【化学業界の基礎知識 -輸出入業務編-】連載がスタートします!
2021/09/02
Chematelsの「化学業界の基礎知識」は、化学業界に入って間もない方や、興味を抱いている方、業務スキルをさらに高めたい方に向け、役に立つ基礎的な知識・情報をお届けする企画です。これまで「契約書類編」と「製品安全編」で、好評をいただきました。
このたび、「輸出入業務編」がスタートします。輸出入業務では、国内での取引と異なり、日本の輸出関連の規制や、輸出先相手国の輸入関連の規制を十分に確認することが重要となります。輸出先国によっては、特別なライセンスが必要だったり、国内とは異なる規制基準があったりする場合もあり、違反すると、罰金や懲役などの思わぬ重い制裁を受けることもあるのです。
そこで、「輸出入業務編」では、こうした輸出入の業務において、知っておくべき主な規制についてお話していきます。今回は連載に先立ち、今回は輸出入業務関連のあらましなどを紹介します。
米ぬかや魚粉までも輸出規制の対象に
日本の輸出入は、外国為替や外国貿易の取引に関わる事項を定めた「外国為替及び外国貿易法」(外為法)により管理されています。
輸出入を管理するための法令は、外為法以外にもあります。たとえば、輸出規制については、関税法という法律で、麻薬、覚せい剤・偽造通貨の輸出が禁止されています。また、日本が批准したワシントン条約では、絶滅のおそれのある野生動物の輸出が禁止されていますし、同様に、モントリオール議定書では、オゾン層破壊物質の輸出が禁止となっています。
これらに加えて、外為法では、許可が必要なものとして武器(兵器関連品)や、また承認が必要なものとして米ぬかや魚粉、ダイヤモンドの原石などが定められており、経済産業大臣の「許可」「承認」を得ることが定められています。
上記のような外為法での輸出規制は、この法律に基づいた「輸出貿易管理令」という政令で詳しく定められています。外為法の中で重要なのは、この輸出貿易管理令といってよいでしょう。輸出貿易管理令は、輸出行為が輸出先の国で、大量破壊兵器や武器、武器開発につながらないようにするため、さまざまな機器や原料などの輸出を規制することを目的の一つとした政令です。「武器開発」の「武器」とは、武器そのものだけでなく、武器を作るための電子機器や工作機械、さらには、それらを作るための技術情報やノウハウなども含まれます。
このように、輸出してはならないものが法律や政令で細かく定められているわけです。もし、違反すると、懲役ないし罰金、またはその両方が科されるだけでなく、期間限定で、輸出、技術提供、仲介貿易取引を禁ずる行政制裁を科されるなど、重い罰則を受けることになる場合があり、とくに注意が必要です。
輸出先の国・地域にある規制にも十分な注意を
また、輸出先の国や地域の輸入およびそれに関連した取引の規制についても、十分な情報を得て、その規制を守っていることを確認した上で、輸出を行うことが求められます。
各国の輸入品に関する規制は、輸入されたものが、その国や地域で、そこに暮らす住民に害を与えたり、安全性を脅かす危険なものであったりすることがないようにする目的で決められています。よって、規制は国ごとに異なりますので、よく確認した上で対応することが重要です。
EUの規制を中心に4つの話題を届けます
この「輸出入業務編」では、代表的な例として、上記で少し触れた「輸出貿易管理令」のほか、欧州連合(EU)における「REACH規則」、「RoHS指令」およびその最新版である「RoHS10指令」について、各回で説明していきます。EUにおける各種規制は、EU以外の多くの国もこれらを規範として、自国の輸入規制の法律を決めている場合が多くあるので、知っておくと役立ちます。ぜひ、理解しておいてください。
連載の目次
- 第1回:その輸出品、兵器になりませんか?―輸出貿易管理令
- 第2回:日本企業も無関心ではいられない―REACH規則
- 第3回:有害物質規制のエリート―RoHS指令
- 第4回:禁止の有害物質、10個言えますか?―RoHS10
次回より、順を追って説明します。第1回は「その輸出品、兵器になりませんか?―輸出貿易管理令」です。ご期待ください。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
