反応から熱交換まで、方式が違えば効率も違う【バッチ式と連続式がわかるプロセスの話 第3回】

2024/06/06
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連載の目次

Chematelsの連載「バッチ式と連続式がわかるプロセスの話」をお届けしています。前回の第2回「『連続』へのシフト進むも『バッチ』に品質管理の利点あり」で、プロセスの選定の仕方についてお話ししたとおりですが、より具体的には主要な設備・装置を詳しく比較することが重要となります。今回は、設備・装置を詳しく比較しながら説明します。

台車を使うバッチプロセス、配管を使う連続プロセス

バッチプロセスと連続プロセス、また両方を組み合わせたハイブリッドプロセスの参考イメージを以下に示します。

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図1:バッチ・連続・ハイブリッド各プロセス

生成物の移動は、バッチプロセスでは、台車などを使うもので間欠運転になります。連続プロセスのほうは配管などを使うもので原則的に連続運転になります。また、廃棄物や副生成物の排出は、バッチプロセスでは各工程から出され、連続プロセスでは最後に一括で出されます。

以下で、主要機器である反応器、分離器、蒸留器、混合/混錬器、乾燥器、熱交換器におけるバッチプロセスと連続プロセスの違いを見ていきます。

反応率の変化のしかたに違い ―― 反応器

反応器は、材料の反応を起こす機器です。反応器には、「バッチ式反応器」(BR:Batch Reactor)、「連続式反応器」(CSTR:Continuous Stirred Tank Reactor)、「プラグフロー型反応器」(PFR:Plug Flow Reactor)、そしてCSTRを複数連結した「多段連続式反応器」の4種類があります。

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図2:反応器の仕組みの比較

反応を1次式とすると、バッチ式反応器(BR)での反応率XAは、「XA=1-exp(-kt)」で表され、時間とともに変化します。kは反応率。tは反応時間です。

連続式反応器(CSTR)による連続反応の場合、τを平均滞留(反応)時間とすれば、反応率XAは、「XA=τk /(1+τk)」となります。やはり時間とともに変化しますが、BRとは変化に違いがあります。

プラグフロー型反応器(PFR)における反応率XAは、バッチ式の反応時間tを滞留時間τに置き換えたもので、「XA=1-exp(-kτ)」で表されます。

ここでCSTRの容量をVとし、流量をFとすると、「τ=V/F」なので、CSTRとPFRの反応率は、kV/Fに依存します。BRの反応率は、ktに依存します。同じXAの場合、平均滞留(反応)時間τは反応時間tに比べて大幅に長くなります。

しかし、バッチ式反応器(BR)には、第2回の「『連続』へのシフト進むも『バッチ』に品質管理の利点あり」でお伝えしたように、反応以外の時間があるため、連続式反応器(CSTR)が長い反応時間を要しても、1サイクル時間当たりの生産量は逆転し、連続式に有利性があるといえます。しかも、連続式反応器(CSTR)では触媒などを連続的に注入できるため、反応率が向上し、反応時間の大きな短縮が可能です。

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図3:反応器の種類ごとの容量・反応の差異

バッチ式はバスケット型、連続式はデカンター型 ―― 分離器

分離器は、反応器で得られた反応物を分離するための機器です。分離器には実にさまざまな種類がありますが、工業用には、「バッチ式遠心ろ過型(バスケット型)分離器」と連続式の「連続式遠心沈降型デカンター」が主に用いられています。

バッチ式遠心ろ過型分離器では、原料を一括で入れて、一定のろ過時間後に残存物をバッチで排出します。一方、連続式の遠心沈降型デカンターでは、原料を連続で入れて、比重の大小で連続分離し、それぞれの排出口から排出します。

バッチ式ではろ過に布や金属フィルターを用いるため、コンタミネーションや破れによる汚染のおそれがあります。また、連続化しようとする場合、複数機で排出待ちをカバーする必要があります。一方、連続式の遠心沈降型デカンターは、比重差の小さい成分構成には不向きです。

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図4:分離器の仕組みの比較

バッチ式では残留物除去を念入りに ―― 蒸留器

蒸留器は、加熱・冷却によって混合物中の成分を沸点の違いから分離する機器です。蒸留器にもバッチ式と連続式があります。

バッチ蒸留では、単一の蒸留塔を使用し、分離します。複数の異なる成分を分離できるため、柔軟性があり、操作は簡単で、化学物質の純度が高くなります。しかし、バッチ蒸留には、以前の蒸留で扱った成分が微量に残っている可能性があるため、汚染の心配もあります。

連続蒸留は、待機時間なしで連続的に分離する方法です。高い効率性があるといえます。一方、蒸留の完了まで操作を中断できず、また混合物を変更できず、柔軟性に欠けます。

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図5:蒸留装置の仕組みの比較

連続式ではスクリューを使用 ―― 混合/混錬器

混合器は、異なる材料を混ぜ合わせるための機器をいいます。また、混練器は混ぜ合わせることに加え、潰す、練るなどの工程を担う機器です。高分子などの混合/混練器には、バッチ式と連続式があり、一般的に、バッチ式には「バンバリー」「ニーダー」「ローラー」などがあります。一方、連続式には一軸、二軸さらには多軸式のスクリューを用いた混合/混練器があります。

経済性の点では連続式が有利ですが、混錬の精度の点ではバッチ式が優位にあります。製品の物性保証と混練物の物性を考慮して選定すべきです。

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図6:混錬器の仕組みの比較

材料をウェットからドライへ、多様な種類あり ―― 乾燥器

乾燥器は文字通り材料を乾燥させるための機器です。原料の特性に応じて、さまざまな種類の乾燥器があります。最終製品が乾燥した粉体である場合、分離・ろ過と乾燥はセットの工程となります。ろ過工程で分離器などを用いて脱水・脱液したウェットケーキ状態にし、乾燥工程でさらに乾燥させてドライケーキ状態にします。

この乾燥機にもバッチ式と連続式があります。

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図 7:乾燥機の仕組みの比較

効率的な熱移動で温度を変える ―― 熱交換器

熱交換器とは、低温(または高温)となっている材料を高温(または低温)にするといった、効率的に熱を移動させるための機器を指します。ここでは単純な温水製造におけるバッチ式と連続式での熱交換器の違いを見ていきます。

一定容量の水を一定時間で一定の温度差まで加熱するのに必要な熱量は、熱収支を考えればバッチ式でも連続式でも同じです。バッチ式の熱交換器では、タンクの水が一定時間後に目標温度まで昇温することになり、蒸気と水温との温度差は水温の上昇に沿って変化しつづけます。一方、連続式の熱交換器では、一定の流量の水を目標温度まで加熱しつづけるので、蒸気温度と水の温度差は常に一定です。

装置として、バッチ式には蒸気流量にピークがあり、その値のため装置仕様に差が出ます。 

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図8:熱交換器の仕組みと温度カーブの比較

反応と蒸留を一度に行う装置も

最後に、反応・蒸留装置について解説します。反応・蒸留装置は、「反応」と「蒸留」を複合単位操作として一度に行うための装置です。反応生成物を反応場から分離することで反応率の向上や、反応熱の有効利用などの利点を有しています。バッチプロセスから連続プロセスへ移行して強化する場合のキー技術の一つです。

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図9:反応・蒸留装置の仕組み

次回は「VTO、OEE、COG…プロセス選定の鍵となる指標あり」の予定です。ご期待ください。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。