水の安全性評価には「指標」が大事【排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識 第1回】
2023/08/31活性汚泥法は排水処理技術の一つで、日本で最も普及している方法です。生活用水の下水処理のほか、製紙産業や食品産業での排水処理でも広く使われています。今回からのChematelsの連載「排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識」では、全5回にわたり、活性汚泥法について抑えておきたい要点をお伝えしていきます。
目次
本連載で扱う項目
- 第1回 水質評価の指標
- 第2回 活性汚泥法の原理と種類
- 第3回 運転管理のポイントと用語
- 第4回 想定されるトラブルと対処法
- 第5回 物理・化学的処理法と高度処理法
水は貴重な資源
今日の水問題の根本要因は、「人口の増加」です。このまま人口増加と経済成長が続くと、2025年には世界で約3分の2の人が水不足に直面するといいます。地球上の水の量は約14億立方キロメートルといわれていますが、身近にある河川や湖沼の水は、地球全体の水のたったの0.01%であり、地下水を含めても0.8%に過ぎません。
水は人類にとって貴重な資源なのです。
水の安全性を測る
人間の生活や生産活動にともない排出された有機物は分解され、水質汚濁の主な原因物質となります。水中に溶解している酸素を消費し、水質を悪化させるのです。
水質の有機性汚濁状態を定量的に把握するための指標に、「生物化学的酸素要求量」(BOD: Biochemical Oxygen Demand)、「化学的酸素要求量」(COD:Chemical Oxygen Demand)があり、代表的な水質指標として使用されています。
この他にも「全有機炭素」(TOC:Total Organic Carbon)、「全酸素要求量」(TOD:Total Oxygen Demand)、「浮遊物質量」(SS:Suspended Solids)、「水素イオン指数」(pH:Potenz H)、「有害物質量」、「nヘキサン抽出物質」などがあります。
6つの水質指標を理解する
主な6つの水質指標について説明します。
「溶存酸素量」(DO:Dissolved Oxygen)は、水中に溶解している酸素量をいいます。
「生物化学的酸素要求量」(BOD: Biochemical Oxygen Demand)は、有機物を含む水を、20℃、好気的環境下において5日間培養し、好気性微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量のことです。5日間にわたり培養するので「BOD5」ともいいますが、これは英国テムズ川上流の汚濁水が約5日で下流に達し、浄化されるのに必要な酸素量をBOD5としたことに由来します。他に滞留5 日以上の「BOD長期」や、最大値(ultimate)の「BODu」などがあります。活性汚泥法においてはBODが、装置設計および運転管理面を考える場合のすべての基準値になります。BODの測定単位は「mgO/ℓ」です。
「化学的酸素要求量」(COD:Chemical Oxygen Demand)は、水中の被酸化性物質が酸化剤によって酸化されるときに消費する酸素量です。酸化剤を使うため、BODでは測定されない難分解性有機物や有機物以外の被酸化性物質も、酸素要求量に反映されます。なお、酸化剤については、欧米や東南アジア諸国では、日本では主流の比較的酸化力の弱い「過マンガン酸カリウム(KMnO4)によるCOD測定法」はほぼ適用されず、「重二クロム酸カリウム法」が主流です。使用する酸化剤の違いによって測定結果に大きな相違が生じることがあるので留意が必要です。前者を「マンガン法」(CODMn)、後者を「クロム法」(CODCr)ともいいますが、後者は有害なクロムが排出されるので日本ではほぼ用いられません。また、通常、数値はマンガン法よりクロム法のほうが高くなり、約2~3倍の差異があります。このため両者の区分が必要です。なお、その相関性は同じ水源であればほぼ線形的であり換算できますが、化学品単体の溶解液では相関性はまったくありません。CODの測定単位も「mgO/ℓ」です。
「全有機炭素」(TOC:Total Organic Carbon)は、水中の有機物量を炭素濃度として表示する指標です。水中の有機物を分析装置内で高温燃焼または湿式酸化により、ほぼ100%分解させ、発生する二酸化炭素量を検出器で定量することにより得られます。BODやCODでの有機懸濁物の測定は間接的で正確に測れることが難しく、分解率が通常100%にならないのに対し、TOCは分解率ほぼ100%となるため、量的指標として優れています。測量装置には全有機体炭素計(TOC計)を用います。一般的なTOC計では、試料中の有機体炭素を燃焼させて二酸化炭素とし、これを非分散形赤外分光光度計で測定して有機性物質による汚染を定量します。TOCの測定単位は「mgC/ℓ」です。
「全酸素要求量」(TOD:Total Oxygen Demand)は、水中の有機物量および無機物を完全に酸化分解した場合の酸素消費量です。これを測定する全酸素消費量計(TOD計)では、試料の燃焼酸化において、有機物の構成元素である炭素、水素、窒素、硫黄、りんなどが必要とする酸素量を測定し、汚染を定量します。なお、TOCもTODも排水中の化学品成分が分かれば、酸化反応式から理論値が算出できます。
「浮遊物質量」(SS:Suspended Solids)は、水中に浮遊している不溶解成分の総称であり、水の濁り具合を測る項目です。SSの内容は、粘土鉱物などの微粒子や、動植物プランクトンの死骸、下水や工場排水に含まれる有機物や金属の粒子です。国内の環境規制法上では、SSは網目2mmのふるいを通過し、孔径1μmのガラス繊維ろ紙上に残留する物質と定義されています。SSは活性汚泥法では、活性汚泥浮遊物質(MLSS:Mixed Liquor Suspended Solid)として装置内の混合液に滞留する微生物などの浮遊物質量に相当します。SSは乾燥重量「mg/ℓ」で表します。
湖沼・海域にはCOD、河川にはBOD
日本では、水質汚濁に係わる環境基準などの法規制には、湖沼・海域などではCOD、河川ではBODが用いられています。この区分の理由は、河川は短い流下時間の間に酸化されやすい有機物を対象にすればよいのに対し、湖沼・海域などでは水が滞留しており、生物学的酸化時間は5日以上になるので有機物全量を扱うことになることがあります。また、湖沼・海域には植物プランクトンが多く生息しており、BODは光を遮断して測定するので、プランクトンが多いと酸素消費量がバクテリアによるものとの区分が不明瞭になることも理由にあります。
なお、BODとCODの間には、同一水源であればほぼ線形の相関関係が存在します。その比である「BOD/CODcr比」は生分解性または逆の難生分解性を推定できる指標とされています。文献の数値には幅がありますが、一般的にその比0.5は生分解性上問題なく、0.3は微生物が環境に順応しないとされています。すなわち、0.3 がボーダーラインとなります。
水質指標の関係性を整理
以上の水質指標の関係性をイメージ的に図示します。知識・情報の整理にご活用ください。

図1:水質指標の種類と関係
Chematelsの連載「排水を学べる!活性汚泥法の基礎知識」では今後、排水や活性汚泥法に携わっている方はもちろん、初めて触れるという方にも分かりやすく説明していきたいと思います。
次回のテーマは「活性汚泥法の原理と種類」の予定です。
鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net
1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。
