「第二十感」まで働かすロボットの感覚能力【部下に話したくなるロボット最新技術の話 第3回】

2021/09/21

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特集の目次

今回は、ロボットの三要素の一つである「センサ」(感覚器)について考えてみます。最新のロボットには「五感」どころか「十感」「二十感」といった多様な感覚をもったものまであり、そういう点でも、すでにヒューマノイドの枠を超えているのです。

感覚器の数や種類に制限はない!

人の感覚はかなり優れていて、たとえば眼の解像度はよく見える範囲で約700万画素あるといわれており、これを視野全体に広げると約6億画素にもなります。デジカメが700万画素の能力に達したのは2008年ごろでしたから、なかなか侮れないですね。

しかし、これだけの優秀なセンサをもつと情報処理も大変になり、脳に大きな負担(*1)がかかります。このため、眼球の数は2つが限界で、「後ろにもうひとつあれば便利なのに……」と願っても、無理な話なのです。

ロボットには、そういった制限はありません。コンピュータの情報処理能力はとっくに人の脳を超えていますし、通信機能を生かして外部のスーパーコンピュータを利用してもいいからです。従って、目的に応じて10個でも20個でも眼(カメラ)を付ければいいし、離れたところにあるカメラも視覚機能の一部に組み込めます。まさに千里眼ですね。

さらに、ロボットの視覚は人の能力のはるか上を目指します。たとえば、赤外線やX線といった私たちには感知できない波長の光を利用すれば、もっと多くのものが見えてきますし(壁の向こうも見えます)、範囲を電磁波全体に広げればレーダーなども視覚に含まれるのです。

参考までに、ロボットに使われる主なセンサをまとめておきました。大きく外界センサと内界センサに分けられますが、これは目的による分類であって、感知できる対象が違うわけではありません。これらを眺めただけでも、人間にはできないことばかりなのが分かるでしょう。考えてみれば、私たちは正確な時計すら体内にもっていないのですからね。

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図1 ロボットに使われる主なセンサ
⁠(出所:ロボット工業会監修、日刊工業新聞社編『トコトンやさしいロボットの本』)

しかも、ロボットの市場が広がるにつれて新しいセンサが次々と開発されていくので、この表の項目もどんどん増えていきます。味覚センサはその一つで、食材のチェックや調理にロボットを導入しようという発想に応えるため、より高性能で小型なものが生まれてきているのです。

人間の五感は長い進化の歴史のなかで確立してきたものですが、ロボットでは同じことを非常に短期間にしてしまいます。ですから、「完全な人造人間」をつくることがゴールではないのです。

「3軸加速度センサ」という魔法の道具

数あるセンサの中でも、ロボットの性能向上に大きく貢献してきたのが加速度センサだと思います。物体の「動き」を計測(*2)するもので、昔はバネでつながれた重りの動作を調べる機械式のものしかありませんでしたが、今は半導体チップだけで計測可能になり、小型化・高性能化(*3)にも成功しました。ちなみにスマートフォンにも搭載されていて、アプリを入れれば歩数計になるのはそのおかげです。

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図2 機械式加速度センサのしくみ
⁠(筆者作成)

個人的な話になりますが、筆者が企業や研究機関でロボットに関する取材を始めた30年以上前は、加速度センサの精度もそれほど高くなく、しかも1方向しか計測できませんでした。アームなどを細かく制御するにはxyz方向の立体的な動きを検出する必要がありますから、「どのセンサをどういう位置にどういう配置で付ければいいのか」といったことがロボット設計上の重要なノウハウになっていたのです。

ところが、現在では3軸加速度センサといって、小さなチップ一つで3次元計測ができるしくみがありますし、回転を検知できるジャイロセンサが組み込まれたものもあるので、ロボットの可動部分に小さなパーツを取り付けるだけで完璧に制御できます。センサから送られる大量の情報はコンピュータによる力業で処理すればいいので、ロボットの設計はかなり楽になりました。

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図3 3軸加速度センサ+ジャイロセンサ一体型チップの機能
⁠(筆者作成)

加速度センサが急激に進歩したことはロボットの歴史を大きく変えた史実であるにもかかわらず、一般のマスメディアがテーマとして取り上げることは、まず、ないですね。こんなところにも「知られざるロボットの真実」があるのです。

第4回は「産業用ロボット」の予定です。

*1:脳に大きな負担
⁠人間の五感によって知覚できる情報の8〜9割が視覚によるもので、脳の神経回路の約7割がその情報処理に充てられます。消費エネルギーでいえば、摂ったカロリーの約15%はこの機能のために費やされる計算です。

*2:物体の「動き」を計測
⁠加速度を計測し続けていれば、その数値を積分することで速度が求められ、さらにもう一度、積分することで移動距離(位置)が分かります。

*3:小型化・高性能化
⁠最新のものだと、親指くらいの大きさのチップですべての「動き」を検知・計測できます。

石川 憲二(いしかわけんじ)

ジャーナリスト、作家、編集者 1958年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業。30年以上にわたって企業や研究機関を取材し、技術やビジネスに関する解説記事を書き続けている。扱ってきた領域は、電気・電子、機械、自動車、航空・宇宙、船舶、材料、化学、コンピュータ、通信、システム、ロボット、エネルギー、生産技術、知的財産、経営、人事、マネジメントなど。

公式サイト http://www.ne.jp/asahi/happy/golucky/