処分に困っていた残渣を、価値を生む高機能材料に!―ジカンテクノ【東京サスマ展レポート2023 第3回】
2024/01/302023年10月29日~31日、材料技術および加工機械・技術の展示会「[東京]高機能素材Week」が幕張メッセ(千葉市)で開かれました。本展示会では、サステナブルマテリアルに特化した商談展「サステナブル マテリアル展(東京展)」(東京サスマ展)が開催。今回は、東京サスマ展に出展した化学系企業の中から、Chematels編集部が注目展示をピックアップしました。最終回となる第3回は、設立2016年と歴史は短いながら農業残渣を原材料とするバイオマス由来素材の開発で注目を集めているジカンテクノの展示を紹介します。
もみ殻からシリカ、多分野で引き合いあり

図1:ジカンテクノのブースで製品を案内する協力会社・吉田酒造の吉田由香里社長
(筆者撮影)
「もみ殻からシリカ!」とキャッチーなフレーズで社員たちが声がけして来場者を引き付けていたジカンテクノは、農業残渣を原材料としたバイオマス由来素材開発に取り組む企業です。現在、主に活用しているのがもみ殻ですが、他に大麦殻、カカオ殻、酒粕なども活用可能です。これらは植物由来なので二酸化炭素(CO2)が吸収される上、農業残渣を原料にしていることからCO2排出量を実質ゼロと計算できるということです。

図2:もみ殻からつくった非晶質シリカ
(筆者撮影)
今回、同社がアピールしていたのが、もみ殻を原料とした非晶質シリカです。コメを出荷する際には大量のもみ殻が排出されますが、あまりに大量過ぎて廃棄にコストがかかる上、焼却時に異臭や煙が出ることから焼却処理が禁止されている自治体もあるとのこと。このもみ殻から、工業用途などで幅広く使われているシリカ(二酸化ケイ素)をつくるというわけです。毎年、もみ殻の処分に悩まされるコメ農家にとって朗報といえます。
環境に配慮している点はもちろん、安全性が高い非結晶性であることも大きな需要を呼ぶ一要因となっています。シリカには結晶質と非晶質の2種類がありますが、結晶質シリカは政令の改正により「がん原性物質」に指定され、2023年4月以降、事業者は作業記録を30年にわたり保管しなければならないなど取り扱いが厳しくなりました。そのため、指定対象となっていない非晶質シリカに対する企業の関心が高まっています。同社によると、もみ殻を原料とした非晶質シリカについては、コンクリート向けの他、工業用品、化粧品やサプリメント、医薬品など、幅広い分野で多くの引き合いがあるそう。
従来の手法でシリカを生成する場合、複数の工程を経なければなりませんでしたが、同社の独自技術により1工程で可能となりました。原料調達が大量にできることに加え、工程のシンプルさも量産時のコストダウンにつながります。量産時のコストが課題となりがちな一般的なバイオマス素材とは一線を画します。むしろ現在は需要に生産能力が追い付いていない状況であり、生産能力の拡大が課題となっています。日本有数のコメどころ富山県内に新工場を建設中で、2024年中の竣工・稼働開始を目指しています。
農業残渣由来のカーボンやグラフェンも製品化

図3:バイオカーボン。下は塗料にして塗布した発熱シート
(画像提供:ジカンテクノ)
ジカンテクノは、農業残渣からバイオカーボンやバイオグラフェンを生成する技術ももっています。展示では、農業残差から精製したバイオカーボンを用いたモーターケースを披露。金属製のモーターケースや磁石性の部材を電気抵抗が高いバイオカーボンで作成することで30%の軽量化に成功したということです。
また、同社が開発したもみ殻由来のバイオグラフェンによる低電力発熱体は、自動車のシートなどに採用されているとのことです。従来のニクロム線での発熱体の代替候補となります。もみ殻以外に、大麦由来のバイオグラフェンの生成にも成功しているとのこと。
電気自動車の需要がますます広がり、軽量化と剛性を両立した部品設計の重要性も増すであろう今後、同社のバイオカーボンやバイオグラフェンの技術の需要はさらに拡大すると見られます。さらなる生産能力増強の必要がでてきそうです。
小林 由美(こばやしゆみ)
ライター/編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、IT系メディアに入社。技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。
