協力会社にはプロセス安全について何を求めるべきか【化学業界の安全対策 第4回】
2021/08/03
「化学業界の安全対策」シリーズは化学会社の新入社員など、若手を対象としています。
前回は、「設備の老朽化対策」について解説しました。
今回は、「協力会社」について考えます。
連載の目次
第2回:プロセス安全において変更管理の種類とポイントを押さえる
第4回:協力会社にはプロセス安全について何を求めるべきか
第5回:緊急時対応計画と事故調査
第6回:自然災害リスクをどう考え、備えれば良いのか
一般的にプラントでは、比較的リスクが低い作業や特殊なスキルを必要とする作業を社外に任せています。そのため、協力会社の人たちもプロセス安全を理解し、正しく行動してもらうことが必要不可欠です。このことは、OSHA(米国労働安全衛生管理局)の PSM(プロセス安全管理)でも重視されており、プロセス安全の要素の一つとして取り上げられています。
しかし、協力会社に何を伝えるかは、依頼する作業内容によって異なります。ここでは、常駐で作業をする「定常作業」と、一時的に来て作業をする「非定常作業」に分けて考えます。
定常作業では協力会社にも作業手順書を遵守してもらう
多くのプラントでは、入出荷作業でのフォークリフトの運転や梱包・開梱作業を協力会社の作業員に依存しています。毎日、プラントに来て作業を行うので、プロセス安全の知識も自社社員と同等レベルを有する必要があります。
協力会社が使用する設備であっても、安全な設備を提供し、安全に操作しなければ事故になります。一般に設備を提供するのはプラント側ですが、協力会社が持ち込む道具や工具も安全でなければなりません。特に爆発の危険のある場所は、法律で定められた危険場所または防爆エリアに指定されていますので、着火源になる道工具は持ち込み禁止です。
作業の方法は、プロセス安全に則って作成された作業手順書に従う必要があります。作業手順書の内容は、ハザード(危険性)を把握してリスクを受け入れられるレベルまで下げたものでなければなりません。
プラント側の社員と協力会社の作業員が協力して行う必要のある作業については、誰がどのように行うかを明確にする必要があります。安全確認を相手がしてくれるものと勘違いして起きた事故は少なくありません。

図1 協力会社との信頼関係
非定常作業で元請業者に依頼するときの注意点
特殊な機器のメンテナンスや、ある程度の規模の工事は社内の人材だけではできないので、協力会社に依頼します。工事の場合、規模が大きくなれば元請業者を決めて工事全体の管理をしてもらうことが少なくありません。この場合は、基本的な工事安全に関する教育やプラントでの一般的な安全規則は、元請の安全担当が行うことになるでしょう。元請業者には、工事の安全に法的な義務があるためです。
ただし、プラント側は知らん顔をすることはできません。もし、作業を行う場所のそばに可燃性の物質が置いてあれば、火災になる可能性があります。工事スケジュールを確認して、事前に可燃物を撤去するなど、リスクを下げる対策が必要です。
それでもリスクが残る場合は、「作業安全分析(JSA)」という、安全に作業を行うために綿密な計画を立てた上で、その通りに実行する必要があります。多くのプラントでは、JSAの承認手続きの方法が決められています。

図2 上下作業の危険性
非定常作業には、単発の小さな作業もあります。このような場合は、元請業者を入れずに社員が安全確保の責任を持ちます。協力会社に依頼する仕事の内容とそこに潜むハザードを事前に把握して、作業者が安全に作業を行えるようにする必要があります。この場合も、リスクが高いと判断したら、JSAを作成します。
同じエリアで複数の協力会社が作業をする場合は、JSA上、お互いの安全を確保できるように配慮しなければなりません。この場合、工事を担当・監督する者を決めて、各業者がJSAを守って作業することを監視する必要があります。
次回は、緊急時対応計画と事故調査について解説します。
【書籍紹介】

若い技術者のためのプロセス安全入門
原書名:Introduction to Process Safety for Undergraduates and Engineers
著者名:化学工学会 SCE・Net 安全研究会 訳 発行元:丸善出版
竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net
AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。
