バイオ化学品でサステナブル社会に貢献―楠本化成/広栄化学【関西サスマ展レポート2023 第2回】

2023/08/03
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2023年5月17日~19日、材料技術および加工機械・技術の展示会「[関西]高機能素材Week」がインテックス大阪(大阪市)で開催されました。この中で「関西サステナブルマテリアル展」(関西サスマ展)に出展した企業のうち、「環境配慮」や「バイオマス」の取り組みに力を入れている化学系企業をChematels編集長・松川が注目したピックアップしています。今回は、楠本化成と広栄化学の展示内容と取り組みを紹介します。

楠本化成、高機能添加剤ブランドを展開

楠本化成は、添加剤や高機能添加剤、合成樹脂などを製造・販売する企業です。同社は高機能添加剤ブランド「ディスパロン」の新製品を展示しました。

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図1:楠本化成の展示ブース(筆者撮影、以下も)

ディスパロンは、楠本化成が1956年から製造・販売している製品です。当初は、塗料用添加剤としての用途がメインでした。

現在は、重防食塗装、印刷、接着、シーリングなどの材料としてさまざまな場面で使用されています。添加剤としての機能に、ダレ防止・沈降防止のための「チクソトロピック剤」、色分かれ防止・湿潤分散のための「分散剤」、消泡・レベリング・ハジキ防止・スリップのための「表面調整剤」、密着性促進・導電性向上・樹脂などの皮張り防止のための「密着付与剤、静電助剤、皮張り防止剤」などがあります。

ひまし油を利用した分散剤の新製品を初公開

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図2: BALシリーズの展示。容器は展示用

同社が展示していたディスパロンブランドの新製品は、トウゴマの種から抽出したひまし油を利用した分散剤「BAL(Botanical Additives for Life)」シリーズです。このブランドでは、「子供たちの明るい未来をバイオベース添加剤で応援します」とのキャッチコピーを掲げています。生活のあらゆるところで使用されている添加剤から、安心・安全な未来をつくり始めようという思いが込められています。

ひまし油から製造する添加剤自体は、同社がディスパロンを販売開始した頃から開発・製造に取り組んできたものです。非可食で食糧と競合しない原料という理由で、ひまし油を使用しています。BALについては、顔料に用いる分散剤として開発しました。インキ業界で大豆インキなどバイオマスインキが普及してきた中、「インクと混ぜる分散剤もバイオベースのものに」という要望を顧客から受けるようになり開発に着手。今回、すでにリリース済みの「BAL-D310」と「BAL-D312」と合わせて、2023年10月に発売予定の「BAL-Tseries」を初公開しました。

BALシリーズでは、バイオベース度を徹底的に高めるため溶剤をカット。無溶剤としながら、「混ざりづらい」など問題が生じないよう使い勝手を向上させています。BAL-D310はバイオベース度90%、バイオマス樹脂の分散剤として最適といいます。また、BAL-D312は同81%で、より幅広い塗料に使用できるということです。

さらに、BAL-Tseriesはバイオベース度が100%であり、ダレ止めや増粘などの特性を付与できるチクソトロピック剤としての用途を想定しています。バイオマス度を高めようとすると分散剤としての機能が低下しやすいため、幾度もの実験を繰り返しながらベストバランスを地道に探ったといいます。

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図3:分散剤の利用イメージ

バイオマス製品というと一般的に、通常の製品よりコストアップになることが多いですが、BALについては従来品相当の値段に据え置いているとのことです。

今後も顧客の要望に応じて、BALの技術を接着剤や塗料の添加剤にも応用していく予定。また国内と海外とでバイオマス度の判定基準が異なるため、海外展開向けの製品開発も今後検討していくそうです。

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広栄化学、幅広い用途のバイオ由来ポリアミンを製品化

今回紹介するもう1社は、広栄化学です。同社は、住友化学グループの化学メーカーです。サスマ展では、セルロース溶解イオン液体、イソシアネート硬化システム、エポキシ硬化剤、アミンなどの各種製品を展示しました。

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図4:広栄化学の展示ブース

同社が開発したバイオ由来ポリアミン「KOLFAMINE-B」は、バイオ由来ポリオールから合成したものです。バイオ由来ポリアミンのうち「ポリエーテルジアミン類」の用途の例としてはエポキシ硬化剤があり、硬化物に柔軟性を付与できるとのこと。また、ナイロンなどプラスチックの原料としても利用可能です。バイオマス由来材料の合成割合を指すバイオ化率は80~98%で、タイプにより異なっています。ほかの用途としてコーティング剤や接着剤なども考えられ、幅広い用途が想定できるそう。

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図5:バイオ由来ポリアミンなどの展示パネル

また、「トリアミン類」でもエポキシ硬化剤としての用途が想定されていますが、こちらは硬化物の剛性を高めることができ、架橋剤としても使用可能であるということです。トリアミン類には、グリセリンとトリメチロールプロパン(TMP:Trimethylolpropane)の二つのタイプがあります。バイオ化率についてはグリセリンが20~30%、TMP が15~25%となっています。

なお、バイオ由来ポリアミンの製造には特殊な高圧設備と、広栄化学独自の合成技術が活用されています。そのため、国内で製造できるメーカーは非常に少ないとのことです。

再生セルロース繊維の紡糸プロセスを共同研究

広栄化学はサスマ展で、セルロース溶解イオン液体「KOELIQ-SL01」を紹介。量産化プロセスのめどがついているというKOELIQ-SL01の技術を活用すべく、再生セルロース繊維の紡糸プロセスについて、信州大学と共同研究を開始しました。2023年5月、自社サイトで発表しています。

同社によると、KOELIQ-SL01は室温で20%以上の高濃度でセルロースを溶解できるとのこと。セルロース繊維の紡糸プロセスにおける安全性向上や環境負荷低減が見込め、しかも従来の再生セルロース繊維と同程度の強度を有するということです。

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図6:イオン液体KOELIQ-SL01によるセルロース溶解。数値は代表値
⁠(資料提供:広栄化学)

この紡糸プロセスが確立されれば、衣料品などアパレル分野での展開が可能になるといいます。ブランド力が重要となるアパレル業界では、サステナブルなブランド戦略も進んでいるため、広がりに期待できそうです。

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小林 由美(こばやしゆみ)

ライター/編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、IT系メディアに入社。技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。