VTO、OEE、COG…プロセス選定の鍵となる指標あり【バッチ式と連続式がわかるプロセスの話 第4回】

2024/06/20
Image

目次

Chematelsの連載「バッチ式と連続式がわかるプロセスの話」をお届けしています。今回はプロセス選定における指標に着目します。バッチ式にするか。連続式にするか。あるいは中間のハイブリット式にするか……。最適なプロセスを選定するには、総合的な性能比較と経済性の比較、合わせて生産性の比較を合理的に進めることが重要です。

概念確立、設計構想、プロセス比較・選定と進めていく

まず開発段階で、実現可能なプロセスの概念を確立します。次に、設計構想を、製品収率、生産速度、エネルギー効率、制御システムなどの重要パラメーターの観点から立案し、総設備費を算出します。さらに、投資性を比較するため、設備費やシステム費用などの総投資額、また製品原価や労務費などのコストデータを把握して、正味現在価値(NPV:Net Present Value)や投資回収期間を計算し、最終的にどのプロセスを選定するか総合判断します。

他に、要員数、商業生産開始までの期間、立地条件、全体スペースも、投資判断上の重要な制限条件となります。

以上のすべてを検討することで、優劣を定量的に比較し、問題のない選定を行うことができます。以下で、プロセスの選定に関連する指標類を紹介します。

バッチプロセスの生産効率を示すVTO指標

化学プロセスの生産効率を示す指標の一つに、「体積-時間出力」 (VTO:Volume-Time Output)があります。主にバッチプロセスに適用されます。

VTOは、次の式の通り、「目的生成物の収量」(kg)あたりの「対象となるすべての反応装置の内容積」(m3)と「時間」(h)の積として表されます。

Image

VTOが高いということは、収量の割に設備容積や時間が費やされてしまっていることになります。材料原価や収率に関係なくプロセス全体に悪影響を及ぼす可能性があり、工程の改善ポイントを特定すべき状況にあるといえます。

製薬世界大手のベーリンガーインゲルハイム社は、特定プロセスにおいて、「VTOは1未満」を目標としています。

必要な合成変換コストを、反応器の運用コストと使用可能な容量を考慮して、VTOから計算することができます。

設備の使用効率を示すOEE指標

総合設備効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)は設備の使用効率の度合いを表す指標です。次の式で表します。

Image

ここで、「時間稼働率」は、設備が実際に稼働している時間の割合を指し、計画された稼働時間に対する実際の稼働時間の比率を表しています。

「性能稼働率」は、設備が実際にどれだけの速度で稼働しているかを示し、設備が理論上の最大速度で稼働しているかどうかを反映しています。

また「良品率」は、生産された製品のうち、品質基準に適合し、無駄なく生産された製品の割合です。

バッチ生産における典型的なOEEの値は約30%であり、優れたプロセスでは70%程度です。個々の工程の効率を掛け算するため、効率の低い項目があると全体で低くなります。

連続プロセスでは、連続反応や単位操作の理論的な収率が維持されれば、一般的に90%程度となります。

経済性を評価するためのCOGS・SOGM指標

プロセスの経済性を評価するときの指標として、一般に、「製品原価」(COG:Cost Of Goods)、「正味現在価値」(NPV:Net Present Value)や「投資回収期間」が用いられます。なお、投資回収期間とは、設定した期間内に投資した資金を回収できるかどうかを検討する投資判断方法の一つです。
従来はおおむね3〜5年とされていましたが、近年は経済環境の厳しさから2年程度とされることが多くなっています。

製品原価(COG)には、「売上原価」(COGS: Cost of Goods Sold)と「製造原価」(COGM: Cost of Goods Manufactured)があります。売上原価(COGS)は期中に販売した製品の仕入れや製造にかかった費用です。また、製造原価(COGM)は、製品を生産するのに必要な原材料費、人件費、その他諸経費の総合計です。

COGSが低~中程度であれば、バッチ生産をするのが望ましいとされています。COGSが高い場合、バッチプロセスと連続プロセスの優先順位は、製品需要の変化に応じて変わります。このとき原料供給量が中~大だと、連続プロセスがより優位となり、中程度の原価でも競争力ある選択肢となります。

製薬を含む有機合成化学品は、一般にCOGSもCOGMも高価な状況にあります。バッチ式から連続式への変更でCOGMが大幅に削減され、COGSが数十%増加したという報告もあります。

重複法でバッチプロセスの生産性を向上

バッチプロセスでは、各工程が断続的に進むため、移送や機器洗浄などの期間の存在が、生産性を低下させます。これをカバーする方法として、下に示す「重複法」または「同期法」と呼ばれるものがあります。

重複法(同期法)は、装置間の隙間のロスを生じさせずに工程を進める方法といえます。

Image

図1: 装置間の重複(同期)操作
⁠(出所:ジャパン
バッチフォーラム「S88入門 バッチシステムをよりよくデザインするために」を参考に作成)

重複(同期)法を採らない場合と、採った場合の差異を図で示します。

Image

図2:重複(同期)法の非採用・採用での差異。両方プロセスとも移行期間はゼロとする

図の赤枠内の製品数の差異に注目すると、重複(同期)法の効率の高さが分かると思います。

次回、第5回目「『フロー合成』は有機化学産業の革新技術」では、バッチプロセスから連続プロセスへの転換において、実施例と採用されている最新の技術関係を紹介します。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。