バルキングなどのトラブルに対処を【排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識 第4回】

2023/10/19
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Chematelsの連載「排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識」をお届けしています。第4回のテーマは、「トラブルへの対処」です。想定されるトラブルの一覧も掲げていますので、ぜひ参照にしてください。

目次

本連載で扱う項目

主要なトラブルは汚泥が沈降しないバルキング

活性汚泥法では、微生物が曝気槽で有機物を分解することはもちろんですが、最終沈澱池でこれらの微生物が沈降して、活性汚泥中の微生物群などからなるフロックとも呼ばれる固相と、浄化液からなる液相の「固液分離」ができることが極めて重要です。

固液分離が正常にできないと、汚泥が処理水とともに流出して公共水域を汚染していまいます。また、汚泥の流出に伴い返送汚泥率が滅少し、曝気槽の微生物の濃度が低下することで処理効率の低下を招き、水質の劣化につながります。

固液分離を妨げる主な現象として、以下のものがあげられます。これらはトラブルとなります。

  • 曝気槽での発泡現象
  • 沈殿槽での汚泥界面上昇などの汚泥沈降性不良
  • 沈殿槽でのフロック・汚泥の浮上

これらのうち、汚泥沈降性不良を「バルキング」(Bulking)といいます。バルキングの原因にはいろいろありますが、有機物を多量に含む排水では、「糸状性細菌」(filamentous bacteria)が異常に増殖して起こる場合が多く、このような汚泥沈降性不良を「糸状性バルキング」といいます。また、糸状性微生物に起因しない汚泥沈降性不良を総称して「非糸状性バルキング」といいます。これは粘性をもつことが多いことから、「粘性バルキング」と呼ばれることもあります。

図1は、糸状性バルキングと非糸状性バルキングと各沈降性阻害の関係を表したものです。

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図1:バルキングと沈降性阻害
⁠(出所:「水ソリューションセンター」ウェブサイトを参考に編集部作成)

このうち、糸状性バルキングは、発生が急激であり、かつ一度発生するとその回復に非常に長い時間を要します。この制御が、活性汚泥装置の維持・管理上の最大問題といえます。

なお、上記以外の主なトラブルとして次のものがあります。

  • 変色や臭気発生を含む処理水の水質悪化
  • 汚泥の増加

バルキングを引き起こす糸状性細菌は多様にあり

活性汚泥は開放型の混合微生物集団であり、微生物間の種々の競合関係や共生関係が成立しています。その中で糸状性細菌が優勢に増殖したときバルキングが発生します。

糸状性細菌とは、糸状に増殖する細菌の総称です。糸状性細菌には多くの種類が存在します。その種類によって発生原因が異なるので、糸状性細菌の分類は非常に重要です。図2を参照ください。

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図2:活性汚泥生物と糸状性細菌
⁠(画像提供:Type021Nは日鉄環境)

糸状菌増殖の要因は「餌と微生物の比」の異常

排水処理場ではさまざまな条件下で、糸状細菌の種類が優勢になります。その要因としては「微生物の餌となる食物」と「微生物」の比である F/M比(Food Microorganism Ratio)の異常変化のように、一部のものはほぼどの糸状性細菌にも当てはまるように見えます。しかしながら、他の要因については限られた種類の糸状性細菌にのみ当てはまります。

トラブル対策は顕微鏡検査と微生物活動維持

トラブル対策のポイントは、まず活性汚泥を顕微鏡検査することにあります。これにより、問題が糸状性細菌によって引き起こされているのかが明らかになります。

糸状性細菌が原因の場合、原因となる糸状性細菌を特定することで、対応の方向性やアプローチ法が得られます。ただし、バルキングにはさまざまな物理化学的要因やプロセス条件の変化などによる原因があります。よって、プラントの状況や排水の水質状況をしっかりと把握する必要があります。

その後の具体的な対処法は、正常な微生物活動の維持となります。次のような管理や維持をすることが原則となります。

  1. 原水の管理
  2. 返送汚泥比率の維持
  3. 曝気空気量の管理
  4. 窒素・リンなどの栄養剤の管理

一時的な解決のため、薬剤使用で現象を抑制することは可能です。しかしながら、微生物の性状を無視した短絡的な対策をとると、長期的には副作用が出てきます。微生物の性状に対応した薬剤を適正に活用すべきです。

管理指標としては、第一に「汚泥容量指標」(SVI:Sludge Volume Index)があります。この指標は、第3回「運転管理のポイントと用語を自分のモノに」でも示したように、 曝気槽内の汚泥混合液を1ℓのメスシリンダーに入れ、30分間静置させたときの1gの活性汚泥が占める容積を指します。単位は「mℓ」です。

通常は簡易的にSVIを50〜150の範囲に維持します。200 を超えると沈降性が悪化し、沈殿池で汚泥界面が水面近くまで上がり、汚泥が処理水中に流出するおそれが出てきます。

多様なトラブルの要因と対策を把握する

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表1:活性汚泥法をめぐるトラブル

最後に、糸状性細菌発生によるトラブルと、その他のトラブルについて、要因・現象・理由・対策などを表1にまとめました。ここで使用している用語については、第3回「運転管理のポイントと用語を自分のモノに」 でも解説しているので参照ください。

次回は最終回となります。テーマは「物理・化学的処理法と高度処理法」の予定です。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。