【化学業界の基礎知識 -輸出入業務編-】第1回 その輸出品、兵器になりませんか?―輸出貿易管理令とは?

2021/09/09

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連載の目次

  • 第1回:その輸出品、兵器になりませんか?―輸出貿易管理令
  • 第2回:日本企業も無関心ではいられない―REACH規則
  • 第3回:有害物質規制のエリート―RoHS指令
  • 第4回:禁止の有害物質、10個言えますか?―RoHS10

Point
⁠輸出貿易管理令は、武器開発などにつながる機器や原料の輸出を規制することを目的の一つとした法令です。輸出者は、規模の大小や輸出の方法に関わらず、輸出する貨物が輸出規制対象でないことを確認し、管理・運用することが義務づけられています。

輸出貿易管理令はどんな法律に基づいている?

輸出貿易管理令は、輸出入などの管理のしかたを定めた日本の法律「外国為替及び外国貿易法」(外為法)の下の「政令」として定められている法令です。武器開発につながる技術や製品の流出を防ぐことを目的の一つにしています。主に、外為法の第48条に基づく貨物に関する規制の輸出貿易管理令と、おなじく第26条に基づく役務・技術提供に関する規制の外為令で構成されています。この原稿では、輸出業務に直接関連する輸出貿易管理令について説明します。

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輸出について何をどう管理している?

輸出貿易管理令における輸出管理の対象は、「貨物」と「その貨物の製造に関する技術や情報」です。管理する方法には、「リスト規制」と、リストから外れるものをまとめて規制する「キャッチオール規制」の2つがあります。

「リスト規制」は、経済産業省の許可が必要な品目を定めたもので、対象となるものがリストアップされています。具体的には、先端材料や原子力関係などの、とくに兵器転用されると危険なものや高度な技術が使われているものとなります。

ただし、このリストには直接には兵器転用を連想できない(しない)ものも多く含まれるので、該当するかどうかは精査が必要です。リスト規制に該当する貨物かどうかは、輸出貿易管理令の別表第一・外国為替令別表の項番で調べることができます。該当する項は、次のように第15項まであります。

1.武器、2.原子力、3.化学兵器、3の2.生物兵器、4.ミサイル、5.先端素材6.材料加工、7.エレクトロニクス、8.電子計算機、9.通信、10.センサ、11.航法装置、12.海洋関連、13.推進装置、14.その他、15.機微品目

一方、「キャッチオール規制」は、リスト規制に該当しなくても、場合により輸出時に経済産業大臣の許可を必要とすることを定めた規制です。例えば、工具、ジグ、機械部品などでも、テロリストや大量破壊兵器製造に使われる可能性はあります。これを防止するため輸出者は、客観要件として需要家と用途を確認し、また経済産業大臣からの通知内容(インフォーム要件)を事前に確認し、輸出の許可を得ることも必要となります。

輸出先のすべての国がキャッチオール規制の対象なの?

輸出先国が日本と同様に、厳格な輸出管理をしている「グループA」と呼ばれる国であれば、キャッチオール規制の対象にはなりません。

「グループA」は2019年まで「ホワイト国」と呼ばれていました。同年8月に日本が韓国を「グループA」から除外し、韓国政府も対抗して、輸出管理優遇措置対象国から日本を除外したことも記憶に新しいニュースです。

2021年8月現在、「グループA」に含まれる国は図のとおりです。

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図1 グループA(旧ホワイト国)に含まれる国

輸出時に注意すべきことは?

輸出貿易管理令と聞いても、一般企業の場合、普通は「武器の開発につながるものでないから関係ない」と考えてしまいがちです。しかし、武器開発につながるか否かの判断は、総合的な判断が必要で、勝手な「予想・思い込み」は、思わぬトラブルにつながります。

また、輸出貿易管理令に関係する貨物の輸出には、輸出者だけでなくその貨物の製造者も連帯責任を負うことを認識しましょう。

輸出貿易管理令違反には、懲役10年以下または罰金10億円以下あるいは、その両方の重い罰則が課せられることもあります。さらに、3年以内の期間限定で、一切の輸出、技術提供、仲介貿易取引を禁ずる行政制裁を科される可能性があります。しかも、それが経済産業省の公式サイトに「違反企業」「違反個人」として公表・掲載されますので、十分な注意が必要です。

最後に、輸出許可の要否判定のしかたを図で示します。

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図2 輸出許可の要否判定

Message
⁠⁠輸出に「思い込み」は禁物!

外国にものを輸出する際、「これは輸出しても大丈夫だろう」という思い込みは禁物です。輸出貿易管理令に抵触しないかどうか、細心の注意で確認することが必要です。

第2回は、「日本企業も無関心ではいられない―REACH規則」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。