既存エンプラに勝る物性のバイオプラ―三菱ケミカルグループ【東京サスマ展レポート2023 第1回】

2023/12/05
Image

2023年10月29日~31日、材料技術および加工機械・技術の展示会「[東京]高機能素材Week」が幕張メッセ(千葉市)で開かれました。本展示会では、サステナブルマテリアルに特化した商談展「サステナブル マテリアル展(東京展)」(東京サスマ展)が開催。今回は、東京サスマ展に出展した化学系企業の中から、Chematels編集部が注目展示をピックアップしました。第1回は、三菱ケミカルグループのブースから届けします。従来のエンジニアリングプラスチックと比べても遜色ない性能をもつバイオプラスチックなど複数種を展示しています。

広範な事業領域とサステナブル戦略をアピール

Image

図1:三菱ケミカルグループの展示ブース
⁠(編集部撮影)

三菱ケミカルグループは、規模の大きいブースで多岐にわたる展示を行いました。広範な事業領域にわたって基盤技術や独自技術をアピールする狙いが伝わります。今回は、その中でも要注目の製品3つを紹介します。

サステナブル時代に脚光浴びるバイオポリカーボネート

まず紹介するのは、バイオポリカーボネート(バイオPC:Bio-polycarbonate)とも呼ばれている「DURABIO(デュラビオ)」です。この製品は植物由来のイソソルバイド(イソソルビド)を主原料とし、一部に石油由来の原料を共重合させています。DURABIOバイオマス度はグレードによりますが、40~60%ほど。なお、生分解性はなく、耐久性に優れた樹脂です。

Image

図2:DURABIOで製作した筐体
⁠(筆者撮影)

石油由来のPCは耐衝撃性や耐熱性、難燃性に優れる一方、耐候性にさほど優れず傷つきやすいという欠点がありました。DURABIOは、この欠点をカバーしてバランスが取れた材料特性になっているとのことです。

Image

図3:DURABIOの特徴比較
⁠(画像提供:三菱ケミカルグループ)

DURABIOは、透明性や光学特性にも優れ、高級化粧品の透明容器などでも使用されています。また、顔料を配合するだけでつややかで光沢のある表面を作ることができます。さらに、表面が硬くて擦り傷が付きにくい特長があるため、塗装・コーティング工程が不要となり、製造時に塗料から発生する揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)を低減することができます。これらの特性を活かし、自動車の内外装意匠部品への採用が進んでいます。

食品容器などで「循環」に貢献する生分解性プラスチック

続いて紹介する「BioPBS」は、名前に「バイオ」を冠するとおり、原料の一部が植物由来のポリブチレンサクシネート(PBS:Polybutylene Succinate)です。

Image

図4:(手前)BioPBS製のパッケージ。(奥)BioPBSをコーティングした紙コップ。循環型システム実現に向けた実証実験に使われた
⁠(筆者撮影)

ポリブチレンサクシネート(PBS)は生分解性プラスチックの一種であり、自然界の土中等に存在する微生物により水と二酸化炭素に分解されます。また、生分解性樹脂でありながら高い耐熱性を備えます。

生分解性プラスチックではポリ乳酸(PLA:Polylactic Acid)もよく知られていますが、BioPBSはそれよりも成形性や加工性に優れているとのこと。かつ、PLAや繊維などとの相溶性も高いという特徴をもつため、複合材の材料としても採用されています。分野的には、食品接触に関する基本的な認証を得ていることから、食品包材などでよく採用されています。

また、レジ袋でもBioPBSを採用した製品がありますが、最近は海中でも分解可能なグレードが使用されています。

土壌や海中で分解可能であるにもかかわらず、普通に廃棄・焼却されてしまうのであれば、その真価を発揮できません。そこで三菱ケミカルグループは、BioPBSの活用意義を消費者に体験を通じて実感してもらおうと、2021年8月、サッカーJリーグのギラヴァンツ北九州や複数の企業、教育機関と連携し、BioPBSを使用した紙コップを起点とする循環型システム実現に向けた共同実証実験を行いました。

Image

図5:BioPBSを使用した実証実験。紙コップを起点に、コンポストによる循環型システムの実現を目指す
⁠(画像提供:三菱ケミカルグループ)

まず、スタジアムで開催されるサッカーイベントでBioPBSのコーティングを施した紙コップを来場者に使用してもらい、使用済みのものを回収。さらにそれを、コンポスト設備で食品残渣物などと一緒に堆肥化。堆肥の一部を地元の高校での野菜栽培に活用し、さらに収穫された野菜をスタジアムで販売するというサイクルを実現しました。

伸縮繊維から人工皮革材料まで多用途な植物由来ポリオール

最後に紹介するのは、「BioPTMG」。やはり「バイオ」を冠した、原料が植物由来の製品です。

Image

図6:BioPTMG製の化粧パフ
⁠(筆者撮影)

PTMGは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(Poly Tetramethylene ether Glycol)の略であり、ウレタンやポリエステルの原料などになるポリオールです。

BioPTMGは、三菱ケミカルが2021年に開発した植物由来のPTMGです。ポリウレタン製品やポリエステル製品に対して柔軟性や耐久性、高反発性を付与できます。同製品のバイオ化率は92%以上であり、石油由来のPTMGと比べ40%程度の温室効果ガス削減効果が期待でき、かつ石油化学由来品と同等の特性をもち合わせています。

PTMGの主用途としてスパンデックスと呼ばれる弾性繊維があげられますが、これはストッキングや水着といった伸縮性が必要な衣類などでよく使用される繊維です。日清紡テキスタイルが「バイオマスモビロン」の製品名で、業界でいち早く植物由来スパンデックスを商品化していますが、そこにBioPTMGが採用されています。ほかにスポンジパフなどの化粧用品、また、合成皮革や熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU:Thermoplastic Polyurethane)などの素材にも採用されており、用途が拡大しているそうです。

第2回では、同じくサスマ展に出展する企業の展示をレポートします。ご期待ください。

小林 由美(こばやしゆみ)

ライター/編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、IT系メディアに入社。技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。