設備の老朽化対策の種類とポイントを押さえる【化学業界の安全対策 第3回】
2021/07/20
「化学業界の安全対策」シリーズは化学会社の新入社員など、若手を対象としています。
今回は、変更管理の中の一つである「設備の老朽化対策」について詳しく説明します。
連載の目次
第2回:プロセス安全において変更管理の種類とポイントを押さえる
第3回:設備の老朽化対策の種類とポイントを押さえる
第4回:協力会社にはプロセス安全について何を求めるべきか
第5回:緊急時対応計画と事故調査
第6回:自然災害リスクをどう考え、備えれば良いのか
前回は、安全管理システムが機能している中での「変更管理」が果たす役割について解説しました。
どのような設備でも、どのようにメンテナンスを行っていても、設備は古くなります。CCPS(化学プロセス安全センター)の老朽化対策に関する書籍では、「老朽化」を「古くなって使用できなくなった」場合と、「技術の進歩により陳腐化した」場合の二つに分けて説明しています。ここでも、それに準じて説明します。
設備の寿命への対応
どのような設備でも古くなり、部品を交換する程度では性能を維持できなくなるときが来ます。場合によっては、それは壊滅的な事故の引き金を引くかもしれません。したがって、プロセス安全では、そうなる前に対策を講じなければなりません。
プラントの中には、様々な設備が存在し、それぞれの寿命は一定ではありません。一般に、設備は、想定された使い方をされた場合の寿命が決められています。しかし、設備は想定された通りに使用されているとは限りません。設置された環境によっても、実際に使用できる期間は変わります。つまり、「設置後何年で自動的に更新時期が決定される」というものではありません。これまでの使われ方と状態から、「あと何年程度使用可能であるか(余寿命)」を評価する必要があります。

図1 装置の余寿命はその履歴と状態から判断する
使用できる状態のことを専門用語では「供用適性(FFS:Fitness for Service)がある」、といいます。具体的には、装置や設備に使用に差し支えるような腐食(金属の錆)、摩耗、疲労(細かいひび等)が生じていないかを確認して、残りの寿命を予測することになります。腐食にはいろいろなタイプがあるので、このような仕事をするには専門知識が必要です。
一例として、専門家も見落とす可能性のある「断熱材下腐食(CUI:Corrosion under Insulation)」について説明します。断熱材下腐食は、断熱材を施した配管などで発生する腐食です。大抵は断熱材の隙間から水が侵入して配管表面に達して、長時間放置されることで配管が腐食するものです。表面が断熱材に覆われているので見つけにくいのですが、わずかなシミや水の垂れた痕などが手掛かりになるので、これらに気付いた時は担当者に連絡をしてください。耐火材下腐食(CUF:Corrosion under fireproofing)も、本質的に同じことです。
設備の陳腐化への対応
設備を更新するもう一つの理由は「陳腐化」です。設備としては使用できるが、新しい技術が出てきて競争力を失った場合です。
パソコンなどは、機械としては使えても、新しい高機能の製品がより安く手に入るようになると、買い替えたほうが得だということがよくあります。プラントでも制御機器の進歩は著しく、使用可能であっても更新した方が、信頼性が高く、他社との競争力があるという理由で更新に踏み切ることが少なくありません。ただ、プラントの機器の場合は、パソコンのように安価では済まないので、慎重な判断が求められています。
陳腐化した設備を更新しない場合の問題は、部品の入手が困難になることです。メーカーはいつまでも古い製品の部品を供給し続けるわけにはいかないので、ある時点で部品の生産を止めてしまいます。このような場合、使用を止めた古い機器から同じ部品を取って再利用することがよくあります。一般に、部品取り、カニバリズム(cannibalism)、共食い整備とよばれる手段です。

図2 カニバリズム(共食い整備)
インフラの老朽化に対して
最後に、インフラストラクチャ―の老朽化について触れます。老朽化というと、装置や設備のことばかりを考えがちですが、設備を支えているコンクリート基礎、工場の建物や倉庫、フォークリフトが通行する工場内の道路、化学物質が含まれる水を処理設備に送る排水溝、工場ユーティリティ用の埋設配管なども老朽化します。これらインフラとよばれるものも、老朽化して壊れれば大きな事故の原因となることがあります。インフラについても、老朽化対策が必要なのです。
次回は、協力会社のプロセス安全について解説します。
【書籍紹介】

若い技術者のためのプロセス安全入門
原書名:Introduction to Process Safety for Undergraduates and Engineers
著者名:化学工学会 SCE・Net 安全研究会 訳 発行元:丸善出版
竹内 亮(Akira Takeuchi)/ SCE・Net
AIChE正会員。化学工学会SCE・Net 安全研究会幹事。早稲田大学理工学部応用化学科卒。米国Drexel University化学工学修士。三井造船株式会社(現 三井E&S)にてプロセス設計、マルチパーパスプラントなど新規事業の開発、デュポン株式会社にて建設プロジェクトの管理、安全コンサルタントなどを経験。埼玉工業大学で、化学工学の非常勤講師を7年間務め、現在は、事故分析・コミュニケーション研究所長としてプロセス安全を中心としたコンサルティング業務に従事。
