火災を防ぐ! 危険物を扱う現場で知っておきたい基本ルール ―消防法【ポイント解説!安全衛生管理と法令遵守 第2回】
2026/01/22製造業の現場経験と自治体での環境行政の実績を持つ筆者がお届けする「ポイント解説!安全衛生管理と法令遵守」。化学工業の設備や物質に関する法令を毎回ひとつ取り上げて解説していきます。第2回のテーマは「消防法」。消防法は、火災の予防や危険物の取り扱いに関するルールを定めた法律です。日常的に燃料や化学薬品を扱う現場では、会社と自分自身を守るためにも、基本的な内容を押さえておくことが欠かせません。本記事では、消防法の中でも危険物に関するルールを中心に、分かりやすく解説します。
目次
本連載で扱う項目
- 第1回 労働安全衛生法
- 第2回 消防法
- 第3回 高圧ガス保安法
- 第4回 毒物及び劇物取締法
- 第5回 化学物質管理
消防法と危険物による事故
消防法は、火災の予防や被害の軽減を目的として、建築物などの防火や消防のために必要な規制を定めた法律です。防火管理者の選任、危険物の貯蔵や取り扱い、消防用設備の設置や点検など、幅広い事項が規定されています。
その中でも、製造業、とりわけ化学関連の企業の現場で日常業務と深く関わるのが「危険物」に関する規定です。危険物を原因とする火災や流出事故は近年も増加傾向にあります(図1)。発生原因を見ると、火災事故では操作確認の不足や設備の維持管理不良が多く、流出事故では腐食や疲労などの劣化が多いとされています。

図1:危険物施設における火災事故・流出事故の発生件数の推移。震度6弱以上(1996年9月以前は震度6以上)の地震により発生した件数を除外
(出所:消防庁「危険物に係る事故事例(令和5年)火災編」を元にChematels編集部作成)
危険物は日常的な作業の中で扱われることも多く、知らないうちにリスクを抱えている場合もあります。危険物の性質や基本的なルールを理解することは、法令遵守だけでなく、現場での事故防止にも欠かせません。
六つの分類…危険物の性質と品目例を知ろう
消防法における危険物とは、火災の発生や拡大の危険性が高く、消火が容易ではない性質をもつ物品です。火災の危険性に着目して区分されたものであり、他の法律で規定される有害物質や毒性物質とは必ずしも一致するわけではありません。また、消防法上の危険物は固体と液体が対象で、水素やプロパンガスなどのガスは含まれません。これらの可燃性ガスは、高圧ガス保安法などで規制されています。
消防法では、危険物を物理・化学的性質に基づき第一類から第六類までに分類しています。可燃物を酸化し燃焼を促進するもの、引火しやすいもの、自然発火するもの、水と激しく反応するものなど、類ごとに性質が異なります(図2)。具体的な品名や性状は、消防法第二条別表第一や「危険物の規制に関する政令」に規定されています。
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図2:危険物の種類
(出所:消防庁「『危険物」とは?」ならびに「消防法別表第一」を元にChematels編集部作成)
身近な品目の例では、第四類における第一石油類にガソリン、第二石油類に灯油、第三石油類に重油などがあります。
化学関連の企業では、多種多様な化学薬品や原料を扱う場面が多く、これらが危険物に該当するかどうかを事前に判断しておくことが重要です。自社で扱う物質がどの類に該当するのかを把握し、その性質と危険性を理解することが、消防法を実務に生かす第一歩といえます。
「指定数量」以上の危険物を扱う所は「危険物施設」…多面的な規制あり
消防法では、危険物による火災や事故を防ぐため、危険物に対してさまざまな規制を設けています。
「指定数量」以上の危険物を製造・貯蔵・取り扱いする設備や場所は、「製造所」「貯蔵所」「取扱所」に区分され、これらを総称して「危険物施設」と呼びます(図3)。
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図3:危険物施設の区分
(出所:製品評価技術基盤機構(NITE)ウェブサイトにて消防庁危険物保安室2024年12月13日公表「消防法における化学物質管理」を参考にChematels編集部作成)
危険物施設には、設置許可に加え、構造や維持管理を含む技術上の基準への適合など、ハード面からソフト面まで多くの規制が課されます(図4)。
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図4:指定数量以上の危険物にかかる規制
(出所:消防庁「危険物規制の概要」を参考にChematels編集部作成)
規制を理解する上で重要なのが「指定数量」です。指定数量とは、危険物の種類ごとに定められた基準量で、相対的な危険性の高さを判断する目安となります。危険性が高いとされる物質ほど、指定数量は低く設定されています。
例えば、第四類の非水溶性液体の場合、ガソリンの指定数量は200L、灯油や軽油は1000L、重油は2000Lと定められています。指定数量の何倍に当たる量を扱うかによって適用される規制が変わるため、自社で扱う量と指定数量の関係を把握しておくことが重要です。具体的な数値は、「危険物の規制に関する政令」第一条の十一「別表第三」に規定されています。
また、指定数量に満たない場合でも、危険物の「運搬」には技術上の基準が定められているほか、市町村条例でも規定が設けられています。量の多少に関わらず、関係する規制を確認しておく必要があります。
危険物取扱者の役割と、現場全体で理解しておきたいこと
指定数量以上の危険物を扱う場合には、その種類に応じた「危険物取扱者」の資格、または資格者の立ち会いが必要です。危険物取扱者は国家資格であり、取り扱える危険物の範囲に応じて甲種・乙種・丙種に区分されています(図5)。このうち丙種は業務範囲が限定されており、無資格者が危険物を取り扱う際の立ち会い業務の権限を有していません。
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図5:危険物取扱者の免状の種類と権限
現場で危険物を扱う際には、どの危険物にどの資格者が関与する必要があるのかを確認しておくことが重要です。また、実務を担う危険物取扱者には定期的な保安講習の受講が義務付けられており、法令や技術基準、事故防止に関する知識を更新する仕組みが設けられています。
危険物による事故には、発生すると被害が大きくなりやすいという特徴があります。危険物取扱者は重要な役割を担いますが、資格者の関与だけで安全が確保されるわけではありません。現場で危険物に関わる一人一人が、その性質や取り扱い上の注意点を共有しておくことが、火災や流出事故の防止につながります。
次回の第3回では「高圧ガス保安法」についてポイントを解説する予定です。
※ 本記事は、厳密さよりも分かりやすさを重視して情報提供することを目的としています。実際の消防法の運用については、法令の原文を確認の上、必要に応じて行政へ問い合わせてください。また、法改正などにより内容が変更される場合がありますので、総務省消防庁のホームページなどで最新情報をご確認ください。
参考文献
- 消防法(e-Gov)
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 - 危険物の規制に関する政令(e-Gov)
https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306 - 消防庁「危険物に係る事故事例(令和5年)火災編」
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/R5kikentoukei02.pdf - 製品評価技術基盤機構(NITE)ウェブサイト 消防庁危険物保安室 2024年12月13日公表「消防法における化学物質管理」
https://www.nite.go.jp/data/000156190.pdf - 消防庁「危険物規制の概要」
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento090_08_sanko_01_01.pdf
和地慎太郎(わちしんたろう)
ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。
