生物も物理・化学も使う「高度処理法」の要点を整理【排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識 第5回】
2023/10/31Chematelsの連載「排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識」はいよいよ今回が最終回です。最後の話題に、よく見聞きするものの分かりづらさのある「高度処理法」を取り上げます。どうぞお付き合いください。
目次
本連載で扱う項目
- 第1回 水質評価の指標
- 第2回 活性汚泥法の原理と種類
- 第3回 運転管理のポイントと用語
- 第4回 想定されるトラブルと対処法
- 第5回 物理・化学的処理法と高度処理法
二次処理を上回る水質を目指し開発された高度処理法
排水処理における「高度処理法」とは、標準活性汚泥法の二次処理で得られる以上の水質を目的とした処理法です。「三次処理法」ともいいます。米国で開発され、世界中に普及しました。
二次処理を終えた処理水の生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)や、非溶解活性物質(SS:Suspended Solids)の量は、原水の10%程度です。それ以上の水質を期待できず、新たな処理法の必要性が高まりました。そこで開発されたのが高度処理法です。
高度処理法には、さまざまな手法がありますが、大きく分けると次の二つの種類になります。
生物処理で窒素・リンを除去
第一は、活性汚泥法に付きものの生物処理を用いつつ、従来の標準活性汚泥法とは異なる構造や運転方法を採った処理法です。処理水質の規制が厳しい場合において、富栄養化の原因となる窒素やリンを除去します。
一般に「高度処理法」とは、もっぱら生物処理法を用いたこの方法を意味します。窒素を除去するために、硝化と脱窒を組み合わせて、生物学的窒素除去を進行させる運転方法が採られます。
また、リンを除去するために、生物学的にリンを除去する運転方法や、凝集剤を添加する物理・化学的な除去を組み合わせた方法が採られます。生物処理とは離れますが、物理・化学的な方法のみが採られることもあります。
以下に主な手法を図版とともに示します。

図1:嫌気好気活性汚泥法(AO法)
(出所:研機ウェブサイト情報を参考に編集部作成)
「嫌気好気活性汚泥法」は、「AO(Anoxic/Oxic)法」とも呼ばれ、リンの除去を目的とした方法です。反応タンクが嫌気槽と好気槽の二つの槽で構成されています。好気中でリンを蓄積する細菌を用いて、余剰汚泥の中にリンを含ませます。
嫌気槽を設ける目的は、好気中でリンを蓄積する細菌を一度嫌気状態に晒してやることにあります。これにより普通に蓄積させるよりも多くのリンを蓄積させることができます。

図2:嫌気無酸素好気法(A2O法)
(出所:研機ウェブサイト情報を参考に編集部作成)
「嫌気無酸素好気法」は、「A2O(Anaerobic - Anoxic - Oxic)法」とも呼ばれ、窒素とリンの除去を目的とした排水処理方法です。反応タンクが嫌気槽と無酸素槽と好気槽の三つで構成されています。
排水を好気槽と無酸素槽で循環させることで、窒素を気化させて空気中に放出します。それとともにリンを汚泥中に封じ込め、余剰汚泥として引き抜きます。これらにより窒素とリンを除去します。

図3:ステップ流入式多段硝化脱窒法
(出所:2007年4月発行『R&D神戸製鋼技報』第57巻第1号「革新的な水処理関連技術」の図版を参考に編集部作成)
「ステップ流入式多段硝化脱窒法」は、生物学的窒素除去に、凝集剤によるリン除去を組み合せた処理方式です。「無酸素槽-好気槽」のユニットを3段式にしており、窒素除去を効率的に行うことができます。
以上、三つの方法を見てきました。従来の標準活性汚泥法では酸素不足で処理水質が悪化するため、低酸素に耐性を持つ糸状性細菌などの微生物が処理機能悪化の指標生物になります。一方、今回紹介したような高度処理法では、生物学的硝化・脱窒を行う目的から微生物が無酸素条件にも曝露されます。そのため異なる指標性をもたらすので注意が必要です。
物理・化学的処理で個体と液体を分離
高度処理法の第二は、二次処理の後段に、物理・化学的な処理装置を追加して水質を向上させる方法です。この追加的処理では、生物処理によらずに固液分離をします。沈殿・ろ過・吸着などの物理学的作用や、化学薬品による凝集効果や酸化還元作用などの化学的処理法を用います。
通常の二次処理水中には、浄化を阻害する原因となる物質が含まれており、さらに除去したい場合には、この後段に物理・化学的処理法を加えるのです。物理・化学的処理法の基本的な考え方は、「生物処理法を補って処理すること」にあります。
なお、薬品の化学的な性質と分子間のファンデルワールス力を利用した凝集剤による処理も、物理化学処理法と呼ぶ場合があります。
高度処理法において、種々の物理・化学的処理が採用されています。物理・化学的処理法の大きな用途となっているのが、重金属などの有害物質を含む排水や、化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demand)の高い化学工場からの排水の処理です。また、数10μm以上の粒径の有機物を含む排水の浄化といった用途もあります。生物処理法で扱える有機物類、窒素類、りん類や、小さな粒径の有機物を含む排水とは異質の排水を物理・化学的処理法で補って処理するというのが基本的な考え方です。
以下に、物理的処理法と化学的処理法それぞれの技術・手法を示します。
・物理的処理法
①単純沈殿や凝集沈殿による「沈降分離」、②加圧浮上による「浮上分離」、③遠心分離機を用いる「遠心分離」があり、これらは物質の比重差を利用した固液分離技術です。他に、④磁気により金属を分離する「磁気分離」、⑤活性炭吸着やキレート樹脂吸着を用いる「吸着法」、⑥砂や膜を用いる「ろ過」があります。
・化学的処理法
⑦凝集剤を用いる「凝集分離法」、⑧酸化剤、オゾン、紫外線(UV:UltravioletultraViolet rays)、燃焼、その他の化学反応を用いる「酸化分解法」、⑨減圧蒸留や膜蒸留などを用いる「蒸留分離法」があります。
これらのうち、⑥に当たる膜を用いる「ろ過」の例として、「膜分離活性汚泥法」(MBR: Membrane BioReactor)を紹介します。従来の活性汚泥処理方法は、大きな曝気槽と沈殿槽を要し、沈殿槽の上澄みを処理水とするため、処理水に濁質が混入するといった問題がありました。一方、MBRは、曝気槽に超微細な孔を持つ膜を浸漬し、汚水を直接ろ過することで処理します。これにより、SSや大腸菌類の流出のない処理水を安定的に得られ、また沈殿槽が不要となるためコンパクトな処理が可能となります。
「排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識」はこれにて終了です。長らくご愛読いただき、ありがとうございました。
鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net
1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。
