象となりました。これらは、ネジ、ランプ、乾電池、プリント基板、はんだ、インクなど、身近なものにも使われる物質です。

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図1 身近な製品に含まれうるRoHS指令の有害物質

さらに、2019年7月からは、フタル酸ジ-2-エチルへキシル(DEHP:Bis(2-EthylHexyl)Phthalate)、フタル酸ブチルベンジル(BBP:Benzyl Butyl Phthalate)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP:DiButyl Phthalate)、フタル酸ジイソブチル(DIBP:DiIsoButyl Phthalate)という4種類のフタル酸エステル類が追加され、禁止物質は10物質になりました。

現在のこの有害物質10種類を「RoHS10」と呼びます。RoHS10については、次回の第4回で詳しくお話しします。

それぞれの物質の規制濃度は?

カドミウムのみ100ppm、それ以外は1000ppmで、これを超える量を含む製品はEU域内で上市できません。

これまでの指令の経緯は?

2006年7月に最初の指令(通称RoHS1)が施行されました。2011年7月には改正指令(通称RoHS2)が施行されています。

定期的な禁止物質の検討及び追加の実施が定められており、2019年7月から上記4種類のフタル酸エステル類が追加されました。

RoHS指令の適用対象製品は?

RoHS1では、対象範囲は、下記の1から10のカテゴリー限定でした。2011年改正RoHS2では対象製品の幅が広がり、交流 1000V/直流1500V以下の定格電圧の、すべての電気・電子機器(EEE)が対象となりました。

  1. 大型家庭用電気製品
  2. 小型家庭用電気製品
  3. 情報および通信装置
  4. 消費者用装置
  5. 照明装置
  6. 電気・電子工具
  7. 玩具、レジャーおよびスポーツ装置
  8. 医療機器
  9. 産業用を含む監視および制御機器
  10. 自動販売機
  11. 上記カテゴリーに含まれないその他のEEE

しかし、特定有害物資の代替手段がない場合は、申請すれば一定の有効期限付きで適用除外用途が認められます。

法的な義務は?

RoHS1では、生産者のみに法的義務がありましたが、RoHS2からは製品のサプライチェーンに関わる生産者、輸入者、販売者に、次の4つの法的義務が課されています。

  1. RoHS指令への適合性評価の実施および適合宣言をし、上市前の製品にCEマークを付ける。さらに適合性証明の根拠を技術文書で明示し、適合宣言書とともに10年間保管する。
  2. 適合維持管理、および設計変更や整合規格変更などの際には、適切に対応する。
  3. 製造番号など製品識別に必要な情報、製造者名、登録商標、住所、連絡先を製品もしくはその包装や添付文書に記載する。
  4. 上市後に不適合があった場合は、製品をリコールし、加盟国の所轄当局に直ちに通知する。

RoHS指令の特徴は?

EU法の形式の一つのEU指令(Directive)であり、EU加盟国にはEU指令の目的達成のための法整備化義務があります。目的達成の手段は、各国が自由に定めることが可能です。

RoHS指令は、EUの基本条約の一つである運営条約の第114条が根拠となっています。

WEEE指令というのも聞くけれど、どのような指令?

RoHS指令の姉妹指令といえるEU指令であり、電気・電子機器の廃棄物処理において、リサイクル体制の構築や不法処理などによる環境汚染防止を目的としています。WEEEは、Waste Electrical and Electronic Equipmentの略称です。日本語で「電気電子機器廃棄物指令」ともよばれます。RoHS指令と同じく、欧州議会で制定されています。

RoHSに関連する他国の法制度の状況は?

EU以外でもRoHS指令と同様、製品に含有する有害物質に関する法律があります。

日本では、2006年7月に「資源有効利用促進法」が制定されました。

米国では、2007年1月にカリフォルニア州有害物質取締局(DTSC:the Department of Toxic Substances Control)により「カリフォルニア版RoHS」が施行されました。米連邦レベルでも、「連邦RoHS法」(電気製品環境設計法)が、有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)改正法案として2009年に審議されましたが、可決されず廃案になりました。

中国でも、2007年2月に「中国版RoHS」が施行されました。2016年に改定され、「電器電子製品有害物質使用制限管理弁法」が現行法です。

Message
⁠RoHSは世界的な規制のモデル!

各国や地域がそれぞれのRoHS指令を制定していることからもわかるように、EUのRoHS指令は世界的な規制のモデルとなっています。有害物質使用制限をめぐるEUの影響力は強いものといえます。

第4回は、「禁止の有害物質、10個言えますか?―RoHS10」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。