産業用ロボットに愛を!【部下に話したくなるロボット最新技術の話 第1回】

2021/09/07

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6回にわたり、ロボットの基礎技術について解説させていただきます。ただし、あまり堅苦しい原稿にはせず、ところどころ笑える内容にしますので、どなたでも気軽にお楽しみください。

連載の目次

  • 第1回:産業用ロボットに愛を!
  • 第2回:脳より感覚より肉体こそ命
  • 第3回:「第二十感」まで働かすロボットの感覚能力
  • 第4回:きれいな部屋こそロボットの職場
  • 第5回:「ロボ先生の手術だから安心」という日がくるかも
  • 第6回:そうさロボットは人間じゃない

そもそも、ロボットってなんだ

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図1 あなたの思い描く「ロボット」とは?

多くの人が「ロボット」と聞いてイメージするのは、アニメに登場するような人型(ヒューマノイド)マシンだと思います。しかし、現在、実用化されているロボットのほとんどは、工場などで活躍する産業用のもの。形状としてはアーム型の多関節ロボットが主流ですから、人びとの認識とはかなりずれています。それどころか、「悪の組織」と戦う巨大ロボは、たいていの場合、人が操縦するので、厳密にいえばロボットではないのです。

ロボットを定義する言葉としてもっとも重要なのは自律性で、「センサ」「知能・制御」「駆動系」の3つの要素技術(ロボットの3条件といいます)を組み合わせ、外部から操作しなくても活動できなければなりません。従って、ガンダムよりルンバのほうが高度に進化したロボットだといえるのです。

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図2 どっちが真のロボット?⁠
⁠(筆者作成)

ただし、この前提でロボットについて語っていくと、全然、おもしろくありません。ゼンマイで動くブリキのおもちゃだって、心情的にはロボットと呼びたくなりますからね。そこで、以前、ロボットの解説書を書いたとき、僕なりにロボットの定義を決めさせていただきました。本稿でも、主流である産業用ロボットを中心にしながら、ときどき脱線し、人々が期待するロボット像(*1)にも触れたいと考えています。

【本稿におけるロボットの定義】

⁠1、ある程度の自律性をもち、高度で多様な作業ができる動的機械。
⁠2、人や動物に近い形や機能をもつ動的機械。
⁠3、これらのうち多くの人が見て、ロボットだと感じられるもの。

用途で分けるとロボットは2種類

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図3 産業用ロボットの一種、多関節ロボット

先ほど説明したように、いま稼働しているロボットの大半は産業用です。実はこの点にフォーカスすると、ロボットに関する認識がもう少し明確になります。

現代の工場では自動的に動く機械がたくさん使われています。しかし、それらがすべてロボットというわけではなく、決められた作業だけをひたすら繰り返すマシンは、ただの自動機械(いわゆるオートメーション)に過ぎません。

それでは「こっちの機械はロボットですから、お値段は少し高くなりますよ」と売り込むときのポイントはどこにあるのでしょうか?

それは次の3つの機能を満たしているかどうかです。

  • 自動制御により自律的に動ける。
  • 人の作業を教え込むこと(ティーチング)で学習して代替できる。
  • 単機能ではなく多機能。

ちなみに、最後の多機能とは「なんでもかんでもできる」という無限の万能性ではありません。例えば、自動車工場の溶接ロボットであれば、車種が変わっても自律的に対応できるという限定的な意味です。似たようなものに自動溶接機がありますが、こちらは、一度、設定したら同じ箇所しか溶接できず、ロボットほどの汎用性はありません。

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図4 ロボットの分類(実用化対象の一例)
(出所:「次世代ロボットビジョン懇談会(第1回)配付資料」(経済産業省)、『トコトンやさしいロボットの本』(日刊工業新聞社)などをもとに著者作成

産業用ロボットは1970年代には実用化されており、すでに半世紀近い歴史があります。大きな市場を獲得したおかげで研究・開発も進み、非常に高度で精密・正確な作業ができるようになりました。そこで、これからはこの分野で培ってきた技術やノウハウを活かし、対象領域を製造業以外にも広げていこうとしています。

つまり、ロボットの進歩をリードしているのはアニメには絶対に出てこないよう地味な産業用ロボットなのですから、もう少しそれらのロボットにも親近感をもってあげてください。まちがっても、店頭でちょっと喋るだけのヒューマノイドロボットを見て、「ロボットの歴史が変わった」(*2)などと騒がないように。

*1:人々が期待するロボット像
実は、これがロボットの定義を難しくしている最大の要因です。例えば、完全自動運転車が実現すればそれはもう完全にロボットなのに、たぶんそうは呼ばれない。

*2:ロボットの歴史が変わった
マスメディアはよくこんな報道をしますが、おそらくコミュニケーション型のヒューマノイドロボットしか頭にないのでしょう。ロボット技術の進歩の本筋は、できる作業の正確さやスピードにあるのですから、まさに「木を見て森を見ず」だと思います。

石川 憲二(いしかわけんじ)

ジャーナリスト、作家、編集者 1958年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業。30年以上にわたって企業や研究機関を取材し、技術やビジネスに関する解説記事を書き続けている。扱ってきた領域は、電気・電子、機械、自動車、航空・宇宙、船舶、材料、化学、コンピュータ、通信、システム、ロボット、エネルギー、生産技術、知的財産、経営、人事、マネジメントなど。

公式サイト http://www.ne.jp/asahi/happy/golucky/