工程は「一度ずつ」か「絶え間なく」かで大きく変わる【バッチ式と連続式がわかるプロセスの話 第1回】

2024/05/09
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目次

連載の目次

  • 第1回 工程は「一度ずつ」か「絶え間なく」かで大きく変わる
  • 第2回 「連続」へのシフト進むも「バッチ」に品質管理の利点あり
  • 第3回 反応から熱交換まで、方式が違えば効率も違う
  • 第4回 VTO、OEE、COG…プロセス選定の鍵となる指標あり
  • 第5回 「フロー合成」は有機化学産業の革新技術

あらゆる産業の生産プロセスにおいて「バッチプロセス」もしくは「連続プロセス」が用いられています。皆さんも「バッチ法方式」や「連続方式」などの言葉を使われているか、聞かれるかしたことがあるのではないでしょうか。今回からお届けするChematelsの連載「バッチ式と連続式がわかるプロセスの話」では、有機合成化学の分野におけるこれらのプロセスの基礎知識について、押さえておきたいところを中心にお伝えしていきます。

有機合成化学品の製造に「バッチプロセス」と「連続プロセス」

電子材料・医薬品・香料・農薬といった、有機合成により製造される機能性化学品は、特別な物性や複雑な化学構造を持ち、その世界市場規模は2015年の時点で約16兆円とされ、2030年には約36兆円となり、さらに、機能性化学品をもとに作られる機能性材料の市場規模は約169兆円に達すると予想されています。これほどの規模となると、生産プロセスのあり方が企業の収益性や工場の生産性に直結し、また製品の品質保証に大きく影響します。適正な生産プロセスの選定が重要となります。

すべての生産プロセスは、原料を取り入れ、それを加工して最終製品を生産するものですが、このプロセスは基本的に「バッチプロセス」と「連続プロセス」に分けられます。また、両方を組み合わせた「セミバッチプロセス」や「半連続プロセス」がありますが、これらは記事の後半で解説します。なお、有機合成プロセスの場合、「混合」「反応」「精製」「分離」などの化学工学的な単位操作の組み合わせでプロセスは成り立ちます。

バッチプロセスは断続的で少量多品種生産向け

バッチプロセスは、区切られた生産サイクルごとに原材料を一括で取り扱い、生成品をその回ごとに後続へ移して、最終的に一括で製品を得る方法です。「回分(かいぶん)プロセス」ともいわれます。

バッチプロセスでは運転の開始・停止と洗浄を繰り返すので、「断続的な非定常運転」がベースとなります。よって多くの場合、人が介在します。

また、同じ装置で、複数の単位操作ができる多目的仕様となるため、複雑な構造をもつ化合物の合成が可能です。この特徴から、主に食品・医薬品・化粧品・有機合成化学品などの高付加価値・少量多品種の生産に多く用いられています。しかしながら、最近では、主に採算性の維持向上と廃棄物の削減の点から連続プロセスへの転換が図られています。

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図1:バッチプロセスと連続プロセス。原料や製品の保管工程は割愛

(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)材料・ナノテクノロジー部 2021年9月14日公表「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発 中間評価」を参照に作成)

連続プロセスは常時稼働で大量生産向け

連続プロセスは、原料の供給と製品の取り出しを一定の操作条件で連続的に行う方法です。原料は多種ですが、製品は一般的に1種類であり、多くの装置は専用仕様となります。

運転を開始すると、1日24時間にわたり稼働し、長期間停止しません。また、中央制御室での監視下での定常運転がベースとなります。

装置の洗浄やメンテナンスは、1年もしくは数年に1回程度、長期間停止して行われます。製品の品質や生産効率が高いため、主に製品単価の安い石油化学製品などの大量生産に用いられています。

「バッチ」と「連続」を組み合わせたプロセスも

「セミバッチプロセス」と「半連続プロセス」は、どちらもバッチプロセスと連続プロセスの良い点を組み合わせた形態であり、「ハイブリットプロセス」ともいいます。

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図2:ハイブリッドプロセス。原料や製品の保管工程は割愛
⁠(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)材料・ナノテクノロジー部 2021年9月14日公表「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発 中間評価」を参照に独自作成)

「セミバッチプロセス」は、バッチプロセスを基本とし、原料の連続的な追加と加工工程を含みます。「半連続プロセス」は、連続プロセスを基本としながら、バッチで原料の投入や製品の排出を行います。

有機合成プロセスでは、これらのようにバッチ運転と連続運転を組み合わせて使用するのが一般的です。

次回は、「『連続』へのシフト進むも『バッチ』に品質管理の利点あり」の予定です。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。